南町田のアウトレット施設「グランベリーパーク」が敢えて生鮮食品に力を入れるワケ
2019年11月13日(水)、田園都市線・南町田グランベリーパーク駅前に大型商業施設「グランベリーパーク」が開業します。国内外からの来場者を呼び込むための趣向が凝らされている一方で、かつてのニュータウンだった「南町田」を再生したいという思いも込められた施設になっているそうです。駅直結・全22ヘクタール、巨大パークの出現 2019年11月13日(水)、東急田園都市線・南町田グランベリーパーク駅前に新たな商業施設「グランベリーパーク」(町田市鶴間)がオープンします。アパレル系アウトレットショップが中心のテナント構成は従来型と変わりませんが、食料品フロアで鮮魚や精肉などの「生鮮品」も扱うという点は、やや異色な店構え。そこには、南町田という「かつてのニュータウンを再生したい」との思いが込められているようです。いったい、どういうことでしょうか。 開業を11月13日に控えた「グランベリーパーク」。映画館や体験型アウトドア施設なども入居している(2019年11月7日、遠藤綾乃撮影) グランベリーパークは、駅改札から直結した敷地面積約8万3000平方メートルを誇る巨大ショッピング施設です。かつての屋外型モール「グランベリーモール」(00年4月~17年2月の期限付き営業)跡を再整備し、今回新たなオープンを迎えます。町田市と東急が「南町田拠点創出まちづくりプロジェクト」(14年10月締結)のもと官民協働で計画を進めてきました。 旧「グランベリーモール」から「グランベリーパーク」と名称を変えたのは、商業施設に隣接する同市所有の「鶴間公園」との一体化整備を計画の核に据えたから。商業エリアと公園を隔てていた自動車道路を廃道にし、その跡地に遊歩道を整備して両方の敷地をひとつに結びました。こうすることで駅・商業施設・公園が一帯となった「まち全体がひとつのパーク(公園)」というコンセプトに基づく約22ヘクタールの複合エリアが誕生しました。 パーク内のテナント数は、旧モール時代の2倍超となる241店舗に。とりわけ、以前はわずか5店舗しかなかった飲食店を、利用者からの要望に応えて50店舗以上(物販含む)に拡充した点は、今回の注目のひとつだといいます。 イートインだけでなくテイクアウト商品に力を入れたのも、自然広がる鶴間公園内で思い思いに食事を楽しんでほしいという本施設ならではの趣向。飲食物に限らずアウトドアなど体験型サービスが多数用意されている点に、「ここでしかできない体験、経験」をアピールすることで同種の施設やネット通販との差別化を図りたい狙いがあるように見えました。 肝心のファッション系テナントも、カジュアル系からラグジュアリー系まで手堅くそろいます。郊外型施設の客層のボリュームゾーンとなる親子連れを意識した商品やサービスが充実している点も、アピールポイントのひとつとのことでした。 国内外からの来場者をいかにして集めるか国内外からの来場者をいかにして集めるか グランベリーパーク総支配人を務める東急モールズデベロップメント(渋谷区道玄坂)の青木太郎さんによると、17年2月に閉業した旧モールは後年、類似施設の相次ぐ開業を受け「商圏が狭まっていた」といいます。 00年4月の開業時にはなかった「ららぽーと横浜」(横浜市都筑区)や「ららぽーと海老名」(海老名市扇町)、「三井アウトレットパーク多摩南大沢」(八王子市南大沢)などの登場によって分散した客足を、いかにして再び新パークへ呼び戻すのか――。前述した「リアル体験」や鶴舞公園の自然に加えて本施設の大きな目玉のひとつとなるのが、世界的な人気を誇る「スヌーピーミュージアム」です。 12月に南町田グランベリーパーク内にオープンする「スヌーピーミュージアム」(2019年11月7日、遠藤綾乃撮影) 16年4月、六本木に期間限定でオープンしたスヌーピーミュージアムは、米国カリフォルニア州にある本家美術館の、世界唯一の分館。六本木では、2年半の開館中に140万人近い来場者を集めました。国内のみならず海外の熱烈なファンも呼び込むコンテンツになると、その求心力に期待を寄せています。 さらにもうひとつ、本施設のアドバンテージは立地の良さだそうです。 南町田は、渋谷から田園都市線で33分というまずまずの距離感。加えて駅直結という特長も、駅から離れたアウトレット施設と比べて優位となり得ます。また国道16号、246号がパーク至近を走っていることから、電車利用者・車利用者どちらにとってもアクセスしやすい場所にあると言えそうです。 青木さんは、鶴間公園などを含むパーク全体の目標来場客数について、旧モール時代の2倍に当たる「年間1400万人」と掲げました。 アウトレットの食料品フロアで鮮魚を売る理由アウトレットの食料品フロアで鮮魚を売る理由 新パークの目玉のひとつである、飲食物の充実。どんな商品が並んでいるのだろうと、施設中央に位置する飲食物販エリア「ギャザリングマーケット」を巡ってみると、スイーツやパン、お弁当と並んで鮮魚や果物が売られているのが目に留まりました。 アウトレットで生鮮食品……? 意外な組み合わせに思えましたが、そこにはまちの将来を見据えた深い理由があるのだといいます。 大型フードコートと一緒に、鮮魚や精肉、野菜など生鮮3品を売るコーナーも設けられている(2019年11月7日、遠藤綾乃撮影) 町田市都市政策課担当課長の辻野真貴子さんは言います。 「グランベリーパークは、単に外から客を呼び込むための賑わい施設ではありません。地元に住まう住民たちにとっての、日常的に食料品を買う『駅前商店街』でもあってほしいのです。だから生鮮食品を取り扱うようお願いしました。まちの利便性や魅力を高めることで、居住地としての南町田を永続的なものにしたいと私たちは考えています」 辻野さんによると、南町田は70年代に土地区画整理事業で整備された、いわゆるニュータウン。当時は子育て真っ最中だった家族が数多く移り住んできたといいます。そして、その後子どもが独立していった今も、老夫婦にはやや持て余す広さになった自宅に変わらず住み続けているケースが多いといいます。 「南町田地区の住民の平均年齢は、経年とともに上昇し続けています。これは、このまちに魅力を感じているからここに住み続けたいのだという、まちに対する住民の愛着の表れだと受け取っています。ただ、ニュータウンの高齢化は全国的な課題。まちを永続させるためには手を打つ必要があると考えています」(辻野さん) 町田市が描く青写真は、駅に隣接する住居用地区にマンションなどの集合住宅を整備し、旧ニュータウンエリアの一戸建てに住む高齢夫婦に対して、現在の生活に合った広さの住居としてマンションへの住み替えを提案すること。そうしてできた戸建てエリアの空き家には、若い世代の家族を迎え入れることによって住民年齢の新陳代謝を促すというものだそうです。 「南町田は、都心まで30分ほどとは思えない自然豊かでゆったりとした空気が流れるまち。魅力に感じる人は多いと思っています。今回のグランベリーパーク開業は、まちづくりという観点ではあくまで第1弾です。間を開けずに住居地区の整備も進めていきたいと考えています」(辻野さん) 国内外からの来場者を呼び込むと同時に、地に住む住民にとっての拠点ともなる南町田グランベリーパーク。さまざまな期待を集めて、13日にグランドオープンを迎えます。
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