未来の東京中華が楽しめる「池袋チャイナタウン」という異界

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未来の東京中華が楽しめる「池袋チャイナタウン」という異界

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増淵敏之

法政大学大学院政策創造研究科教授

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池袋駅の西口(北)を出ると広がるチャイナタウンとしての池袋。その魅力について、法政大学大学院教授の増淵敏之さんが解説します。

東京都に約22万人が住む中国人

 ここ数年、訪日外国人や日本で暮らす外国人の数は増加の一途を辿っています。法務省によると、入管法上の在留資格をもって中長期間在留する外国人(中長期在留者)は2018年末で約241万人、特別永住者は約32万人とのこと。これらを合わせると約273万人となり、前年より17万人(6.6%)増加したことになります。

池袋駅の西口方面の商店街の様子(画像:写真AC)



 大阪市の2019年10月1日(火)時点の推計人口が約274万人ですから、ちょうど大阪市と同じくらいの在留外国人が暮らしていることになります。人口の第1位は中国人で約77万人(前年比4.6%増)、第2位は韓国人で約50万人(同0.2%減)です。第3位のベトナム人は33万人(同26.1%増)と急増していますが、やはり中国人の存在が際立っています。

 中国人は東京都に約22万人、区部にはそのうち約19万人が暮らしており、江戸川区、江東区、板橋区、足立区、豊島区、葛飾区、北区の順番となっています。韓国人や台湾人、ベトナム人、ネパール人が新宿区を中心にして暮らしているのに比べ、幅広く分布しているのが特徴です。

 今後、政府の政策からも外国人は増え続けていきます。10年前には考えられなかった状況です。2020年の東京オリンピックで訪日観光客はさらに増え、世界から見て日本や東京は一層身近な存在になっていくでしょう。

日本は中国料理を大雑把に捉えている

 日本は海外文化を日本風にローカライズ(地域化)する点が特徴です。なお外国人は日本文化を「伝統と革新の調和」といった点から注目しています。

 典型例は自動車です。自動車メーカーは日本の細い道路を意識し、小型車を積極的に開発。それが一時期、日本の自動車の主流となっていました。カレーも同じです。日本のカレーはインドのカレーとまったく違う料理です。その点から見れば、チェーン店の中華料理屋は日本人が好む料理を提供していますし、味も日本人の味覚に合うようにローカライズしています。

本場中国の火鍋のイメージ(画像:写真AC)



 日本人と中国人の好む中華料理の違いは何でしょうか。身近にいる中国人留学生たちにお勧めの店を訊いてみたところ、池袋駅の西口方面にある「四季香」(豊島区西池袋)を挙げる留学生が多くいました。同店は中国東北地方の延辺料理を出す店として知られています。しかし日本人からはなかなか名前が上がりにくい店です。なお小籠包は「永祥生煎館」(同)、火鍋は「海底撈火鍋」(同区南池袋など)が人気があるようです。

 中国でもっとも一般的な分類は中華八大料理(八大菜系)で、

・山東料理
・江蘇(こうそ)料理
・浙江(せっこう)料理
・安徽(あんき)料理
・福建料理
・広東料理
・湖南料理
・四川料理

です。一方、日本では次のように中国四大料理という分類をしています。

・北方系(北京料理、山東料理、山西料理、河北料理、河南料理)
・東方系(上海料理、江蘇料理、浙江料理、安徽料理、江西料理)
・南方系(広東料理、福建料理、江西料理)
・西方系(四川料理、湖北料理、湖南料理、広西料理、貴州料理、雲南料理)

 このように日本は、本場・中国より大雑把に捉えています。単純に北京料理、上海料理、広東料理、四川料理といった方がわかりやすいでしょうか。

 ちなみに、八大菜系では中国東北地方は山東料理のバリエーションに数えられ、日本の区分では北方系もしくは、北京料理のバリエーションということになっています。つまりカテゴリーもローカライズしているのです。

池袋になぜ中国人が増えたのか

 池袋駅の西口方面といえば、チャイナタウン化しつつあるエリアです。「陽光城」(同区西池袋)などの中国食材の販売店がいくつかあり、「聞声堂 中文書店」(同)のような中国書籍を扱う書店もあります。

池袋駅の西口方面の様子(画像:(C)Google)



 もともとこの界隈は歓楽街で、多くの飲食店や風俗店が集積した新宿の歌舞伎町のような雰囲気を漂わせていましたが、新華僑と呼ばれる中国人が来街するようになってから、現在では200店舗を超える中華系の店舗が集まり、中華料理店も70店舗を超えています。横浜や神戸、長崎などの中華街が観光要素を多く含むのに比べ、池袋駅の西口方面のチャイナタウンはあくまで在留中国人の生活感ただよう中華街といえます。

 こうした背景にはいくつかの理由があります。ひとつは池袋周辺への日本語学校の集中立地です。1980年代以降、日本語学校は東京を中心に増え、なかでも池袋や新宿に多く立地しています。

 また池袋は、徒歩圏に老朽化した賃料の安いアパートが多いことも挙げられます。現在はJR埼京線や東武東上線、西武池袋沿線に彼らの居住エリアが拡大しつつあり、池袋の利便性が高まっているという見方もできます。そしてなにより池袋は東京を代表する繁華街で、中国人留学生が飲食店やコンビニエンスストア、ビル清掃などのアルバイトを見つけやすかったということもあるでしょう。

 さて前述の「四季香」ですが、この店は中国東北地方のバーベキュー(串焼きなど)が有名です。足を運んでみると客層の多くは確かに中国人ですが、その分ローカライズされていない中華料理を楽しむことができます。日本人の口に合うかどうかはわかりませんが、もしかするとこの味が、在留中国人の増加する「未来の東京の中華料理」になるかもしれません。

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