いくつ覚えてる? 日本から消えた「ファストフードチェーン」の数々
東京にはこれまで、数多くのファストフードチェーンが生まれ、そして消えていきました。その歴史について、ライターの橘真一さんが解説します。東京から消えたチェーン 誰もが知るファストフードチェーンが、東京の街から消える……。過去にそんな現象が何度も起きています。 例えば、いろいろな街に当たり前のようにあったハンバーガーチェーン「バーガーキング」、同じく「ウェンディーズ」の店舗が21世紀のあるとき、完全になくなってしまったのです。 もちろん、超常現象が起きたのではありません。アメリカ生まれのふたつのチェーンが、経営上の理由で日本から撤退したというのがその理由です。ただし、バーガーキングとウェンディーズは、のちに日本に再上陸したため、私たちはまた、「ワッパー」や「ウェンディーズバーガー」を手軽に食べることができるようになりました。 といっても、これは珍しいケースで、営業がストップしたまま復活することのないファストフードチェーンは数多くあります。 世界最大のドーナツチェーンが完全撤退「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の日本1号店(現在は閉店)が新宿サザンテラス(渋谷区代々木)に登場したのは2006(平成18)年。以降、全国展開されることで、「ミスタードーナツ」と並ぶ、日本におけるドーナツ界の2強を形成しています。 ファストフードチェーンといえばハンバーガー(画像:写真AC) しかし、かつてはもうひとつの大手がありました。それが1970(昭和45)年に銀座に1号店がオープンした世界最大のドーナツチェーン「ダンキンドーナツ(現在、海外ではダンキン)」です。 本国アメリカでミスタードーナツは、ダンキンドーナツから独立して生まれたチェーンで、しかも、1990年にダンキンドーナツに買収されています。つまり、 ダンキンドーナツ > ミスタードーナツ という構図なのです。 ところが、日本に限っては事情が異なり、ダスキン(大阪府吹田市)が運営した後発のミスタードーナツがシェアを大きく広げたため、劣勢に立ったダンキンドーナツは1998年に消滅してしまいました。 日本マーケットの特殊性日本マーケットの特殊性 ローストビーフバーガーを主力商品に、アメリカから80年代に日本進出した「アービーズ」というチェーンもいつの間にか撤退。2003年以降、都内で何軒か展開されたアメリカのホットドッグチェーン「ネイサンズ」も10年持たずに消えてしまいました。 アイスクリーム、ソフトクリームのチェーン店で、第1号店が70年代に銀座にオープンした「デイリークイーン」も今は日本にありません。雪だるまのような形状のソフトクリームが人気で、ハンバーガーなども販売もしていましたが、2004年までにすべての店舗がクローズになりました。 アイスクリーム店では、1984年に青山に1号店がオープンした際に社会現象的な人気を集めた「ハーゲンダッツ」もしかり。その日本法人は存続していますが、2013年に店舗営業が完全終了。現在は、コンビニやスーパーでのパッケージ販売がメインになっています。 店舗営業は終了したものの、製品開発はいまだ盛んなハーゲンダッツ(画像:ハーゲンダッツジャパン) これらのチェーンは本国や諸外国では店舗が幅広く展開されていることから、いずれも、たまたま日本での展開がうまくいかなかった、マーケットにマッチしなかったというケースがほとんどなのでしょう。 グリコ、雪印、森永、明治が参入も…… 日本から手を引いた海外のチェーンとは別に、日本生まれのチェーンが消滅したケースもあります。 おなじみの「ロッテリア」は、大手菓子メーカー・ロッテ(新宿区西新宿)の系列ですが、他の食品メーカーも続々とファストフード業界に参入し、ほとんどが撤退した歴史があります。 「ロッテリア」のウェブサイト(画像:ロッテリア) 江崎グリコ(大阪市)は1973年にアイスクリームをメインに「グリコア」なるチェーンを始めます。その後、ハンバーガーなども販売するようになりましたが、90年代前半にフェードアウトしています。 雪印乳業(現・雪印メグミルク)が70年代に展開した「スノーピア」というファストフード店も、アイスクリームとハンバーガーが主力でしたが、やがて消えてしまいました。 同じく70年代生まれで、森永製菓(港区芝)傘下の「森永LOVE」は原宿の竹下通りや渋谷の文化村通りなど都内にも多数の店舗がありました。しかし1996年に運営会社がバーガーキングの日本法人(当時)に買収され、消滅しました。 明治乳業(現・明治)系として1973年にオープンした「サンテオレ」は、最盛期は100店以上を数えました。現在は明治グループを離れ、横浜などで数店のみ営業されています。 懐かしの国鉄系ファストフードの名残も懐かしの国鉄系ファストフードの名残も 食品メーカー以外の系統では、旧国鉄に関連した飲食事業を行っていた日本食堂(現・日本レストランエンタプライズ)が、昭和の駅ナカに展開したハンバーガーチェーン「サンディーヌ」も今はなく、JRの駅ナカカフェ「サンディーヌEXPRESS」という店舗名にその名残を残すのみです。 そのほか、80年代にハンバーガーを100円で販売していた「バーガーキッド」、クレープのチェーン店「クレープハウス・ユニ」なども現在は店舗の存在を確認できません。 海外発のチェーン店の味は、またいつか自由に海外旅行に行ける社会になれば楽しめるチャンスがあります。しかし、消えていった国産ファストフード店のメニューは今後も2度と食べることができないでしょう。 ファストフードチェーンといえばフライドポテト(画像:写真AC) ファストフード店といえば、いつでもどこでも食べられる味……というイメージがありますが、チェーン自体がなくなってしまえば、それも永遠に幻の味になってしまうのです。
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