新型コロナ禍で注目も オンライン授業の陰にちらつく学生間の厳しい経済格差

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新型コロナ禍で注目も オンライン授業の陰にちらつく学生間の厳しい経済格差

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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新型コロナ禍で加速する大学のオンライン授業。一見メリットばかりのように見えますが、その受け手である学生の目線に立ったとき、別の側面も見えてきます。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

通信費一部無償は大手3社のみ

 新型コロナ禍の影響で、新年度の授業をオンラインで行う大学が増加しています。しかし、学生個人の経済状況やICT(情報通信技術)機器の知識が、通信環境などの差を生んでいます。

大学のオンライン授業のイメージ(画像:写真AC)



 オンライン授業導入の動きを受けて、総務省はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯電話大手3社に25歳未満の契約者の通信費負担減を要請し、各社が応じました。

 通信量がオンライン授業によって大幅に増加することを考慮に入れ、学生に負担がかからないよう追加データの購入料金を最大50GBまで無料にするとしました。またスマートフォンなどの通信機能を利用して、パソコンなどをインターネットへ常時接続する「テザリング機能」の料金も無料にすることを決めました(NTTドコモを除く)。

 しかしこの動きは4月18日(土)現在、一部地域を除いて大手3社のみ。KDDIのサブブランド「UQモバイル」は検討中としていますが、格安スマートフォンを取り扱う携帯電話会社にまで広まるかどうかは不透明な状況です。

 また対象期間は3社で差があり、KDDIとソフトバンクは4月30日(木)まで、NTTドコモは5月31日(日)までとしていますが、状況を見て延長することも十分に考えられます。サービス打ち切りのメドは、講義を再開する大学が増加したタイミングとなるかもしれません。

 その際、オンライン授業をまだ続けている大学の学生は超過した通信量を追加で支払うこととなるため、各大学は学生の負担を考慮して再開へ足並みをそろえることも必要です。

大学生協の推奨パソコンは高価な物ばかり

 ICT機器に詳しい学生は自分に合うパソコンを自作したり、機器のスペックを見比べて格安なものを選んだりできますが、残念ながら全ての学生がそうではありません。

 新型コロナ禍は年度をまたいだため、機器に詳しい知人のアドバイスを聞いて家電量販店などに足を運ぶこともままならず、インターネットで急きょ購入するしか手段はありません。

大学のオンライン授業のイメージ(画像:写真AC)



 大学生協の推奨パソコンを見ると、東大はMacを推奨しており「駒場モデル」と銘打っているMacBook Proは4年間の保証が付いて21万2800円(税込み)と、苦学生には到底手が届かない価格です。

 MACのブランド力や充実したサポート体制を考えれば致し方ありませんが、すぐに買える学生と二の足を踏む学生にわかれるのは容易に想像がつきます。

 また、早稲田大学(新宿区戸塚町)や慶応義塾大学(港区三田)、明治大学(千代田区神田駿河台)といった有名大学の生協が推奨しているパソコンも軒並み15万円以上と、こちらも苦学生には簡単に手を伸ばすことができません。

 購入資金を得ようとアルバイトをしても、新型コロナ禍で思うように稼げないのが現状です。格安パソコンについて一から調べ買いそろえていると授業には間に合いません。大学推奨パソコンは、苦学生にとって「高根の花」なのです。

 このようなことから、一口に大学がオンライン授業を導入しても、学生間に教育機会の差が出てしまうのです。

なんとなく時間が過ぎていく危険性も

 こうした問題だけでなく、オンライン授業は学生個人の学力やリサーチ力に大きく依存しやすくもなります。

 対面授業は自分より詳しい同級生にその場でこっそり質問でき、必要な資料などを教えてもらえます。しかしオンライン授業はそれができないため、授業後にスマートフォンのコミュニケーションアプリで質問をするのも気が引け、「もういいや」となることも考えられます。こうして学びの質が少しずつ低下する恐れもあります。

 各大学はオンライン授業でも質疑応答可能とうたっていますが、質問文の作成を熟考して機会を逃したり、疑問を放置したりする恐れがあります。場の空気を感じにくいオンライン授業は、「なんとなく時間が過ぎていく危険性」と隣り合わせなのです。

スマートフォンのコミュニケーションアプリでは伝えづらいことも(画像:写真AC)

 さらに大学の閉鎖期間中は、必要な資料を集めるのが困難です。大学が提供するデータベースを自宅から利用するのも、得意・不得意が顕著に出ます。

 このままでは人と人が直接会うことで生まれる助け合いは生まれず、授業を楽しめない学生が出てくるのは時間の問題です。

学生へのサポートは必須

 オンライン授業の導入にかじを切った大学は、通信回線の増強や動画配信の投資を行い、多くの費用がかかっています。しかしオンライン授業に不安を感じる学生を置き去りにすることなく、何らかのサポートを提案することが必須です。

学生間の格差イメージ(画像:写真AC)



 学費を等しく払っている学生の間で大きな格差が出ることは、教育機会の差にもつながります。オンライン授業に必要なパソコンのスペックや、一度の授業で発生する通信量などに関する説明を記載した、初心者でも理解できるウェブサイトを別途オープンすべきです。パソコンのスペックがある程度わかれば、インターネットで格安パソコンを検索するときにも迷いません。

 繰り返しになりますが、学生の経済状況で教育機会が奪われることのないよう、大学が積極的にサポートすることが望まれます。

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