コンビニだけじゃない! 都内に24時間営業のお店が急増した根本理由
コンビニVSスーパーの時代に 東京の街で、コンビニとスーパーはライバル関係にあると言っていいでしょう。それはオフィス街やターミナル駅近くのスーパーをのぞくと、一目瞭然。ドリンクコーナーが充実したスーパーは、まさに従来のコンビニの客層をターゲットにしています。 24時間営業の店舗イメージ(画像:写真AC) また、ドリンクだけでなく激烈な争いをしているのはお弁当。手軽なコンビニ弁当は安くて便利ですが、これに対抗するようにスーパーもお弁当を充実させています。 店内調理を掲げるなど手法はさまざまで、いち消費者としては選択肢が増えるのは大歓迎です。 先鞭をつけた伊勢丹新宿店 さて、そんなスーパーのコンビニ化ですが、歴史は結構長いのです。その始まりは、2000年代初頭から始まった閉店時間延長競争です。 もともと大型商業施設の営業時間は、大規模小売店舗立地法(大店法)などで厳しく規制されていました。百貨店が18時に閉店していたことは、今でも覚えている人が多いでしょう。 こうした規制が1990年代後半に緩和され、各百貨店は営業時間を19時、そして20時までと延長。その結果、どの百貨店でも会社帰りのOLや単身者の来店が目立つようになり、売り上げアップにつながりました。 例えば伊勢丹新宿店(新宿区新宿)は、従来は金土日のみだった20時閉店を、2002(平成14)年4月から全日に拡大。そうしたところ、若い女性の来店が増え、食料品と化粧品の売り上げが増加しました。 伊勢丹新宿店(画像:(C)Google) これを見て、小田急百貨店や西武百貨店、東武百貨店など駅直結の百貨店も同様に実施。どこも売り上げが上昇しました。 営業時間の延長で見えてきたもの営業時間の延長で見えてきたもの 夜でも客が来る――そのことに敏感に反応したのが、スーパーでした。各社は、百貨店よりも長い営業時間で来店者の増加を図ります。 例えば2002年から、東急ストアは各店補で閉店時間を21~22時30分に変更。ご存じの通り東急ストアは駅直結の店舗が多いため、会社帰りに夕食やお酒を買う人が立ち寄るようになり、お弁当やおにぎりの売り上げが増加。 また翌日の朝食を購入する人も増え、店舗によっては売り上げが2割も増加。マルエツは2001年7月に早くも24時間営業の店舗「Foodexpress(フーデックスプレス)」を開始していましたが、店舗数は2002年に10店舗まで拡大しています。 24時間営業のスーパーのイメージ(画像:写真AC) スーパーが好調だったのは品ぞろえが豊富だったことなどですが、もっとも大きかったのは、営業時間を延ばすことでそれまで取りこぼしていた客を獲得したことです。 スーパーの取り組みで明らかになったのは、仕事が忙しく帰りは深夜でもいろいろとやりたいことがある人たちの存在です。 マッサージ店や美容院も24時間対応に これには、さまざまな業界が反応します。 夜遅くまで営業していれば、これまで以上の客層が取り込めるかもしれない――。そんな意識が働いたのか、東京の津々浦々で深夜営業や24時間営業をうたう、マッサージ店や美容院、歯科医院などが急増。2000年代前半は、夜遅くまで営業している店がとにかく増えました。 24時間営業のガソリンスタンドのイメージ(画像:写真AC) この頃、秋葉原のメイド喫茶でも「週末は朝まで営業」をうたっている店がありました。試しに当時、深夜2時くらいに出掛けたことがありますが、客は誰もいませんでした。 ようは店が遅くまで営業しても、利用する客層がいる業態とそうではない業態、さらには場所もあったのです。 埋まりつつある地方との差埋まりつつある地方との差 この時代に始まり、定着したビジネスとして挙げたいのは、オンライン英会話です。 今では多くの企業が参入していますが、始めたのはCMで一世を風靡(ふうび)したNOVA。時に2001年9月のことでした。 勉強したくても時間がない社会人をターゲットにテレビ電話(パソコンやスマホ、スカイプではありません)を使ってレッスンを行うシステムは、生徒数を急増させました。 24時間営業のファミリーレストランのイメージ(画像:写真AC) 当時は、やみくもに深夜営業・24時間営業を行ってもコストが高くなるばかりという指摘もありましたが、東京では夜遅くまで煌々(こうこう)と明かりのつく店は増えていきました。 24時間営業の店が多いことが東京を大都会たらしめている要素のひとつでしたが、今では地方も24時間営業のスーパーが大幅に増え、その差異はほぼなくなりつつあります。
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