目の前にある「小さな幸せ」が、若者を選挙から遠ざける
2019年8月6日
ライフ2016年の18歳選挙権開始当初から、若者の投票率の低さが常に話題となっています。その根底にはいったい何があるのでしょうか。自らも20代であるライター・秋山悠紀さんが持論を展開します。
平成世代が持つ「今ある幸せだけを求める感覚」
総務省の発表によると、2019年7月21日(日)に投開票が行われた第25回参院選の投票率は、24年ぶりに50%を割る選挙区48.80%、比例代表48.79%という結果になりました。とりわけ低かったのが20歳以下で、18歳では34.68%、19歳ではさらに下がって28.05%。2016年に18歳選挙権がスタートして3年余りが経ってもなお、若者の政治参加に対する意識の低さがうかがえます。
1989(平成元)年生まれで、現在29歳の筆者が大学生だった頃を思い出しても、現在の若者を取り巻く状況は10年前とさほど変わっていないように感じられます。ツイッターでは選挙当日、20代の彼女から「学校で政治や選挙のことなんか教えられてないから、選挙に行けとか言われると上から目線に聞こえる」と言われて喧嘩したという男性の投稿も話題になりました。ということで今回は、自身の経験から今の20代の政治への意識について考えます。

今の20代は物心ついた時にはバブルがすでに崩壊しており、常に不景気で絶望の時代を生きてきたとも言われています。経済状況が常に悪い中で生きているから、「投票に行かなければ世の中が悪くなるよ」と言われたところで実感がありません。
自分たちの生活水準がガクンと悪くなるか、ガクンと良くなるかという劇的な変化を経験していないので、政治が世の中を良くするイメージができない。逆に言うと、政治が世の中を悪くすることに慣れすぎているとも言えます。
そんなぬるま湯のように停滞した絶望の中、生きる希望となるのは実感の沸かない遠い将来ではなく、手の届く毎日の小さな幸せです。
海外旅行や好きなものを何でも買えるほどのお金はないけれども、無課金のアプリゲームをしながら1食500円以下のコンビニ食を食べ、好きな芸能人やアーティストの話をしながらネットやアプリ、アニメなどのコンテンツを消費する。消費税や年金が自分に関係があり、「投票には行くべき」とは思っているものの、今目の前にある幸せの方が自分にとっては大事という感覚があるのではないでしょうか。
こうした毎日の幸せが直接的に脅かされる状況にならない限り、多くの20代にとって政治とは「自分以外の大人が考えるもの」という認識が強く、選挙の際に投票所にわざわざ足を運んで投票するというアクションは、起こしにくい状況になっているのでしょう。
もはや若者は「投票に行かなければ1万円が取られる」など、具体的に今すぐ損をするような施策さえ求められているような気がします。

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