「筆算の線に定規」は、子どもにデメリット? 元塾講師が指摘する「教育の本質」とは

「算数の筆算で定規を使わず手書きしたら、担任にやり直しさせられた」というニュースが、先日話題になりました。子どもが定規を使って筆算を解くことには、そんなに重要な意味があるのでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

定規で計算ミスは防げるのか

「なぜ筆算の横線を、すべて定規で引く必要があるのでしょう」。そんな投げ掛けから始まるひとりの母親の疑問を取り上げた新聞記事が2019年9月、ネット上で大いに話題になりました。

 記事によると、彼女の小学5年生になる息子さんが、夏休みの算数の宿題で筆算の横棒を手書きで書いて提出したところ、定規を使ってやり直すよう担任の教師から求められたのだといいます。

 筆者は「定規を使え」という指導を受けてこなかった世代。今の小学校ではここまで徹底して定規の使用が求められているのか、と少々驚きました。わが家の子どもたちが通う小学校はどうかと確認してみたところ、2年生の足し算の筆算から定規を使うように指導していることが判明しました。

 筆者の子どもたちは、テストや宿題の筆算の式をフリーハンドで書いたからといって減点されたことはありませんが、授業中は必ず定規を使うよう指導を受けているようです。かつては使われていなかった定規が今はなぜ使われているのか、理由を探っていきましょう。

定規を使って筆算の問題を解く児童のイメージ(画像:写真AC)



 図形問題でもない筆算に定規を使う理由のひとつは、計算ミスを防ぐことにあります。

 筆算は上下に重なった数字と数字を見ながら足し引きする計算ですから、数字の位(くらい)がずれてしまうと計算ミスにつながってしまいます。真っ直ぐな線をフリーハンドで引くのは意外と難しいもの。上手にできる子もいれば、そうではない子もいます。そのミスを防ぐために定規を使うのは、なるほど合理的な理由かもしれません。

高学年で習う単元の「予習」?

 さらに教師の視点で考えると、また別の意図が見えてきます。筆算を教わる小学2年生の段階で定規を使い慣れておくことで、小学校高学年や中学校での図形作図やグラフ作成の単元でつまずかないための「予習」をしているというものです。

 塾講師として子どもを指導してきた筆者自身、「勉強ができる」ということと「定規の扱い方が上手」ということには、少なからず相関関係があるだろうと感じていました。三角形などの図形を描くとき、勉強のできる子はおおよその角度や長さを感覚で見立ててサッと線を引くことができていたからです。

定規を使わず筆算の問題を解く児童のイメージ(画像:写真AC)



 とはいえ教わる側の当の子どもたちは、筆算で使う定規にこうした複数の理由があることは当然、知る由もありません。「なんで定規を使わないといけないの?」と、疑問や不満を抱く子もいるでしょう。実際、わが家の小学5年生と3年生は「定規を使うのはめんどう」と言って、授業中は定規を使っても宿題ではフリーハンドで通しています。時間がかかる「筆算定規」という作業に、子ども自身がメリットを感じられていないようなのです。

 ほかの子はどうしているのか、と子どもたちに聞いてみると「真面目な子は宿題でもテストでも定規を使っている」「使っているふりをしている子もいる」との答え。子どもによって定規を使うか否かに濃淡があるのが現実のようです。

子どもが「面倒くさい」と思ったら逆効果

 計算ミスを防いだり、定規の扱いに慣れたりといったメリットがある一方で、子どもの性格によっては逆効果になる恐れもあります。

 塾講師として教えた子どものなかに、せっかちな小学生がいました。筆算の数字がズレてしまい、計算ミスを連発していたのです。

 その子は間違いをやり直すのも嫌いで、次々と新しい問題に手を出していくのですが、間違いばかりが続いて負のループに陥っていました。筆者が講師として指導したことは、「とにかく正しい位ごとに数字を合わせることだけに集中するように」。字の汚さは多少目をつぶって、数字と位を間違えないよう根気よく問題を解かせていきました。筆算を何度も解いていくに従って、その子は計算ミスを減らしていくことができました。

定規にこだわるより、もっと大切なこと

 もし、あの子に定規で線を引くよう指導していたらどうなっていたでしょう。おそらくもっと勉強しなくなっていたとのではないか思います。形から入ろうとすると「こんなのめんどくせ~」と言って、問題を解くことを放棄したのではないかと思います。

 子どもの性格によっては、定規で式を書くスタイルを受け入れられず「筆算は手間がかかってイヤ」「算数はめんどくさい」とマイナスの印象を抱いてしまうこともあります。「定規を使うこと」それ自体にこだわってしまっては、本末転倒になる恐れがあることを指摘しておきたいと思います。

「数字のズレをなくし計算ミスを防ぐ」ための定規の役割を、うまく引き受けてくれている道具はほかにもあります。最近、多くの小学生が使っているのを目にするようになった方眼ノートです。

 ひとマスごとに線で区切られているので、上下にまたがる筆算の数字の位がズレていないかどうかを意識するのには、とても便利なノートです。定規を使うのが苦手な子には、方眼ノートを使って位を意識させるのも、ひとつの手ではないでしょうか。

 筆算に定規を使うことについては、もちろん否定しませんが、学校側は「なぜ使うのか」「使うことでどんなメリットが得られるのか」ということを、子どもや保護者に説明して、混乱を招かないようにする必要があるのかもしれません。

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