海外選手と触れ合える? 2020年オリパラ開催で盛り上がる「ホストタウン」事業とは

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海外選手と触れ合える? 2020年オリパラ開催で盛り上がる「ホストタウン」事業とは

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種藤潤

フリーライター、エディター

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2020年の開催を控える東京オリンピック・パラリンピック競技大会。その裏でひそかに盛り上がっている事業があります。それは「ホストタウン」。いったいどのようなことをやっているのでしょうか。フリーライターの種藤潤さんが解説します。

次第に高まる、東京2020オリパラ熱

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京大会)の開催まで、1年を切りました。

東京都青梅市は2016年6月にドイツとの「ホストタウン」を登録。2017年10月には、ドイツの伝統的なお祭りである「オクトーバーフェスト」をモデルに、ドイツの食文化を広く紹介する「青梅オクトーバーフェスト」を開催。約1万3000人を集めた(画像:種藤潤)



 一部報道では、700万人以上が申し込みしたといわれる観戦チケットに見事当たった人は、リアルな観戦を心待ちにしているでしょう。そうでない人もテレビ画面を通して、何の競技を見るか楽しみにしていると思います。

 さらには、11月に開催されるもうひとつの世界的スポーツイベント「ラグビーワールドカップ」への盛り上がりもあり、東京を中心に日本国民の大会のムードは高まっていくことは間違いありません。

知っていれば、アスリートと交流できるかも?

 その一方で最近テレビやニュースなどでは、東京大会に訪れる海外の国と全国の自治体が交流する活動を伝えるようになりました。その事業名が「ホストタウン」ということは、一部の大会関係者や自治体関係者は知っていますが、一般人では聞いたことのない人も多いでしょう。

 しかしこの「ホストタウン」を知っていれば、あなたの住む地域でアスリートや関係者と直接交流できるかもしれません。そのため、「ホストタウン」は2020年を楽しむもうひとつの形とも言えます。

 この活動を取りまとめる内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局(以下、内閣官房オリパラ事務局)のオフィシャルサイトに記載された言葉などを要約すると、「ホストタウン」とは

「日本の自治体と東京大会に参加する国、地域の選手や住民が、スポーツ、文化、経済などを通じて交流し、地域の活性化等に生かしていく活動」

を意味しています。

全国400超の自治体ですでに実施

「ホストタウン」を通して行うことは、次の3つの活動です。

1.大会参加者との交流(大会の前後で参加した国や地域の選手と交流する)
2.大会参加国の人々との交流(参加国や地域からゲストを招き、歴史や文化を知ったり、子どもたち同士が互いの祭りやイベントに参加したりする)
3.日本人オリンピアン・パラリンピアンとの交流

 特に1と2に絞って、もう少し一般目線の言葉で置き換えると、

「東京を中心とした競技施設等がなくても、全国の自治体で2020年をきっかけに、海外の国や地域とさまざまな交流ができる仕組み」

と表現できます。

江東区辰巳にある、建設中の東京アクアティクスセンターの様子。2020年東京オリパラの競泳競技の会場に使われる(画像:写真AC)



 東京大会の競技は東京を中心に行われ、そこに訪れる海外の国や地域の人とは、関係者やボランティアスタッフが中心に交流が行われますが、この「ホストタウン」が登録された自治体では、関係者やボランティアスタッフでなくても、東京大会に関わる国や地域の人々と交流をすることができるのです。

 実をいうと、「ホストタウン」の交流はすでに始まっています。内閣官房オリパラ事務局が「ホストタウン」の登録をスタートした2016年ごろから、いち早く交流をスタートさせた地域はあり、すでに「ホストタウン」以前では考えられない国際交流の形が生まれています。ちなみに2019年現在、「ホストタウン」登録をしている自治体は全国で400を超えます。

日本全国で行われる豊かな交流

 私は2016年当初から、「ホストタウン」の取材を行ってきました。

北海道士別市は、2016年1月に台湾との「ホストタウン」を登録。その後、国立台湾師範大学のウェイトリフティングチームの強化合宿を誘致(画像:種藤潤)



 そのなかの一部を紹介すると、次のことがあります。

●山形県村山市
 ブルガリアの新体操ナショナルチームの世界選手権の事前合宿を受け入れ。日本食の体験、さくらんぼ狩り体験なども実施。

●徳島県
 ドイツの柔道ジュニアチームの強化合宿を受け入れ。地元の梨狩り体験、買い物体験などを行う。高校生をホストタウン特使と任命し、選手との交流の対応を行ってもらっている。カンボジア水泳チームやドイツカヌーチームが合宿に訪れるなど、相手国との絆を深めている。

●山形県鶴岡市
 ワインの産地であるモルドバの市民交流を目的とした「モルドバワインを楽しむ会」を開催。地元野菜を用いた「親子モルドバ料理教室」も開催。さらには、オーガニック農業が盛んなドイツ、モルドバのオーガニック関係者を鶴岡市に招き、「国際オーガニック・ミーティング」を開催。

●北海道士別市
 台湾のウェイトリフティングチームの強化合宿を受け入れ、選手たちにそば打ち体験など日本文化体験を提供、合宿期間中、地元のGAP(Good Agriculture Practice=農業生産工程管理)認証取得食材を提供し、スポーツ栄養の資格を持つ管理栄養士が献立を作成した。

●茨城県笠間市
 エチオピア舞踊とコーヒーセレモニーを披露する「エチオピアフェスティバル」を開催、市民300人がエチオピア文化に親しむ。エチオピアのナショナルチームからジュニア選手を招聘し、茨城県の中学生駅伝大会に参加した。

 特に村山市や徳島県などは、多くのメディアで取り上げられ、地域の活性化のひとつとして「ホストタウン」が注目されるきっかけにもなっています。

 こう見ると、スポーツ選手の事前合宿、強化合宿をきっかけとした交流がありつつも、食や文化交流など、スポーツにとどまらない住民との交流が行われていることに気づくでしょう。

オリパラ以降の交流活動も視野に

 そもそも「ホストタウン」は、東京大会に出場する国や地域との交流を行うことをその目的としています。そのため、大会前にコンディションを整える「事前合宿」のみならず、大会後に選手に訪問してもらう大会後交流を行うホストタウンも増えてきています。

 競技会場がない、東京から遠いといった事前合宿が難しい地域でも、「ホストタウン」になることができるのです。さらには、2020年以降の継続した交流活動を行うこともその狙いとされています。そしてその「ホストタウン」への取り組みには、地元市民であればさまざまな形で参加することができます。

 東京都内の「ホストタウン」の登録状況は、2019年8月末現在、現在都内で20の自治体がホストタウン登録しています。大田区はブラジル、世田谷区は米国のように事前合宿を行うところもあれば、選手と大会中・大会後に交流し、それまは文化交流を中心に行うところもあり、そのひとつが青梅市です。

東京都青梅市は2016年6月にドイツとの「ホストタウン」を登録。同市ではカヌー競技が盛んで、2016年10月に同市で実施されたジャパンカップでは、ドイツチームがオープン参加した(画像:種藤潤)



 青梅市はもともとドイツのボッパルト市と姉妹都市で、さらに青梅市がカヌー競技が盛んであることから、ドイツの事前合宿誘致も目的のひとつとして「ホストタウン」登録をしました。

 その交流事業として、ドイツ発祥の祭り「オクトーバーフェスト」を青梅市で開催。2日間で1万3000人を超える人が集まり、翌年も行われました。また、田植え体験や田舎暮らし体験などの交流も行っています。

2020年だからできる楽しみを味わおう

 2020年に向けて、青梅市のような活動を活発にする東京の「ホストタウン」は増えてくるはずです。それは、あなたの暮らす街の「ホストタウン」かもしれません。

 また、もしあなたの街が「ホストタウン」になっていなくても、東京大会期間中、「ホストタウンハウス」という、全国の「ホストタウン」の取り組みが展示されるスペースが誕生します。そこでどんな国際交流が生まれているかを知るのも、2020年だからこそできる楽しみ方と言えるでしょう。

 一生に一度の体験になるかもしれない東京大会、せっかくなら観るだけでなく、わが街の「ホストタウン」に参加し、国際交流を通して楽しんでみてはいかがでしょうか。

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