「新宿アルタ」44年の歴史に幕。その誕生のキッカケは関東大震災だった!?
お昼のTV番組収録場所で有名な「新宿アルタ館」が、2025年2月末に閉館予定です。今回は都市商業研究所の若杉優貴さんが、その誕生のきっかけと歴史を振り返ります。新宿東口の顔「新宿アルタ」来年2月に閉館 東京都新宿区のJR新宿駅東口にあるファッションビル「新宿アルタ館」(新宿アルタ)が、2025年2月28日での営業終了を発表しました。
アルタは三越伊勢丹グループのファッションビルで、しかもその誕生のキッカケは約100年前の「関東大震災」にさかのぼります。今回は、新宿アルタの歴史について紐解いていきたいと思います。
新宿東口の顔だった「新宿アルタ」が閉店へ。 カラフルなネオンサインは新宿の夜を彩るシンボルの1つとなっていました。(写真:若杉優貴)かつては「鴨池」だった新宿アルタ周辺 新宿アルタがあった新宿駅東口は、江戸時代から明治初期にかけて「南豊島郡西大久保村」と呼ばれた場所。当時は田畑が多く、さらに明治に入ると現在みずほ銀行新宿支店や新宿アルタなどがある場所に旧・肥前大村邸(大村純忠の子孫)の邸宅と弁財天がある「鴨池」と呼ばれる大きな池が設けられました。この鴨池は関東大震災前までには埋め立てられ、さらに弁財天は移設されて現在の「歌舞伎町弁財天」の前身となりました。
「新宿アルタ」誕生の契機となったのは、1923(大正12)年9月に起きた関東大震災でした。
三越は震災復興のため同年10月に新宿に小型店を開設。震災後さらに大きなにぎわいを見せるようになった新宿に商機を見出した三越は、1925年10月に「鴨池」の跡、現在「新宿アルタ」がある場所に「三越新宿店」(三越新宿分店)を開設します。鴨池跡の周辺は新宿における震災復興の中心となり大いに繁栄。三越はこの新宿店を百貨店「ほてい屋」(1935年に伊勢丹が買収)の前に移転させて規模の拡大を図りました。そして、旧・三越新宿分店は三越グループの食品店「二幸新宿本店」としてリニューアルされ、1970年代まで営業を行うこととなります。(なお、この時に建設された三越新宿ビルは現在「ビックカメラ新宿東口店」(旧ビックロ)として利用されています。)
「二幸」再開発で「アルタ」に転換――今は亡き「スタジオアルタ」で知名度拡大 1970年代になると、築50年を経た二幸新宿本店ビルは再開発が計画されるようになります。そして、建て替えに合わせた業態転換によって誕生したのが1980年4月に開業したファッションビル「アルタ」の1号店「新宿アルタ館」でした。
この二幸ビル再開発にはフジテレビジョンと東京12チャンネル(現在のテレビ東京)も出資しており、館内にはこの2社がおもに利用する多目的放送スタジオ「スタジオアルタ」を開設。スタジオアルタは平成を代表する生放送番組、『笑っていいとも!』や『レディス4』などに使われたため、新宿アルタ自体が全国的に知名度を高める結果となりました。
このスタジオアルタも老朽化などを理由に2016年3月に一旦閉館。現在、スタジオアルタは乃木坂46合同会社などを傘下に持つエンターテインメント企業「KeyHolder(キーホルダー)」が運営する「KeyStudio(キースタジオ)」として運営されており、おもにアイドルグループのライブが行われています。
今後は未定――大型再開発もある? 新宿アルタの建物は地上8階、地下3階、店舗面積は4,245平方メートル。2000年に三井グループの大手不動産ディベロッパー「ダイビル」が取得していることから現在は新宿ダイビルのテナントとなっており、「INGNI(イング)」「LIZ LISA(リズリサ)」「チュチュアンナ」といった有名アパレル店をはじめ、手芸用品専門店「オカダヤ」の生地館、「HMV」のレコードショップ、「星乃珈琲店」「セブンイレブン」など多彩な店舗が出店しています。
現在も幅広い世代に向けたさまざまなテナントが出店する新宿アルタ。2021年にはダイソーの新業態雑貨店「スタンダードプロダクツ」2号店(当時は全国最大)が出店したことも話題となりました。(写真:若杉優貴) 新宿アルタの閉店後の活用方法については2024年3月時点で明らかになっていません。間もなく築50年を迎える新宿アルタ。新宿東口という一等地にあり、大手ディベロッパー「ダイビル」が所有しているがゆえ、今後の動向が注目されます。
なお、東京都内では新宿アルタのほかにも池袋サンシャインシティに「サンシャインシティ・アルタ」(池袋アルタ)が、原宿竹下通りに「原宿アルタ」が出店しています。原宿アルタも新宿アルタと同じく来年2025年2月末で営業を終了することが発表されています。新宿駅東口でおなじみだった「アルタ」のカラフルな看板は、今後池袋の街を彩り続けます。
実は原宿と池袋にもあるアルタ。池袋アルタは20周年を迎え、昨年2023年12月にリニューアルオープンした(写真:若杉優貴)