一歩入れば昭和にタイムスリップ! 府中市「大東京綜合卸売センター」のレトロ感と品揃えが凄かった
観光地化した豊洲や築地とは対照的に、都内にはまだ昭和の雰囲気を残している市場があります。そのひとつが府中市にある大東京綜合卸売センターです。ルポライターの昼間たかしさんが現場を歩きました。府中駅から約1500m 昭和の雰囲気を残す市場 筆者(昼間たかし、ルポライター)は先日、記事執筆の資料を探しに府中市へ行きました。目当てのものは運よくすぐ手に入れられたので、あまった時間を使い街を散策することにしました。 といっても、府中市は東京でも屈指のコンパクトシティ。にぎやかなエリアは駅周辺に固まっているため、府中駅から少し歩けば郊外の風景が広がります。 そんな府中の町外れに、府中市民以外はあまり知らない盛況なスポットがあります。「府中市場」の名称で知られる、大東京綜合卸売センター(府中市矢崎町)です。直線距離で京王線の府中駅から約1500m、武蔵野線の府中本町駅から約900mの位置にあります。 観光地化した豊洲や築地の市場とは対照的に、大東京綜合卸売センターは昭和の雰囲気をいまだ残しています。 1966(昭和41)年のオープン以来、50年以上の歴史を持つ大東京綜合卸売センター。名前に「卸売」とありますが、小売りもOKです。施設の雰囲気もさることながら、「大東京」という名称もそそります。 「大東京」の「大」に込められた思い 立地する地名の前に「大」の一文字を加えることは、昭和初期から40年代までに起きた一種のブームでした。愛知県名古屋市の名古屋駅前にある「大名古屋ビルヂング」は、その代表格といえるでしょう(1965年完成)。 府中市矢崎町にある大東京綜合卸売センター(画像:(C)Google) 当時は大の一文字を付けるだけで、「右肩上がり」「モダン」な雰囲気でしたが、今では逆に「昭和レトロ」な懐かしさを感じさせます。 余談ですが、地名に大を付けるのは発展する町を表現する際によく使われていたようです。過去の資料を調べると 「大仙台」 「大岡山」 といった表現によく出会います。鳥取市に至っては、その上をいく 「グレート鳥取」 という呼称を使っていたこともありました。 そんな大東京綜合卸売センターですが、残念ながら都内での地名度はさほど高くありません。その一番の理由は、前述のように駅から距離があることです。京王線の府中駅からは約30分、武蔵野線の府中本町駅からは約20分は歩きます。にもかかわらず盛況ですから、それだけ魅力があるのでしょう。 市場の床は懐かしい茶色のタイル張り市場の床は懐かしい茶色のタイル張り 大東京綜合卸売センターに到着し、入り口から建物の外観を見ると、オープン以来あまり手を加えていないのか昭和レトロな雰囲気が漂っています。建物内に入ってビックリ。壁や柱は無機質なコンクリートで、年月を重ねて少し灰色になっています。 目線を下に向けると、床が茶色いタイル張りになっています。掃除時に水で洗い流すのに適していますが、もう現代ではあまり見かけません。全国各地の市場を訪れた筆者ですが、こんな昭和レトロな雰囲気は ・旦過市場(北九州市) ・岡ビル市場(岡山市) くらいしか思い出せません。 府中市矢崎町にある大東京綜合卸売センター(画像:(C)Google) 確かに、レトロな建物を生かして市場として現役で営業している施設は全国各地にあるのですが、気がつけば多くは観光客向けになっています。そうした時代だからこそ「大東京綜合卸売センター」のような、卸も小売りもやっている地元民向けの市場というのは、極めて貴重なのです。 チャイナタウンに引けを取らない品ぞろえ 早速、市場の内部を見てみましょう。 店舗の数は90あまり。生鮮三品(青果、精肉、鮮魚)を扱う店がメインですが、食器類などの日用品を扱う店も入居しています。浅草橋(台東区)に本社のある、包装用品大手・シモジマも入居。この時点で「ああ、たいていのものはここでそろうな」と実感しました。 大東京綜合卸売センターの外観(画像:昼間たかし) 続けて見つけたのが中国物産店です。池袋のチャイナタウンにある中国物産店にも引けを取らないい品ぞろえの店も入居していることから、トレンドに敏感なことがうかがえます。 なにせ、本格的な万能調味料から最近話題のラオガンマー(具入りラー油)までがほぼそろっています。「今日はちょっと本格中華でもつくってみようか」と思ったとき、すぐに挑戦できる環境です。 ちなみに、各種の中国飲料(激甘なペットボトル茶)も置いてありました。 市場が府中市人気に拍車を掛ける?市場が府中市人気に拍車を掛ける? 生鮮三品はどの店も安価です。 精肉店では、一般的なスーパーマーケットで手に入りにくい内臓も販売。とりわけ、牛すじブロックの安さが目立ちます。都心の肉が安い店といえば肉のハナマサですが、商品ラインアップもそれと同等か、もしくはそれ以上です。 筆者が大東京綜合卸売センターを訪れたのは11時頃でしたが、鮮魚店は既に商品が少なく、閉店準備を始めていました。聞けば、開店は7時からで、新鮮なものは早い時間に売り切れてしまうそう。この辺りからも市場の「地元密着感」がうかがえます。 大東京綜合卸売センターの外観(画像:昼間たかし) 今回は生鮮三品を購入せずに見て回っただけですが、約1時間も楽しめました。店内にはうどんなどの軽食を出す店もあり、イートインスペースも確保されています。そのため、市場内で総菜を買ってその場で食べられます。多摩川や川の近くにある公園でピクニックをするときも、自宅から手ぶらで出掛けて、市場で買い物をすればいいのではないかと思いました。 前述のように都内市場の観光地化が進んでいるなか、ここまで地元密着感があふれている市場は全国的にも貴重な存在です。 府中市は最近、駅前の再開発が完了したこともあり、「住みたい街ランキング」の上位にランクインしています。もしかしたら、この市場が府中市人気に拍車を掛けるかもしれません。 実は市場を訪れた後、府中産の朝どれ野菜を販売していると聞き、近くの郷土の森観光物産館(府中市是政)にも寄ってみましたが、野菜はすべて売り切れでした。もしや、府中市民は、皆さん朝が早いのでしょうか?
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