カメラ越しの乾杯 「ウェブ飲み」は外出自粛の寂しさを本当に癒やせるのか?

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カメラ越しの乾杯 「ウェブ飲み」は外出自粛の寂しさを本当に癒やせるのか?

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アーバンライフ東京編集部

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新型コロナウイルス感染拡大により、外出自粛が求められる東京。にわかに注目を集めているのがパソコンやスマートフォンのカメラを通して行う「ウェブ飲み会」です。令和最先端のコミュニケーション形態は、在宅続きの孤独感を癒やすのでしょうか。

「緊急事態宣言」により加速する在宅ムード

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年4月7日(火)、政府はついに緊急事態宣言を発令しました。これを受けて東京をはじめとする対象の区域では、「不要不急の外出」のほか「音楽・スポーツなどの開催」などに対する自粛・制限が求められます。

 カラオケ、バー、ナイトクラブ、居酒屋、映画館、ライブハウス、大学、学習塾、スポーツクラブ、デパート、ショッピングモール……。街を形作る数多くの施設が制限の対象となり、昼間人口1600万人が行き交う大都市・東京はその姿を一変させました。

 会社員の日常は、どのように変わるのでしょうか。

 パーソル総合研究所(千代田区一番町)が全国の正社員2万人を対象に行った緊急調査(2020年3月9日~15日)によると、在宅での勤務(いわゆるテレワーク)を実施している正社員は、全体の13.2%。

 さらに、勤務先の会社から「テレワークが命令・推奨されている」と答えた人の割合は、東京圏では32.7%と、正社員の3人にひとり程度であることが分かりました。

 ちなみに大阪圏では20.2%、名古屋圏では17.4%との結果。緊急事態宣言の発令によって4月以降、この割合は今後さらに高まることが予想されます。

にわかに注目を集めるウェブ飲み会。あなたは試したこと、ありますか?(画像:写真AC)



 在宅勤務に外出自粛。こうした状況下でにわかにニーズが高まっているのが「ウェブ飲み会」です。

 パソコンやスマートフォンのカメラを通して、参加者たちが思い思いのお酒やおつまみ、おしゃべりを楽しむオンラインの飲み会です。

 新型コロナ感染拡大を防ぐために避けるべきとされている「3つの密(密閉・密集・密接)」も、ウェブ飲みなら問題ナシ。

 以前なら居酒屋へと繰り出していた夜間の在宅機会が増えた今、家に居ながらにして職場の同僚や友人たちと飲み会(に限りなく近い)気分を味わえるウェブ飲みは、新型コロナ禍で発達した「新・コミュニケーション形態」として今後いっそうの定着を見せるかもしれません。

ウェブ飲み専用ツールに「いいね!」2000超

 実際、ウェブ飲みに対する需要の高さをうかがわせる例があります。

 情報通信の1010(新宿区西新宿)がオンライン飲み会ツールとして3月28日(土)に発表した「たくのむ」は、プレスリリースサイト「PR TIMES」内で2000超もの「いいね!」を獲得しました。

 ツイッター上ではこのサービスについて、

「これええやん!」
「考えた人、天才かよ」

などと称賛の書き込みが上がっています。

「たくのむ」の特長は、指定URLにアクセスするだけで、ユーザー登録やログイン無しに複数人でのカメラ通話が楽しめる点とのこと。また、たくのむ以外でも「Zoom」や「チャットワーク」、「ハングアウト」など、カメラ通話機能が付いたアプリやブラウザーで気軽にウェブ飲みを開催することができます。

 在宅勤務は、長引くほどにひとり暮らしの会社員にとってはメンタル面での不調を感じやすくさせるという側面も持つ働き方。

 ウェブ飲みに参加することで、在宅勤務の期間中に少しずつ心に沈殿した慢性的な孤独感は、多少とも和らぐものなのでしょうか。

 実際の経験者に話を聞いてみることにしました。

2020年3月にリリースされて、注目を集めたオンライン飲み会ツール「たくのむ」のイメージ画面(画像:1010)



 東京23区内の企業に勤める、都内近郊在住のアラフォー女性会社員。新型コロナウイルスの影響で2月下旬ごろから本格的な在宅勤務に入りました。

 やんちゃ盛りの飼い猫にお留守番をさせなくて済む、というメリットはあったものの、在宅勤務の期間が長引くと、だんだん自分自身の食事がおろそかになっていっていることに気がつきました。

 やはり人と顔を合わせて飲んだり食べたりしたい。そう思い立ち、仲間に声を掛けて少数のウェブ飲み会にトライしたのは2020年4月初旬の夜のことです。

薄化粧して、おつまみを作って、いざウェブ飲み

 開始予定時刻は19時半。

 それまでに仕事を片付けて、在宅勤務だけの日にはしないベースメークをして、普段は飲まないお酒も準備して――。手作りのおつまみもいくつか用意したといいます。ひとりで食べる夕食よりも、その夜は食べる品数や量が少し増えました。

「在宅勤務になって、かなり食欲が落ちていたことにあらためて気がつきました。ひとりご飯も好きだけど、やっぱり多少は誰かといないと体に悪いなあと」(女性会社員)

 ウェブ飲み中には、愛猫がカメラの前に「乱入」して参加者たちの歓声を浴びるというハプニングも。会社帰りに寄る居酒屋での飲み会とはひと味違う面白みを発見したといいます。

飼い猫や家族の「乱入」もウェブ飲み会の醍醐味のひとつ(画像:写真AC)



 東京在住・在勤の男性会社員も、ただ今絶賛テレワーク中。小さな子どもふたりが休校などにより自宅にいるため、ふたり用の夕食をバタバタと作り終えてから同僚たちとのウェブ飲み会に合流しました。

 自宅の仕事部屋には子どもたちも頻繁に出入りするため、あまり赤裸々な会社の愚痴などまでは話せませんが、逆に子どもたちの登場が場の盛り上がりにもつながりました。

「自分自身もそうですけど、カメラ越しとはいえ同僚の家族と知り合う機会になるというのはウェブ飲みならではの醍醐味(だいごみ)かもしれませんね。気の置けないメンバーとの飲み会ならば、話のネタになったりもしますし。会社では見られない、家庭的な(同僚の)一面を見られると、何だか親近感が増すなあと感じました」

 同じく東京在勤の別の女性会社員は、賃貸アパートでひとり暮らし。在宅勤務の期間は、4月上旬時点ですでに2か月近くに及びます。

「ひとりの部屋でカメラ越しにひとしきり友達とわいわい盛り上がった後、ウェブ飲みが終わってパソコンの電源を落としたら、部屋が『シ~ン』としていることに気がついて、さっきまでとの落差にちょっと寂しさが増しました。でも部屋着姿だしお布団も敷いておいたから、そのまますぐ寝てしまえたのはラクでした。この気軽さはリアル飲みにない魅力かなと思います」

絶対に気を付けるべき、ウェブ飲みの落とし穴

 現状、リアル飲み会の代替策として各所で実施されているウェブ飲みですが、今後、新型コロナウイルスが収束を迎えて外出自粛の要請が解かれた後、果たしてウェブ飲みはコミュニケーション形態のひとつとして存続するのか、それとも無くなるのか。どちらでしょう。

 前述の女性会社員は、「やっぱり、せっかく飲み会をするならリアル飲みがいいなあと思っています。さっきも言ったように、誰かと一緒にご飯を食べて話をする良さって絶対的にあると思うので」

 ただし、こうも付け加えます。「家の事情とかで早く帰らないといけないけど、帰宅後なら夜の予定が開いている、という人とか、遠方に住んでいる人とかがウェブを通じてリアル飲みに参加する、というのは面白いのかも」。

 確かにそれは、今までに無かった飲み会のあり方。ウェブ飲みのツールを活用することで飲み会の参加方法や選択肢が増えるかもしれません。

 一方、もうひとりの女性会社員は、

「もともとひとりで過ごすのが好きなので、ウェブ飲みは思っていた以上に居心地のいいスタイルでした。一番居心地のいい自分の部屋にいながら仲間とつながれて、それぞれのタイミングで途中参加したり、早退したりするのも自由で。人との距離感が自分にとってはちょうどいい感じがしました。自粛解除後でもやってみたいと思っています」

 他人との距離感を自分の好みに合わせてアジャストする「令和時代的コミュニケーション」のひとつとして、ウェブ飲みは息長く重宝される形態となっていくかもしれません。

 ところで、そんなウェブ飲みに対してある警鐘を鳴らす書き込みがツイッター上で6万4000以上の「いいね」を集めていたので、以下に全文を紹介したいと思います。

ついつい増えてしまうアルコールの量に注意(画像:写真AC)



「なんちゃら飲みが流行ってるけど、10年以上前に動画通話飲み会に死ぬほどハマりまくった私から声を大にして注意しときます。家に帰る心配をせずに毎日違う相手と全力深酒することになるので、結構簡単にアルコール依存になります。マジで気をつけた方がいい。煽ってるメディアの人たち、色々考えて」

 外出自粛やひとり暮らしの寂しさから、「誰かと話したい」「一緒に(いるような感覚で)お酒を飲みたい」を連日続けていくと、アルコールの飲み過ぎにつながる恐れがあるというのです。

 いきなりアルコール依存は大げさにしても、在宅が長引くことで生活リズムが乱れ、気づかないうちにアルコールの摂取量が増えていたという人も少なくないそうです。

 新しいコミュニケーションツールを使いこなすための注意点を意識しつつ、やっぱり外出自粛が解かれて、リアル居酒屋でリアル飲み会を仲間とともに再開できる日を楽しみにしたいものです。

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