東京五輪に興味のない人にも「開催延期」がばっちり影響を及ぼすワケ

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東京五輪に興味のない人にも「開催延期」がばっちり影響を及ぼすワケ

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小川裕夫

フリーランスライター

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新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、決定された東京オリンピック・パラリンピックの延期。一口で延期というものの、社会にはどのような影響があるのでしょうか。フリーランスライターの小川裕夫さんが解説します。

開催は危ぶまれていた東京五輪

 世界で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染者数が毎日のように報告され、死者数も日を追うごとに増加しています。

 日本政府は学校の休校を要請。また、それらの措置に伴い博物館や図書館、動物園といった公的機関でも休館・休園が相次ぎました。さらに、民間のレジャースポットなども歩調を合わせるかのように休園・休館、イベントの開催中止を余儀なくされています。

東京駅前に設置された東京五輪開幕までの日数をカウントダウンする時計(画像:小川裕夫)



 新型コロナウイルス禍から約1か月が経過した現在、事態はいまだ収束に向かう気配を見せていません。そのため、夏に予定していた東京五輪の開催は危ぶまれていました。

開催可否が東京に与える大きな影響

 東京五輪の開幕予定日までには、まだ3か月以上もの歳月があります。拙速に開催中止を判断すれば、大きな混乱は避けられません。

 しかし、まだ出場選手の選考が終わっていない競技種目もあり、それらの選考会を実施することは現実的に困難な状況です。そのため、一部の競技団体からは開催の延期を求める声が上がっていました。

東京五輪のイメージ(画像:写真AC)

 五輪は世界最大規模のスポーツの祭典であり、それを運営するにあたってはスタッフ・ボランティアの準備もあります。これらの人々にも都合があり、大会目前で判断することは混乱を大きくする可能性が高いのです。

 さらに開催可否の影響は、直接的に携わる人たちばかりに及ぶものではありません。東京都周辺の交通・宿泊インフラ、大会を観戦に訪れる人たちへ食料を提供する飲食業者・農業従事者、それらを届ける物流事業者などの事前準備も不可欠です。

 小さな混乱であっても、そのほころびは少しずつ広がり、次第に大きくなって社会全体に及んでしまうのです。世界から注目されるスポーツの祭典ですから、そうした準備が不足するようなことになれば、大会を成功に導くことは難しくなります。

残された多くの不明瞭な点

 国際オリンピック委員会(IOC)はひとまず、今夏の開催を撤回。改めて2021年の夏に開催する予定を発表しています。

 大会の実施を1年間先延ばしすれば、新型コロナウイルス禍は収束する――IOCの決断は希望的な予測に基づく判断でしかありません。もちろん、誰も1年後のことを確実に予測できないのですから、そこに確証がないのは仕方のない話です。

新国立競技場の外観(画像:写真AC)



 延期が決まっても、大会名は「TOKYO 2020」を使用することになりました。延期を発表するにあたり、混乱を最小限にとどめることが優先されたのです。そのため、2021年に順延された大会は不明瞭な点が多く残ったままになっています。

 例えば、

・出場が内定していた代表選手はどうなるのか
・実施予定だった競技場をそのまま使用するのか
・大会ボランティアたちはどうするのか

といった、容易に想定できる問題の解決案はなにひとつ示されていません。

延期でさらに頭の痛い問題が

 また、2021年の夏ごろに開催するという予定はアナウンスされたものの、細かいスケジュールは明示されていません。

 出場する選手は体調などの調整をしなければなりませんし、送り出す競技団体も合宿などのスケジュールを組まなければなりません。アスリートファーストをうたう五輪である以上は、アスリートに負担をかけないようにスケジュール作成を急がなければなりません。

五輪アスリートのイメージ(画像:写真AC)

 さらに頭の痛い問題が、順延したことによる開催費用の負担増です。競技場などは建設費のみならず維持管理にも膨大な費用がかかります。

 通常なら、それらはほかの大会・イベントなどを開催し、その収入で賄われます。

 1年後に向けて競技場を空けておかなければならないとなると、ほかの大会を安易にセッティングできません。早急に開催スケジュールが決まらなければ、この空白期間が長くなり負担は重くのしかかってしまうのです。

誰しもが五輪と無縁ではない

 そして、大会を支えるスポンサーが離れてしまう可能性もあります。

 これまで多くの企業がスポンサーとして五輪を金銭面で支えてきました。1年という短い期間であっても、開催が先送りされたらスポンサーを降りる企業が現れても不思議ではありません。

 また東京都の収支計画にも狂いが生じます。開催費用を捻出するため、東京都は晴海に整備した選手村を五輪閉幕後に住宅地として再整備したうえで売却することを見込んでいました。すでに売買契約を済ませている区画もあり、これらの引き渡しが遅れることによる経済的損失も問題として浮上しています。

中央区の晴海で完成間近となった選手村(画像:写真AC)



 また、今回の東京五輪は国をあげて取り組んできた祭典です。大会を盛り上げるべく、政府は2020年限定で祝日を移動させています。祝日の移動は。経済や社会、生活全般に影響を及ぼします。

 東京で生活していないから、スポーツに興味がないからと、東京五輪と無縁と思える人たちにも五輪と無関係に生活することはできません。

どうなる東京都知事選

 繰り返しになりますが、東京五輪の延期は決まったものの、多くの詳細が決まっていない状態です。

 決まっている数少ないもののひとつに、大会直前に投開票される東京都知事選があります。東京都知事は、五輪で大役を果たす要職です。現職が再選するにしても、新知事が誕生するにしても、なにかしらの影響が出ることは間違いありません。

2020年1月15日に東京国際フォーラムで行われた「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」に登壇した小池百合子東京都知事(画像:東京都)

 いずれにしても、東京五輪は約1年後に延期ということになりました。中止ではないので、大会の開催に向けてこれから話し合いによって詳細は詰められることになりますが、気が抜けない状況であることに変わりはないのです。

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