野球と恋愛――青春漫画の巨匠「あだち充」の作品はなぜ私たちの心を動かすのか
2020年3月13日
知る!TOKYO長きにわたって人気の青春作品を描き続けてきた漫画家・あだち充。そんなあだち作品と舞台となった東京のエリアについて、法政大学大学院政策創造研究科教授の増淵敏之さんが解説します。
永遠の「青春漫画」の巨匠
あだち充は、本当に息の長い漫画家です。そして今でも、『みゆき』(1980~1984年)や『タッチ』(1981~1986年)のような青春漫画を描けることにとても驚きます。
あだち充は、永遠の「青春漫画」の巨匠です。筆者(増淵敏之。法政大学大学院教授)が彼の作品に出会ったのは、確か単行本の『ナイン』でした。

この作品は「週刊少年サンデー増刊号」に1978(昭和53)年から1980年まで、連載され、ストーリーもオリジナリティーあふれる青春野球漫画でした。これが筆者のあだち充体験の原点です。
その後、『みゆき』『タッチ』『H2』(1992~1999年)を読んで、現在は16巻が先日出たばかりの『MIX』(2012年~)を楽しんでいます。
最も印象的な最終回
筆者はあだち作品が青春野球漫画、もしくは青春スポーツ漫画たるゆえんは、魅力的な少女が次々と登場し、主人公と淡い恋愛関係を築く――という「女性の描き方」にあると考えています。
『タッチ』は単行本の発行部数が1億冊を超えており、アニメや映画、テレビドラマ化され、押すに押されぬあだち充の代表作です。

最も印象的なのは最終回です。
甲子園の開会式を抜けて主人公の上杉達也は新体操の全国選手権で同地を訪れていたヒロイン・浅倉南に河原で告白をします。物語はそこから一気にエンディングへ。
決勝戦は描かれず、話は夏から秋へ飛びます。達也と、もうひとりの主人公で達也の双子の兄弟である、亡くなった和也の母親が彼らの部屋を掃除しています。
その後、母親が去った部屋に残された二段ベッド、窓辺に落ちた葉、和也の写真……そして最後に「第68回全国高校野球選手権優勝」と書かれた皿が描かれるのです。

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