定食わずか500円 新大久保の「ネパール料理店」に集う、留学生のひたむきな思いとは
2019年7月15日
知る!TOKYO日本国内の外国人労働者数は約146万人といわれています(2018年10月末時点)。その数は年々増加傾向にあるにも関わらず、日本人たちは彼らについてよく知っているとはいい難い状況です。アジアに関する多くの著書があるライターの室橋裕和さんに、新大久保のネパール人についてレポートしていただきます。
新大久保は、タピオカとK-POPだけの街ではない
スパイスがさわやかに香り、よく煮込まれたチキンカレー。じゃがいもの炒め煮。そして、豆のスープとご飯、ピリ辛の漬物。ワンプレートに並ぶいくつもの料理は、まず彩りがいいんです。

口にしてみると、さらさらのカレーはほどよくスパイシー。日本人でも食べやすく、じゃがいもはほくほく。豆のスープは、周りの客にならってご飯にかけてみましたが、これもいけます。ついでに言うと、ご飯はおかわりができます。
これは、ネパールの定食「ダルバート」。ダル(豆)と、バート(ご飯)をベースにしたセットメニューで、ネパールのソウル・フードと言えるかもしれません。いわゆる「庶民の味」です。
このダルバートを楽しめるのは、なんといっても新大久保。「女子が、タピオカとチーズドッグ目あてにやってくるコリアンタウン」というイメージが強いかもしれませんが、いまや新大久保は日本を代表するミックスカルチャーの街なのです。近年はベトナム人やバングラデシュ人、ネパール人などが急増し、多くの食材店やレストランが並んでいます。
特にネパールレストランは、日本で学び、働くネパール人がたくさんやってきます。店のたたずまいは決しておしゃれではありません。しかし、新大久保で暮らすネパール人たちで賑わい、テレビではネパールの放送が流れ、スパイスの香りが漂っています。
日本人のお客がまったくいないことも珍しくはありません。カトマンズの路地裏じゃないかと錯覚するぐらいです。日本にいながら、ネパールを旅している気分になります。
そんな店が新大久保にはいくつも点在しています。「ラトバレ」「ネパールモモ」「トーキョーロディ」「ニュームスタン」「さくら」……ダルバートは、どこも大抵500円。破格ともいっていい安さなのです。
ネパールで、ダルバートは「格安で、誰でも食べやすいものであるべし」という考えがあります。それ加え、在日ネパール人の急増で、ダルバートに使う食材や調味料を扱う店も増え、価格が安くなったことで500円での提供が可能になったのです。
新大久保のネパール化が進んだ理由
現在とは「違う意味」で労働力不足だったバブル時代に、多くのネパール人が日本にやってきました。彼らがまず住んだのは品川区の西小山や、大田区の蒲田あたりだったと言われています。
2000年代に入ると、それが少しずつ新大久保へ移っていきました。新宿という巨大ターミナルのが近く便利で、そのわりに家賃は安い、すでに韓国人や中国人たちのパイオニアがいて外国人に慣れている……そんな理由で、食材店やレストラン、さらにはネパール語新聞の編集部などが新大久保に進出したのです。
大きな転機は、2011(平成23)年の東日本大震災でした。震災の影響で、中国や韓国の留学生たちがいっせいに帰国したことで、新大久保から高田馬場にかけて密集する日本語学校は運営に困ることになります。そこでネパール人やベトナム人を、より広く受け入れることにしたのです。
ネパール人はやがて、新大久保の一大勢力となっていきます。日本全体でおよそ8万5000人のネパール人が暮らしていますが、新大久保を擁する新宿区が特に多く、約3200人が集住しています。
買出しや食事をしたり、友達と会ったりするために、ほかの街からこの一大コミュニティを訪れるネパール人はたくさんいて、新大久保は「リトル・カトマンズ」とも言える街になっています。

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