人気アイドル「ラストライブ会場」を巡る考察 キャンディーズは後楽園球場、嵐はどうなる?
人気アイドルグループの解散ライブは、いつも都内の大会場で行われているようなイメージがあります。しかし実のところ、そうでもないようです。ライターの橘真一さんが解説します。アイドルのラストコンサートはどんな会場で? 通常、トップアイドルの引退や人気グループの解散・活動休止となれば、最後に大会場でコンサートを行うのが定石です。 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年いっぱいで活動休止予定である嵐は、ラストコンサートの予定が明確になっていません。 春に予定され延期になった『アラフェス 2020 at 国立競技場』がもし秋以降に開催されれば、それが嵐にとって事実上のラストコンサートになる可能性もあります。 フルに観客を入れての開催は難しいにしても、新しい国立競技場(新宿区霞ヶ丘町)は嵐の最後の舞台にふさわしい大会場でしょう。 さて、ここでは嵐に限らず、すべてのコンサートが通常の形式で行われるような社会に戻ることを祈りつつ、過去のアイドルのラストコンサートがどんな会場で行われたかについて検証します(グループアイドルの卒業公演を除く)。 70年代二大アイドルの後楽園球場公演 実は、全面改築される前の旧国立競技場において、アイドルのラストコンサートの開催歴はゼロです。 そもそも、コンサート開催が認められたのは1985(昭和60)年から。 その後も年間の開催回数に制限があったことに加え、解散、引退の付加価値があっても6万人以上収容の国立競技場を満員にするのは容易ではなかったからでしょう。 国立競技場解禁まで、首都圏最大のコンサート会場は後楽園球場(文京区後楽)でした。 在りし日の後楽園球場でさよなら公演を行うキャンディーズ。1978年4月4日撮影(画像:時事) ここでは1970年代の二大女性アイドルグループであるキャンディーズ(1978年)とピンク・レディー(1981年)がラストコンサートを開いています。 ただし、それは明暗が分かれ、女性アイドル初のスタジアム公演となったキャンディーズは絶頂期の解散だったため、会場は超満員だったものの、ピンク・レディーは人気のピークが過ぎており、空席が目立つ結果となりました。 伝説の山口百恵が立ったのは……伝説の山口百恵が立ったのは…… 女性アイドル初の日本武道館(千代田区北の丸公園)公演を最後の花道としたのが、山口百恵です(1980年)。 日本武道館(画像:写真AC) 以後、武道館でラストコンサートを行うアイドルはなかなか現れず、21世紀になってから、 ・ZONE(2005年) ・Berryz工房(2015年) ・アイドリング!!!(2015年) といった例が見受けられるようになります。 一方、代々木第一体育館(渋谷区神南)では、おニャン子クラブ(1987年)とシブがき隊(1988年)がファンに別れを告げました。 日本武道館と代々木第一体育館は、1964(昭和39)年東京五輪の会場であり、昭和の時代は貴重な1万人規模のハコでした。 1989年誕生の会場は過激アイドルが実施 収容人員最大1万7000人と武道館や代々木第一体育館よりも大きな横浜アリーナ(横浜市)は1989(平成元)年に誕生。 代々木第一体育館(画像:写真AC) ここでは、過激な話題作りを展開していた第一期のBiS(2014年)、ハロー!プロジェクトの3人組、Buono!(2017年)がラストコンサートを開いています。 横浜アリーナをより大きいのが、2000(平成12)年開業のさいたまスーパーアリーナ(さいたま市。最大で約3万7000人を収容)です。 Buono!と同じハロプロの℃-uteは、この会場を満員にして解散しています(2017年)。 東京ドームは安室奈美恵とあのふたり組 アイドルの枠を超えたカリスマ的な存在となった安室奈美恵は、2018年6月に5万人以上を収容できる東京ドーム(文京区後楽。1988年開業)でラストコンサートを開催。 東京ドーム(画像:写真AC) また、単独ライブではありませんが、タッキー&翼は、2018年の大みそかから2019年元日にかけて東京ドームで行われた、「ジャニーズカウントダウン」が最後のステージとなりました。 光GENJIとSPEEDの意外すぎる会場光GENJIとSPEEDの意外すぎる会場 会場が首都圏以外だったのが、国民的人気を誇ったSPEED(1999年)と光GENJI(1995年。当時は光GENJI SUPER 5)です。 SPEEDはドームツアーを行い、その最終公演会場は福岡ドーム(福岡市。現・PayPayドーム)でした。 PayPayドーム(画像:写真AC) 一方、1989年にジャニーズ事務所で初の東京ドーム公演を開催した光GENJIのゴールの地は、名古屋レインボーホール(名古屋市。現・日本ガイシホール)でした。 大会場でラストコンサートを行ったアイドルは、上記の例がほとんどです。歴代アイドルの数の割に少ない印象があるかもしれません。 ラストコンサートを行ったアイドルが少ないワケ その理由としては、アイドルはグループが主流になり、また、それぞれ活動期間が長期化していることが考えられます。 大会場を満員にできるグループは、メンバーの卒業はあっても、めったに引退・解散・活動休止をしないのです。 また、ビッグネームながら、明確なラストコンサートを行わずにフェードアウトしたアイドルがいることも一因です。 SMAPを筆頭に、Winkや松浦亜弥もしかりでした。 そうした意味で、グループから卒業するパターン以外に「大会場で大勢のファンに惜しまれつつ去る」という、理想的なゴールを迎えられるアイドルは、全体のごくごく一部にすぎないということになります。 2019年12月完成の有明アリーナ(江東区有明)は1万2000人程度のキャパシティーだとか。 有明アリーナ(画像:(C)Google) ここでラストコンサートを行うアイドルは、なかなか現れないかもしれません。
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