国内利用者4500万人、日本人はなぜ「リツイート」が好きなのか? SNS時代の今、考える

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国内利用者4500万人、日本人はなぜ「リツイート」が好きなのか? SNS時代の今、考える

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辻泉(中央大学文学部教授)

日本では約4500万人のユーザーがいるとされるTwitter。その特徴的な機能のひとつに、自分が得た情報をフォロワーに共有する「リツイート」があります。人々がリツイートをする理由について、中央大学文学部の辻泉教授が社会情報学の視点から考察します。

Twitterユーザーの多い日本社会

 日本は世界的にもTwitter(ツイッター)のユーザーが多いことで知られています。Twitter社が公表している月間ユーザー数でも、世界全体がおよそ3.3億人であるのに対し、日本は4500万人とおよそその7分の1を占めています(前者が2019年4月、後者が2018年12月のデータ)。

Twitterユーザーにとって「リツイート」はとても身近な行為(画像:写真AC)



 Twitterは他のSNSと比べても、その「ゆるさ」が特徴といわれます。アカウントの作りやすさやフォローのしやすさもそうですが、他にない特徴として、「リツイート」という機能が挙げられるでしょう。自分が得た情報をフォロワーに共有するだけの機能です。

 ここでは、なぜ人はリツイートをするのかということを考えてみたいと思います。

 大きく分けて、そこにはふたつの理由があるように思います。ひとつには、「善意の拡散」のためではないでしょうか。そして、もうひとつには、「いいね」を押すほどではないにしても、遠回しに賛成であることを示したいというような、「消極的賛成」のためではないでしょうか。後者のほうが、今日では主流であるように思います。

 これらの点について、日本社会でTwitterが急速に注目を集めることになった「あの日」の出来事、すなわち2011年3月11日の東日本大震災を思い出すことから考えてみたいと思います。

あの日からのTwitter

 あの日私は、東京の池袋にある大学で、会議に出席している最中に地震にあいました。テレビの速報で、大まかな被害状況は伝わってきましたが、詳細な情報はよく分かりませんでした。携帯電話やメールも通じず、家族とも連絡が取れないままでした。

 夕方になって、意を決して徒歩で帰ることにし、自宅の方向に向かって、ひたすら明治通り沿いを3時間ほど歩き続けました。バスはかろうじて動いていましたが、すごい人の数でとても乗ることはできません。公衆電話の前にも長い行列ができていました。

 そんな中、ほぼTwitterだけが滞ることなく機能していました。あまりにも長い時間、歩き続けるのも手持ち無沙汰だったので、その時の気持ちを投稿したりしながら、一方で、他のどのメディアよりも、有用な情報が交わされていたのを覚えています。

「どこそこに閉じ込められているので助けてほしい。誰でもいいからこの情報を拡散してほしい」という切迫した情報や、「〇〇小学校が避難場所として解放されているので、帰宅困難者の人はそこに行くといい」などといった情報が、リツイートされてきました。

 こうした人助けのための有用な情報が投稿されたのちに、いくえにもリツイートされて拡散されていく様子は、ノンフィクション作家レベッカ・ソルニットの書名の通りに、『災害ユートピア』(亜紀書房 、2010年)のようでした。そこでのリツイートはまさに「善意の拡散」のためのツールだったのです。

タテマエばかりのマスメディア、玉石混交のTwitter

 また、人々の意識が、地震や津波による直接的な被害から、福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染へと移り変わるにしたがって、リツイートする理由も変わっていったように思います。

 文字通り、未曾有(みぞう)の一大事を前にして、マスメディアは明確さを欠いた「タテマエ」ばかりの情報に偏る傾向がありました。

 一方でTwitter上では、「プルトニウムは飲んでも大丈夫」という意見から「ただちに日本を捨てて国外に避難すべき」という意見まで、まさに玉石混交、賛否両論、さまざまな意見が飛び交いました。

 ハッキリと賛成できる意見や情報ならば、迷わず「いいね」をつけて、さらにリツイートもするでしょう。一方で、ハッキリとした根拠もなく、強く賛成することはできないけれども、「どちらかといえば賛成」するような意見に出くわすことも多々ありました。

 そのような場合には、自分の判断材料として、さらに他の人々の反応を知りたくもなります。そんなときこそ、「いいね」をつけずにリツイートだけしていたのを覚えています。

「消極的賛成」としてのリツイート

 今日では、こうした「消極的賛成」は、リツイートをする大きな理由となっているように思います。

 時々、「リツイートは必ずしも賛同を意味しません」と明記したアカウントを見かけますが、このことは逆に多くの人々がリツイートに何がしかの賛同の意味があるととらえていることを示しているでしょう。

 実際に2014年にインターネット広告代理店のオプト社がネット上で行ったアンケート調査でも、リツイートするツイートについて、「面白いツイート(43%)」に次いで多く挙げられていたのが「共感できるツイート(33%)」でした。

 冒頭でも記した通り、リツイートという、他のSNSにはないこの機能が、やはり日本社会では重要なのではないでしょうか。

 アンケートに関する専門家の間でも、日本社会には「“どちらかといえば”テンデンシー(傾向)」が強く存在するとよくいわれます。ハッキリとした意思表示が遠慮されがちなこの社会では、「どちらかといえば……」という文言を付けた選択肢を用意しないと、なかなか回答してもらえないということです。

 はっきりと「賛成/反対」を示すことが遠慮されがちなこの社会において、リツイートという機能は、「どちらかといえば賛成」を示す貴重な機会となっているのではないでしょうか。

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