自分だけの香水をイチから作れる新宿のお店に行ってみたら、「香りの迷路」に迷い込んでしまった件

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自分だけの香水をイチから作れる新宿のお店に行ってみたら、「香りの迷路」に迷い込んでしまった件

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アーバンライフ東京編集部

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2種以上の香水を重ねづけして自分だけの香りを楽しむ香水ショップ「THE KAORI BAR FINCA」が2019年11月1日(金)に新宿にオープンします。でも、自分の好きな香りって口で説明するのが難しいし、どうやって見つければいいのでしょう。

香水をつけるのは面倒だと思っていました

 香水を日常的に使っているという人は、記者の体感では決して多くはなさそうです。その理由を自分の体験を踏まえて考察するに、

1.自分に似合う香りが見つからない
2.つけるのが面倒くさくて忘れてしまう
3.つけ過ぎたりしたなどの失敗体験があり、おっくうになる

 これらを一度に解消してくれそうな香水ショップが、2019年11月1日(金)に新宿にオープンします。コンセプトは、「2種類以上の香水を重ねてまとうこと」。そうすることで自分だけのオリジナルの香りを自ら創り出せるのだそう。さっそく体験しに行ってきたのですが、これ、香りを選ぶためのプロセスが想像していた以上に楽しかったんです。

店員のカウンセリングに従って自分の好みを伝えていく

 東京メトロ新宿三丁目駅から徒歩3分。開店を3日後に控えた「THE KAORI BAR FINCA(フィンカ)」(新宿区新宿6)。もともと同じ新宿三丁目エリアで店を構えていた同店ですが、2018年から一気に人気が拡大して、このたび床面積の広い新店舗で再オープンを迎えます。

 FINCAの香りバーは60種類ものオリジナル香水の中から自分の好みを選んで、重ねづけを楽しむ場所。「パイルアップ(pile-up)」というそうで、この楽しみ方を前提に商品を展開している香水ブランドは非常にめずらしいのだそう。どの香りとどの香りを重ね付けするかによって、さらにはどういう順番で付けるによっても、まったく違う香りになるというから不思議です。

FINCAオリジナルの香水は現在60種類以上。なりたいイメージを店員に相談しながら、香りを選んでいく(2019年10月29日、遠藤綾乃撮影)



 まずは、香りを選ぶことから。

 担当してくれた店員の庄司大河さんに伝えたリクエストは、「どちらかというと甘い香りが好きで、柑橘がキツ過ぎる系は苦手。でもあんまり甘々なのは年齢(アラフォー)的に似合わなさそう。だから甘いながらも少しキリっと引き締まっているような感じがいいです」という、極めて抽象的なイメージです。

 庄司さんはそこからさらに、今すでに持っている香水の銘柄とその香水についての感想(「本当はもっと穏やかな香りがいいと思ってる」とか、「ちょっと鋭過ぎて使えなかった」とか)を聞き出しつつ、併せて記者の「なりたいイメージ」や「憧れの女性像」なども聞き出していきます。さながら香りのカウンセリングです。

抽象言葉の応酬が、理想の香りを導き出す

 お気づきかと思うのですが、香りや匂いがどのような印象のものなのか、言葉で論理的に説明するのは非常に難しいこと。いっぽう、店員さんが試しに作ってくれる香りにはどれもほかとは違う際立った特長があって、その芳(かぐわ)しさに感じ取った驚きと感動を何とか相手(今回の場合は庄司さん)に伝えたくなってしまうものなのです。

 そうこうしているうちに極めて抽象的な言葉ながら、その場で同じ香りを感じている者同士には通じ合う表現で香りをほめたたえ合う「言葉サロン」のようなゲームが始まっていきます。これが思いのほか楽しいのです。

カウンターに並べられた60種以上のなかから、実際に香りの重ねづけを試しながら選ぶことができる(2019年10月29日、遠藤綾乃撮影)



 たとえばこんな感じです。

記者:さっきの「甘さの王道」みたいな香りに比べて、これはとても線の細い繊細な甘さの感じがします

庄司さん:ダージリンティーとアクア系の組み合わせです。透明感がありますよね

記者:こっちは、スパイス感があってものすごくエキサイティングというか、アクティブな香りですね

庄司さん:大人っぽさと軽快さが同居しているでしょう?

記者:これは……、刺激が強いようでいて、思ったより穏やかで、思わずスーッと目を閉じたくなりました

庄司さん:ラムの香りとウッド系の香りを重ねました。芯が強いのに、何か落ち着く香りですよね

 このように、はたで聞いている人には何のこっちゃと思うような会話が、香りを間に挟むことできちんと成立し、ともに共感し合えることがとても楽しく、「次も次も」と新しい組み合わせをどんどん試したくなっていってしまいます。気がつけばカウンターの上には11本もの香水の瓶が並んでいました。

 そうこうしているうちに、「これぞ!」と思う香りに出会うときが訪れるのです。

「最初に『良い』とおっしゃっていたスズランとベルガモットの香水に、雨上がりの草原のような香りを重ねて試してみませんか?」と庄司さん。雨上がりの草原(くさはら)……。もはやこの前振りからして、予感がありました。ここまで抽象的な言葉のやり取りをしてきたからこそ、相手の言いたいイメージも何となくすでに分かります。そして出てきた香水「SHY GIRL」と「HEALING SQUALL」の2種。記者にとっての「これぞ!」は、このふたつの組み合わせでした。

 その香りがどのように素晴らしいものかということは、おそらく誰も客観的には説明できないはずです。でも、そのことがまた香りを決めたときの喜びと楽しさを強いものにしてくれもする気もします。「これは自分が選んだ香りだ」という思いをいっそう固いものにして、選んだ香りに対する愛着をいっそう強いものにしてくれるように思うのです。

この日手にした2種の香水の組み合わせ、記者は明日から使ってみようかなと思えました。

「推しキャラ」の香りを求めてファンたちが殺到中

 FINCAをブランド展開するフォルトーナ代表の桑原ゆかりさんによると、このパイルアップ(重ねづけ)というスタイルを提案しているのは「似合う香りや好みは皆ひとりひとり違って、それは既製品の枠には収まりきらない」と考えるからなのだそう。

 たとえば有名ブランドが販売する人気の香水は、ひとたび流行するとユーザーが急増して街ですれ違う女性みんなから同じ香りがするようになったりします。でも、この香りは自分にはちょっと甘過ぎるな、とか、キツ過ぎるな、とか思っても、香りの微調整はなかなか利かないものです。

 本当に「好き」と思える香りを創ってほしい――。そんな思いで桑原さんたちが始めたFINCAは昨夏、思わぬ形で注目を集めることになりました。

 アニメや漫画、ゲーム好きのファンたちが「自分の『推しキャラ』をイメージした香水を作ってほしい」と、同店に詰めかけるようになったのです。現在、客層の中心は10代後半から20代の女性たち。30~40代の女性が友人や恋人へのプレゼントとして来店することもあるそうです。さらには、もっと年上の女性が「大好きだったブランドの香水が廃番になってしまったけど、どうしてももう一度あの香りをまといたい」と、愛する香りを再現してもらうために訪れることも……。

香水選びを終えた後のカウンター上は、さまざまな香りの瓶が迷路か地図のように広がっています(2019年10月29日、遠藤綾乃撮影)



 桑原さんと、FINCAの創設者でもある益子伸一さんのふたりは「FINCAは、香水を調合するのではなく、その場で創るというのがコンセプト。重ねづけする順番や量によって変わる香りをぜひ楽しんでほしい」と話していました。

 香水は30ml入りで2400円(税込)。同店は11月1日(金)11時リニューアルオープンします。

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