一見さんお断り――日本各地で「予約制のカフェ」が増え続けるワケ
2019年9月8日
ライフ現在、予約制のカフェが各地に登場しています。いったいなぜでしょうか。カフェライターの川口葉子さんがその背景について解説します。
予約制の理想は、魅力が自然に広まること
予約制のカフェが日本の各地に登場しています。主に個人経営の小さなカフェですが、常に予約で満席になる人気店も少なくありません。

たとえば東京都内のあるカフェは、1か月のうち2週間だけ看板を出さずにひっそりと営業しており、残りの2週間、店主は小さな旅館などに卸すスイーツ作りに集中します。カフェ開催日の定刻になると、予約した人だけがカフェの扉の向こうへ吸い込まれていきます。その光景は、いつでも誰でも気軽に入れる汎用的の高いカフェとは対照的です。
店内はわずか数席。ゆえに不特定多数の人に情報が拡散されることを避けて、リピーターが身近な人にカフェの魅力を伝え、自然に広まっていくことを理想としているのです。なぜこういったカフェが増えつつあるのでしょうか? その背景を探りつつ、完全予約制カフェの例を3つご紹介します。
1.特別な場所で、予約制の茶会
2013年にオープンした「銀月サロン」(京都市)は、大阪在住の女性が京都市内に残る古い洋館と出会ったことから誕生しました。
オーナーは中国国家茶芸師の資格を持ち、中国茶ソムリエとして多方面で活躍する高田小絵子(たかた さえこ)さん。高田さんは京都を訪れた折に、今にも朽ちそうな築100年近い洋館アパートメントに出会い、その風情に魅せられて2階の一室を賃貸契約しました。水回りなどは不便ながら、美しく改装したその部屋で、四季折々に完全予約制の茶会を催しています。
参加者とともに、お金に換算できない価値を創出
常時開催しないのは、高田さんが大阪に拠点を持ちつつイベントや中国茶の買い付けで旅の多い生活をしていることと、老朽化した建物の小さな一室に設備上の限界があるため。桜や紅葉などの季節に合わせて、期間限定で完全予約制のお茶会を開くのが最適解だったのです。

ビジネスの観点からは非効率的。しかし、歳月を経た洋館の一室を修繕しながら使うことで建物を保護し、そこに流れる時間を茶会の参加者たちと共に楽しむことに、高田さんはお金に換算できない豊かな価値を見出しています。
高田さんが中国や台湾で買い付けてくる茶葉の品質の高さ。コース仕立てで提供するお茶と点心の味わい。そして、地元では有名なこの洋館自体が持つ独特の雰囲気が非日常の時間を醸し出してくれると、茶会は口伝えで評判に。
ことに春、洋館の前庭に立つ桜を愛でる「桜茶会」には予約が集中します。部屋の白壁が花の色を淡く反射して、参加者を桃源郷で遊ぶような心地に誘うのです。

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