日本を覆う「自粛ムード」から解放されるために私たちが考えるべきいくつかのこと
自粛ムードのマイナスは深刻 現在、新型コロナウイルスの対策が進められており、政府の感染防止対策を受けて、大規模イベントの中止・延期、スポーツ競技の無観客試合など対策が採られています。 企業はテレワークの活用や時差出勤を取り入れています。国民は手洗いの実行とともに、ライブハウスのような不特定多数が密集する空間を避けるようにしています。 これらの対策は、感染拡大を阻止するために必要なことです。ただ「自粛ムード」がまん延し、商談や買い物など「人と接触することを避けよう」「そもそも外出をやめよう」と過剰に企業・個人の活動を抑制するのはいかがなものでしょうか。 自粛ムードのイメージ(画像:写真AC) 自粛ムードによる過剰な対策は、企業の生産や消費者の消費減退を招きます。それによって経済が縮小すると、当然、雇用・賃金に悪影響が及びます。また外出せず、人と会わずにいると、国民の精神もむしばまれてしまいます。 感染者数はまだ722人(3月14日現在)と、日本人のわずか0.0006%。 将来爆発的に感染が拡大すればいざ知らず、現時点では感染による直接の被害よりも、自粛ムードによる影響の方がはるかに深刻です。 日本人は自粛が好き? 自粛ムードという言葉が生まれたのは、恐らく昭和天皇崩御が迫った1988(昭和63)年暮れのことでしょう。「こういうときに宴会をするとは何事か」という声が広がり、全国の飲食店・遊興施設には閑古鳥が鳴きました。 同じような事態が、9年前2011年の東日本大震災の後にも起こりました。そして今回も、それに近い状態になりつつあります。 日本人は「同調圧力」の影響を受けやすいと言われます。 同調圧力とは集団の中で多数派意見に同調するよう、少数派に考えを変えるよう迫ることを言います。日本人には確固たる自我がないこと、他人との関係性を重視し、他人と違うという状態を嫌うことが、その原因だとされます。 同調圧力のイメージ(画像:写真AC) 特に今回は正体不明のウイルスということで、「家でおとなしくするべきだ」「人に会わないのが一番」と言われると、不安に駆られて悪影響を考えず、過剰な対策に同調してしまいます。 もちろん、専門家が勧める対策には同調するべきです。しかし、ネットで流布している不確かな意見に耳を傾けて過剰な対策をするのは、マイナス面を冷静に考え、避けましょう。 高齢者こそ外出を自制するべき高齢者こそ外出を自制するべき 逆に、同調圧力に影響されにくいのが高齢者です。 頑固な高齢者のイメージ(画像:写真AC) 高齢者は元々頑固で、特に今の70歳以上は世代的に成功体験が豊富なため、「俺は大丈夫」「俺には俺のやり方がある」と自信満々。周囲の制止を振り切って、カラオケに宴会に出歩いている元気な高齢者が多いようです。 本来、感染しにくく、感染しても重症化しない若い世代が(支障ない範囲で)出歩き、高齢者こそ外出を自制するべきですが、真逆の状態になりつつあります。 同調圧力を掛ける側も問題 一方、他人に同調圧力を掛ける側の問題もあります。主流の世論が形成されると、自分がそれに従うだけでなく、世間の人にも同調するよう求めることがあります。そして、時に同調しない他人を激しく攻撃します。 今回、東京事変・椎名林檎さんがコンサートを強行したことに対し、ネットでは猛烈なバッシングが起こりました。言っていることは正論ですが、その攻撃的な調子は単なる批判を超えて、自分の考えに同調しない相手への憎悪を感じさせました。 不安な女性のイメージ(画像:写真AC) どうして自分が同調するだけでなく、他人に同調を強く迫るのでしょうか。おそらく、自分が信頼を寄せる多数派意見が揺らいでしまうことへの不安や自分の思い通りにならないことへのいら立ちがあるのでしょう。 不安やいら立ちはわかります。他人のことを嫌う、憎むというのも個人の自由です。 ただ、同調圧力に影響されやすい日本人が多いという現状で、「こういうときに酒を飲むべきではない」「人と会うべきではない」といった正否が不確かな意見への同調を他人に迫ると、本人は“正義の味方”のつもりでも、結果として社会を悪い方向に推し進めてしまいます。 SNS(会員制交流サイト)を使って、誰でも自分の意見を自由に表明できる現代。だからこそ、他者に同調を迫る発信の影響には注意したいところです。 政府の正しい情報発信がカギ政府の正しい情報発信がカギ フェイクニュースやデマに同調するのも、他人に強く同調を迫るのも、人間の心の弱さの表れです。 しかし、トイレットペーパーの問題など、別に専門知識がなくても少し立ち止まって常識を働かせれば、適切に対応できることが多いのではないでしょうか。 情報を整理して、まず自分の頭で考えよう(画像:写真AC) もちろん、正体不明のウイルスについてさまざまな情報が飛び交う中、不安に打ち勝つ強い心を持ち、平静さを保つというのは容易なことではありません。 今回、国民の不安心理と自粛ムードがまん延している原因として、政府がオリンピック開催や中国・習近平国家の国賓来日への悪影響を懸念して、情報発信を抑制したり、楽観的な見通しを発信してきた点があります。 国民が疑心暗鬼にならないよう、政府・厚労省・自治体には適時適切な情報発信を期待したいところです。
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