東京に住むなら「元気な商店街」の近くをおすすめしたい、3つの「深イイ理由」

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東京に住むなら「元気な商店街」の近くをおすすめしたい、3つの「深イイ理由」

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荒井禎雄

フリーライター、放送ディレクター

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家賃や物価が高く、「住みにくい」というイメージが根強い東京。しかし一方で、都市部こそ庶民的な商店街が生き残りやすいという一面も。板橋区や商店街に関する著書が複数あるライターの荒井禎雄(さだお)さんが、東京の暮らしと商店街の関係性について解説します。

東京こそ、庶民的な生活が送りやすい

 東京23区は、常にどこかで大規模開発が行われ続けてきた土地で、土地価格の高騰や、それに伴う家賃や物価の上昇などが起きており、非常に暮らしにくいイメージが植え付いていることと思います。

昭和レトロな葛飾区の立石仲見世商店街(画像:写真AC)



 しかし、実はあるひとつのことに注目するだけで、23区内であってもお財布に優しい、とてもコストパフォーマンスに優れた生活ができるということをご存知でしょうか。

 何に注目すべきか……、それはズバリ「商店街」です。

 商店街というと、地方都市で潰れた店がシャッターを下ろしっぱなしにしている、いわゆる「シャッター通り」という印象があります。しかし、東京や大阪といった一部の大都市では、意外と昔ながらの商店街が活気を維持して生き残っています。

 その理由を簡単に説明すると、東京や大阪といった、世界でも有数の賑やかな土地は利便性が高く、求心力のある街が密集しているため、移動に車が必須という生活になりづらいからです。

 それにより、鉄道駅から住宅まで歩いて移動する住民が多く、その動線上にある商店街への需要が無くならないのです。

 加えて、古くからの街で商売を続けている個人商店は、土地建物の減価償却が終わっているケースが多く、そうした店は飲食店でも小売店でも必要なランニングコストが低く抑えられますから、多少販売価格を下げてもやっていけるのです。

 こうした奇跡的なバランスがたまたま整っていたことから、最も庶民的な生活から遠いと思われがちな東京が、実は日本で一番「商店街を中心とした庶民的な生活が送れる土地」となっているのです。

 東京に限って言えば、

・新宿や渋谷といった、鉄道駅を中心として大規模かつ乱暴な開発が行われた土地
・その周辺にあるマンションばかり立ち並んだ土地
・昭和で時間が止まったような古臭い商店街を中心とした土地

といった具合に、極端な色にハッキリ分けられているといえます。

なぜ商店街があると生活が楽になるのか

 では、そんな東京23区で生活する上で、なぜ商店街があると庶民的な暮らしが可能になるのでしょうか。それにはいくつか理由があります。活気ある商店街が身近にあることで、以下のようなメリットが得られるのです。

インバウンドにも人気な台東区の「谷中ぎんざ」(画像:写真AC)



1.物価の安定
 もし都内の商店街を見て回る機会があったら観察してほしいのですが、活気ある商店街には、同業種の店および売り場が複数ある場合がほとんどです。

 例えば、私が生まれ育った板橋区大山の商店街は、個人商店とスーパーを合わせて、野菜や精肉の売り場がそれぞれ10か所以上あります。

 そうした商店街では、客を掴むために各お店が特売品を作るなど経営努力を重ね、その結果23区であっても非常に安く買い物ができる街になるのです。

 これが徒歩10分圏内にスーパーが1軒だけあるといった土地では、そのスーパーの値付けに従って物を買うしか選択肢がありません。それでは金額の問題以外に「選ぶ・探す楽しみ」も得られなくなってしまいます。

 また、昔ながらの商店街が生き残っているということは、その土地は大規模な開発を避けられたと考えられます。もし開発が行われていたら、条件の良い店から順番に切り取られていき、商店街としての形を保てなくなるからです。

 よって、商店街が生き残っている土地ならば、土地価格や家賃はそこまで高騰していないはずで、そうした面からも庶民に優しい街である可能性が高まるのです。

2.生活・文化レベルの上昇
 昔ながらの個人商店中心の商店街とは、言ってみれば「専門店の集合体」です。ということはお店の主人らと最低限のコミュニケーションが取れれば、気軽に専門知識やヒントが得られることになります。

 例えば知らない野菜を見かけたら上手な使い方を聞いてみるとか、魚屋で旬の美味しいものを教えて貰うとか、さらには物の良し悪しの見極め方もレクチャーしてくれるでしょう。

 そうした生活を続けると、特にお金をかけることもなく、自然と生活文化のレベルが上がっていきます。

3.孤独の解消
 これは意識しないと気が付かない点かもしれませんが、現代社会ではバカにならない要素です。

 商店街のオジちゃんオバちゃんは、道行く人に気軽に声をかけ店に呼び込み、何度か買い物をしてくれた客のことは、名前から好みまでしっかりと覚えます。

 そうした人間関係をわずらわしいと感じる方も多いでしょうが、それが苦にならないのであれば、積極的に人間関係を構築した方が良いでしょう。自分を知ってくれている赤の他人がいるということは、何かにつけて心強いものです。

 ここ数年、孤独に起因するさまざまな病や社会問題がささやかれていますが、古臭い商店街の方法論は、そうした孤独感を解消する効果も期待できます。

 特に地方から出て来て頼る人もいないという場合、下手をすると他人とのコミュニケーション機会が一切ない生活になる可能性もありますから、それを不安に思うならば賑やかな商店街のある街に住むことを強くオススメします。

商店街は格差を埋める

 昭和から平成、そして平成から令和へと時代が移り変わり、その間に便利とされる街の形や買い物手段は、コンビニ・郊外型ショッピングモール・ネット通販……と、次々と変化し続けてきました。

 そうした流れの中で、昔ながらの商店街が持つ要素は時代遅れで不便とされる場合が多かったのですが、人々の暮らしぶりが押しなべて悪化し切った今となっては、再評価すべき点も多いように思います。

年配者でにぎわう豊島区の巣鴨地蔵通り商店街(画像:写真AC)



 たとえば、商店街とそれを構成する個人商店を上手に活用できれば、多少の収入格差があっても、深刻な格差問題には陥らないという点は特に重視すべきでしょう。

 もう一度上の1~3の内容を読み直していただきたいのですが、これらはそれぞれ現在の日本を覆う深刻な社会問題である 「貧困」や「孤独」を解消、ないしは緩和できるものです。これにより、多少なりともお財布と心に余裕が生まれるといった効果が期待できます。

 格差問題とは、ただ収入に差があるというだけではなく、その収入格差によって出来る事と出来ない事が生じたるといった、不平等が起こることを指します。

 繰り返し述べて来たように、商店街中心の生活をすると自然と生活費が抑えられ、その割に生活レベルは下がりません。よって、収入格差によって不平等や惨めさを感じる場面を減らせるのです。

 もう少し具体的な話をしてみましょう。オシャレな街にあるお高いお店で買い物や飲食をした場合の料金の内訳を考えてみると、土地代(家賃)や雑誌などに露出するための広告費などがガッツリ乗せられています。

 仮に雑誌やTVにガンガン紹介されている麻布の有名フレンチで10万円を使った場合と、下町の商店街にある、無名ながら地元民に人気のフレンチで3万円使った場合とでは、どちらがより良い物を口に出来ると思いますか。私ならば、同じ10万円を使うのであれば迷うことなく後者を3回選びます。

 このようなリアリスト的思考が商店街生活の肝であり、また商店街生活がコストパフォーマンスに優れている理由でもあるのです。

 願わくば、皆さんが商店街という古臭いシステムを再評価し、実利を取って豊かな生活をして下さる事を望みます。不況だからこそ、経済が落ち込んでいるからこそ、頼るべきは時代遅れの商店街なのです。

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