90年代に大流行「アムラー」「シノラー」「カハラー」……今でも使われている「ラー」は?

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90年代に大流行「アムラー」「シノラー」「カハラー」……今でも使われている「ラー」は?

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昼間たかし

ルポライター、著作家

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1990年代中盤に女性の間で一世をなびかせた「アムラー」。その歴史と「〇〇ラー」のその後について、ルポライターの昼間たかしさんが解説します。

「○○ラー」はいくつあるのか

 東京の原宿や渋谷は、さまざまなファッションの発信拠点と繁栄してきました。

 その中でも1990年代中盤、高校生を中心に大はやりしたのが「アムラー」と呼ばれる歌手・安室奈美恵(2018年9月引退)のそっくりファッションの女の子たちでした。

 1995(平成7)年には「新語・流行語大賞」のトップテンにも入ったアムラー。いまさらアムラーに注目する理由は、「○○ラー」がこれまでいくつあるのか気になったからです。

歌手の安室奈美恵に似たファッションをする「アムラー」。渋谷センター街にて。1996年11月16日撮影(画像:時事)



 まずアムラーについて。

 これはアムラー登場以前、シャネル愛好者を「シャネラー」と呼ぶ一部の関西の習慣から派生したものと言われていますが、判然としていません。確かなのは、アムラーは単に安室奈美恵のファッションをまねただけではないということ。

 というのも、もともとは安室奈美恵自身が渋谷や原宿で流行していた女子高生ファッションを取り入れたのが始まりで、それをファンがまねして広まっていったという経緯があるからです。

 つまり、アムラー側も単にまねをしていただけでなく、安室奈美恵とともに独自のファッションを作っていったという一体感があり、それがアムラーの特徴なのです。

アムラーになるための「10か条」とは

 アムラーの基本は、次の四大アイテムがなければ成立しません。

・サテンシャツ
・ミニスカート
・茶髪ロング
・シャギー

1994年から1998年まではやった茶髪・細眉・小顔文化(画像:資生堂)



 さらに『女性自身』1996年4月9日号によると、完全にアムラーになるための「10か条」があるというではありませんか。重要な部分だけ、箇条書きにしてみましょう。

・ロングに流行のシャギー
・シャツの素材はひかりもの系を
・ストッキングなしのなま足
・ヒールのブーツで背を高く見せる
・メークの基本は眉と唇
・インナーはチビTかブラトップ
・ぼたんはひとつがけ
・おへそはチラリとのぞく程度まで
・アクセサリーはシルバー
・超ミニかショートパンツを

 このうち特に大変なのは、メークだったといいます。

 多くの女性が安室奈美恵のような眉毛を目指して毛抜きを使って抜いていましたが、左右対称にするのはなかなか至難の技。おまけに、眉墨で山を太めに、まゆ尻をスッと描くのはなかなか難しく、安室奈美恵ですら30分とか60分とか時間をかけているとうわさされていました。

 それでもアムラーを目指す女性が多かった理由は、形をまねるだけでそれなりの見栄えになったからです。もともとが高校生ファッションの延長にあるアムラーは、身につけているアイテムも決して高額ではありません。そのため、努力して形をまねることで誰でも安室奈美恵になれるという気安さがあったのです。

ナオラー、トモラーという「生きざま」

 女性たちがアムラーの次の段階として目指したのが、飯島直子を目指す「ナオラー」と山口智子を目指す「トモラー」でした。

 セクシーなのにそれを表に出さず、自然体なところがうけていた飯島直子。自立した女性の雰囲気たっぷりだった山口智子は、安室奈美恵の次に女性たちが目指す目標となる存在でした。

現在でも多くの支持を得る山口智子のウェブサイト(画像:研音)



 しかし、ファッションスタイルよりも生きざまが如実に現れているタイプの両者をまねることは困難で、多くの女性たちが挫折していきました。

そして始まった「○○ラー」の大安売り

 ともあれ、アムラーと来て、ナオラー、トモラーという言葉がはやったあたりから「○○ラー」という言葉の「大安売り」が始まります。

 強烈なキャラクターで注目された篠原ともえを目指す「シノラー」、松たか子風のお嬢さまファッションを目指す「マツラー」などなど……それはそれは盛りだくさんでした。

 ということで、ここからは当時の資料から拾った「○○ラー」を紹介していきましょう。

・カハラー:華原朋美に憧れる女性。しゃべり方までまねる
・ノムラー:野村佑香をまねる小学生女子。野村沙知代ではない
・パフィラー:当時のPUFFYをまねて、いい具合の脱力感のあるファッションを愛用する女性
・ママラー:子持ちになってもなお、マライア・キャリーやマドンナをまねて美の追究に熱心だった松田聖子に憧れる女性
・エツラー:市原悦子のように俗っぽいけど憎めない女性
・ビジュアラー:GLAYなどの女性人気が高いバンドをまねて、髪を伸ばしたり黒いロングコートを着たりしている男性
・キティラー:ハローキティのグッズをめいいっぱい集めている女性
・タオラー:なぜか宮崎県だけではやった女子高生が首にタオルを巻くファッション
・ウチラー:なにかと「ウチらは?」と連発する女子高生
・チャネラー:1990年代にやたらとテレビに出ていた宇宙人と交信する人たち

 実はこの原稿を書くにあたり調べたところ、「○○ラー」の数は100あまりにのぼりました。しかし、そのほぼすべてが今ではまったく使われていません。

 ところがその中でただひとつ、現在も使われている言葉がありました。それは……

「マヨラー」

です。

何にかけてもおいしいマヨネーズ(画像:写真AC)

 なにかとマヨネーズを多用し、「マヨネーズをかけるとおいしいんですよ!」という人たち。そんな人たちを指す言葉は、アムラーの系譜から生まれたというわけです。

 まさかマヨラーだけが生き残るなんて、1990年代に誰が予測できたでしょうか。

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