都内でよく見かける「すずらん通り」 なぜ名前が「すずらん」なのか?

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都内でよく見かける「すずらん通り」 なぜ名前が「すずらん」なのか?

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田中マリネ(フリーライター)

都内に点在する「すずらん通り」。そのルーツについて、フリーライターの田中マリネさんが解説します。

なんともかわいらしい響きの「すずらん通り」

 私が上京して最初に住んだ街は荻窪で、最初に勤めた職場は神保町でした。このふたつの町には共通点があります。それは、どちらの街にも「すずらん通り」という商店街があること。当時は、なんともかわいらしい響きだなと思っていました。

 荻窪に住み始めたばかりのころ、隣駅の南阿佐ヶ谷まで散歩したのですが、そこにもすずらん通りがありました。「東京はどの街もすずらん通りがあるのか?」と思いましたが、さまざまな街を巡るうちにそうではないことに気づきました。

千代田区神田神保町にある神田すずらん通り商店街(画像:田中マリネ)



 私はその後も、さまざまな街ですずらん通りに出会いました。銀座のすずらん通りは、ゲートにアルファベットで「SUZURANst」と書いてありました。「st」はストリートを意味しています。なんだかおしゃれです。

 谷根千(谷中・根津・千駄木エリア)を散歩しているときにも、とてもかわいいすずらん通りを見つけました。それまで見てきた多くのすずらん通りは大きな通りでしたが、ここは横丁のような通りになっています。

 よみせ通りと不忍通りをつなぐ短い通りの入り口には「千駄木3 すずらん通り」と書かれた小さなゲートがあります。ほかのすずらん通り同様、こちらも個性的なお店が軒を連ねています。

鈴蘭灯があるからすずらん通り?

 さまざまなすずらん通りを歩いてみてわかったのは、どのすずらん通りにも

「鈴蘭(すずらん)灯」

と呼ばれる、鈴蘭の花をかたどった装飾灯が取り付けてあるこということです。

 特に、南阿佐ヶ谷のすずらん通りの鈴蘭灯は鈴蘭の花にそっくりでした。

南阿佐ヶ谷・すずらん通りの鈴蘭灯(画像:(C)Google)



 さて、ここで以下の疑問が。

・鈴蘭灯があるからすずらん通りなのか?
・すずらん通りだから鈴蘭灯がつけられたのか?

 いったいどちらなのでしょうか?

 早速解決しようとインターネットで調べていたら、「東京すずらん通り連合会」というウェブサイトを見つけました。

 サイトには、すずらんという名前がつく商店街は都内に20ほどあると書かれており、その一覧が掲載されていました。もちろん、私の知らないすずらん通りも載っていました。

 その後、サイトを通じてすずらん通りに詳しい人を紹介してもらい、話を聞きに行ってきました。お相手は、東京すずらん通り連合会の理事・高野健次さんです。

質問をぶつけてみた

 まずは、一番気になっていた質問を。

ーー鈴蘭灯があるからすずらん通りなのでしょうか。 

「それは条件ではありません。設備のない商店街でも名前が同じならお仲間です」

ーー鈴蘭灯の有無ではなく、すずらん通りという名前が重要なのですね。

「そうです。すずらんという名前の響きがなんともかわいらしいでしょ」

ちなみに鈴蘭はフランスで、幸せを呼ぶ花と呼ばれているそうです。

ーー東京には20ものすずらん通りがあるようですが、そのなかで一番最初にすずらん通りを名乗ったのはどこですか。

「東京で最初にすずらん通りを名乗ったのは、神田すずらん通り商店街です。時代は大正の終わりごろ、関東大震災(1923年)の後にできたそうです。人気が出たので、その後、銀座などあちらこちらにすずらん通りができていったと言われています」

取材に応じてくれた神田すずらん通り商店街振興組合理事の高野健次さん(画像:田中マリネ)

 ちなみに、高野さんは神田すずらん通り商店街にある紅茶専門店・ティーハウスタカノ(千代田区神田神保町)のオーナーでもあります。

ーー全国初のすずらん通りはどこでしょうか。

「全国で初めて鈴蘭灯がともったのは1924(大正13)年10月14日夜、京都の寺町通りだといわれています」

 先端に150wの電球と8個の60wの電球を連ねた街灯が41基設置され、さながら光のトンネルのような光景だったそうです。しかし、この鈴蘭灯はまたたく間に全国に広がったものの、通りとしての名前はもう残っていないそうです。

戦時下の金属供出で消失した鈴蘭灯

ーー神田すずらん通りの鈴蘭灯はけっこう新しいですね。

「2010(平成22)年に鈴蘭灯をLED(発光ダイオード)化したのですが、この鈴蘭灯のデザインは1937(昭和12)年のものをモデルにしています」

とここで、高野さんが1枚の写真を見せてくました。なるほど、今の形に近いですね。

ーー昔の鈴蘭灯がそのまま残っているところはあるのでしょうか。

「鈴蘭灯は戦争中の金属供出でなくなったところも多く、残ってないでしょうね」

ーーところで、神田すずらん通りはいつ、どこから眺めるのがいいでしょうか。

「やっぱり、夜に入り口から眺めるのがいいのではないでしょうか。鈴蘭灯がともって連なって見えますから。私が一番好きなのは元旦の夜です。誰もいない風景は珍しいですからね」

と高野さん。なるほど、いつも人通りが絶えない神田すずらん通りも元旦には人がいなくなるのですね。

千代田区神田神保町にある神田すずらん通り商店街(画像:(C)Google)



 私は昼間の散歩ばかりしているので、夜のすずらん通りをよく知りませんでした。今回、改めて鈴蘭灯がついた夜の時間にカメラを向けてみました。なるほど、すずらん通りは夜がよく似合います。

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