歴史も難易度も別格? 都内小学校の名門「筑波大付属小」「慶応幼稚舎」をひも解く

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歴史も難易度も別格? 都内小学校の名門「筑波大付属小」「慶応幼稚舎」をひも解く

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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都内の歴史ある小学校・筑波大学付属小学校と慶応義塾幼稚舎について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

1872年の学制発令直後に創立

 東京都内に日本でもっとも歴史ある国立大学付属小学校と私立大学付属小学校があるのをご存じでしょうか。

 それは、筑波大学付属小学校(文京区大塚)と慶応義塾幼稚舎(渋谷区恵比寿)です。それぞれの創立は1872(明治5)年の学制発令直後と、長きにわたり日本の小学校教育をけん引しています。国立大学付属小学校と私立大学付属小学校と立ち位置が異なりますが、似ている点もあるのです。

学習院初等科より早い2校

 筑波大学付属小学校は1873(明治6)年、国の教員養成機関である師範学校の付属小学校として設立されました。一方の慶応義塾幼稚舎は明治7年、福澤諭吉が開いた蘭学塾「慶応義塾」で学んでいる年少者を集めて教育、指導を行ったことを起源としています。

 皇族や華族の子息のための教育機関である学習院初等科(新宿区若葉)の創立が明治10年であることを考えると、いかに両校の歴史が古いかが伺い知れます。

 伝統校ゆえ、校舎は都内の一等地にあります。

 筑波大学付属小学校は東京メトロ丸の内線「茗荷谷駅」(文京区小日向)から徒歩8分の閑静な住宅地に、慶応義塾幼稚舎は東京メトロ日比谷線「広尾駅」(港区南麻布)からは徒歩7~8分という好立地にあります。

筑波大学付属小学校の外観(画像:(C)Google)



 どちらも大都市にある小学校とは思えないほど緑が豊かで、「こんな場所で学べたら」と多くの保護者たちは考えるでしょう。筑波大学付属小学校は国立ということもあり、通学圏内を23区、西東京、埼玉県和光市の住居者に限定していますが、慶応義塾幼稚舎は住居による通学制限を行っていません。

抽選という「完全に運まかせ」なシステム

 どちらの学校もブランド力抜群のため、志願者数は毎年多い状況です。筑波大学付属小学校は男女それぞれ64人の定員に、男児が2000人、女児1700人の応募が集まるなど、日本トップクラスの人気を誇っています。

緑あふれる筑波大学付属小学校の様子(画像:(C)Google)



 ここまで人数が多いのは1次選考が抽選という、「完全に運まかせ」な受験システムが影響しているからです。保護者が思わず、「興味があるから受けてみようか」「1次に通ったらラッキー」と考えてしまうのは理解できなくもありません。

 この1次選考によって男女ともに半数が脱落し、残りの半数が2次選考へとコマを進めます。3次選考では2次選考を突破した100人前後から、さらに抽選で絞り込まれます。

一方の慶応義塾幼稚舎は……

 一方の慶応義塾幼稚舎は男女で定員が異なっており、男児96人に対し女児は48人と「2対1」の比率となっています。

慶応義塾幼稚舎の外観(画像:(C)Google)

 これには、女児が男児よりも精神年齢が高いという考えがあるようです。しかし、私立大学付属小学校として2番目に古い歴史を持つ学習院初等科でも男女数が同じあることを踏まえても、慶応義塾幼稚舎の強いこだわりが伝わってきます。

 慶応義塾幼稚舎は私立大学付属小学校ということと、充実した施設がそろっていることから、入学初年度でかかる学費は約160万円。その後も毎年120万円近くがかかるなど一般家庭にとっては敷居が高くなっています。

 合格すれば慶応義塾大学までのルートが確保されるものの、その学費の高さから保護者にある程度の収入が求められるため、慶応の教育理念に深い理解を示す家庭の子どもたちを中心に志願されていると言えるでしょう。

 なお2020年度入学者の志願者は男児が975人、女児は615人と「慶応ブランド」の人気は変わらないようです。

独自路線を進める入学試験

 世間一般に、小学校の受験は「お受験」と言われる風潮があります。

 保護者への面接を実施する学校もありますが、筑波大学付属小学校と慶応義塾幼稚舎ではありません。両校ともに保護者向けの作文などが課せられますが、あくまで入学試験は受験する子ども主体で行っています。

 筑波大学付属小学校は国立大学付属小学校ということもあり、1次選考の抽選の時点で志願者の子どもたちを生まれ月ごとに分ける方式を採用しています。春生まれと早生まれの子どもの間に、成長の差があるのを考慮していると考えられます。

 2次選考はペーパーテスト、グループ活動、制作、運動という四つの試験を1時間で行うため、受験する子どもには切り替えが早く対応力を求められます。

「まず獣身を成して而して後に人心を養う」

 慶応義塾幼稚舎は世間的なイメージと異なり、学力検査であるペーパーテストは行いません。創立者の福沢諭吉の「まず獣身を成して而して後に人心を養う」という教えの通り、健全な体を鍛えることを先に行うのが大切だと唱えているのです。

緑あふれる慶応義塾幼稚舎の様子(画像:(C)Google)



 慶応義塾幼稚舎の入学試験はその教えを踏襲しているのでしょう。そのため、合否のカギとなるのは体操テスト、行動観察、絵画、制作と、先生たちからの指示を受けてルールを守る力、その日会った子どもたちと力を合わせる積極性、自分の考えを表現する力量を発揮できるかどうかです。

 ペーパーテストでは測れない、慶応義塾幼稚舎に合う児童を先生たちは見極めようとしているのです。

名門学校ゆえの難しさも

 めでたく筑波大学付属小学校と慶応義塾幼稚舎に合格したとしても、学年が上がるにつれて名門学校ゆえの困難は大きな重しとなってきます。

 両校ともにペーパーテストに比重を置いた中学校受験組が入学してくるため、学力不振の小学校組の生徒にとって、中学校以降はつらく苦しい学校生活になる可能性も否定できません。筑波大学付属小学校から付属中学校へ進学できるのは全体の約8割程度と、エスカレーター式は保証されていないのです。

勉強する小学生のイメージ(画像:写真AC)



 慶応義塾幼稚舎組は慶応義塾大学までのエスカレーター式が保証されているものの、義務教育課程である中等部の3年から留年制度が取り入れられており、深刻な学力不振者へのプレッシャーは無視できないものがあります。

 5~6歳以前から始まる過酷な受験レースの頂点に立ったとしても、合格で全てが決まる訳ではありません。

 小学校入学がゴールではなく、中学校や高校で学力に優れた同級生と机を並べることを思えば、「ここから先が勝負」という考えを親子ともども持たなければならないのです。

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