パンプス嫌いの私が、興味本位で外反母趾用シューズを履いてみた結果
女性の靴を取り巻く状況が変わりつつある現在、パンプス嫌いな筆者が、あるブランドの新作展示会に足を運びました。いったいどのような靴があったのでしょうか。「外反母趾」とはそもそも何か 総務省が2019年7月30日(火)に発表した労働力調査によると、前月6月の女性就業者は3003万人と、調査を開始した1953(昭和28)年以来初めて3000万人を突破したことがわかりました。専業主婦世帯も年々減少しており、厚労省の調査では、共働き世帯の割合は2016年時点で専業主婦世帯の約2倍となっています。 雇用形態に関わらず、女性の社会進出が進むことは多様な生き方や働き方が広がったということ。しかし一方で、さまざまな問題が起こっています。たとえば、仕事で履くヒールやパンプスによっておこる外反母趾(がいはんぼし)は、働く女性の多くが持つ悩みのひとつとして有名です。 ヒールやパンプスなどによっておこる外反母趾のイメージ(画像:写真AC) 外反母趾とは、足の親指が変形することで付け根部分が飛び出し、人差し指側に曲がってしまう症状です。飛び出した部分に靴が当たるだけで痛みや炎症が生じ、酷くなると靴を履いていない状態でも痛みを感じるように。軽度であればギプス矯正で治りますが、重度であれば骨を切る手術によって治療することもあるのです。 体質のほか、ヒールやパンプスなど、幅が狭くつま先の尖った靴を履くことで生じる外反母趾。もともとは欧米人に多かった症例でしたが、近年は日本人にも増えていると言われています。実際に、 靴メーカーのムーンスター(福岡県久留米市)が全国の50代から70代までの女性2249人を対象にしたアンケートで、その症状に悩む女性は30%にのぼりました。 しかし、外反母趾の「予備軍」はもっと多いとされており、無自覚のまま放置することの危険性も指摘されています。これは、特に自分の足に合わない靴を履きがちな若年層によく見られるのだとか。 そのため日本靴医学会(千代田区一ツ橋)は、「親指の付け根が内側に出っ張っている」「親指の付け根が腫れて赤くなっている」など12項目のうち、2項目に当てはまったら足や靴専門の医師に相談するよう注意喚起しています。 近年続々登場する外反母趾を意識した女性用シューズ近年続々登場する外反母趾を意識した女性用シューズ こうした状況を受け、近年は多くのメーカーが外反母趾の足でも履きやすい女性用シューズを販売しています。 ワコールに(京都府京都市)よる、人間工学に基づく独自設計を採用したブランド「success walk(サクセスウォーク)」は、2015年から外反母趾にフィットした形のパンプス「success walk ashiraku」を発売。開発の背景には、「パンプスを履きたいけれど、外反母趾が辛いから履かない」という声があったそうです。 また、外反母趾相談室UNIFY(ユニファイ。新宿区北新宿)の赤津裕美院長がプロデュースした「メディカルエスコート」や、指を覆う部分の縫い目が親指の付け根に当たらず痛くなりにくい「YOSHITO」など、外反母趾に特化しつつおしゃれを意識したブランドもこの数年で数多く登場。都内の大手百貨店で取り扱われていることから、東京の女性たちのニーズがうかがえます。 そんな中、注目したいのが創業者自身による外反母趾の悩みから誕生した、fitfit(世田谷区用賀)のブランド「fitfit」。外反母趾医療で著名な国際医療福祉大学三田病院との共同開発で作られたインソール「フィットフォルム」を搭載したシューズや、スニーカーのような履き心地を徹底研究したパンプス「パンプニーカー」などを展開しています。 突然ですが、筆者はスニーカー派です。今までパンプスやヒールで何度も靴擦れをした経験があり、足のサイズが25.5cmもあるため、自分の足に合うパンプスやヒールを探すことが困難だからです。 また足の形が幅広で人差し指が長いため、キュっと締め付けられるような靴を履くと、親指と小指それぞれの付け根が痛み、長い人差し指が丸まって関節にタコができてしまうことも。とにかく、「パンプスやヒールを履く星」に生まれていないのが筆者の足なのです。 パンプス嫌いな筆者が履いてみたパンプス嫌いな筆者が履いてみた そんななか、某日「fitfit」の2019年秋冬新作シューズ展示会を取材。実際に「fitfit」のパンプスを履いてみました。 「ポインテッドヒールニーカー」(画像:アーバンライフメトロ編集部) パンプスなのにスニーカーのような履き心地を設計した「ポインテッドヒールニーカー」は、ヒールの高さが5.5cmもあるのに、早歩きをしてもグラグラせず安定感があります。そして何より、締め付けがまったくないのですごく楽。 確かにスニーカーを履いているときの、足全体がリラックスしている感じがしました。そしてなによりデザインが素敵で、一見すると機能性をうたったパンプスとは思えません。 長時間履いていても疲れにくそうな構造に 次は、三田病院と共同開発したインソール「フィットフォルム」。 「フィットフォルム」(画像:アーバンライフメトロ編集部) 足のアーチが自然と持ち上がる立体形状によって、親指に体重がかかりくい履き心地を実現しています。 履き慣れたスニーカーでもずっと歩いていると、足全体の前すべり気味が続き、指が痛くはならないけど疲れてくる感覚があります。しかしこのフィットフォルムだと、歩いていても指が前にいきにくい構造になので、長時間履いていても疲れにくそうだと感じました。 自分に合う靴を履くことが、生き方につながる? 外反母趾ではない筆者でさえ、快適さを覚えた「fitfit」の靴。「外反母趾の人に優しい」とうたった靴は、外反母趾じゃない人にももちろん優しいということを肌で、いや足で感じました。 fitfitマーケティング部の菅野莉緒さんによると、「若い女性ほどおしゃれな靴は我慢して履く意識があり、気付いた時には足の変形や痛みに悩む人が少なくありません」と言います。 また、「自分の足に合わない靴は姿勢や歩き方、考え方も変えてしまいます。そして自分の足に合う靴がいかに感動と自信、ストレスのない毎日を与えてくれるかが浸透されればいいなと思います」と念を押していました。 「fitfit」2019年秋冬新作シューズ展示会の様子(画像:アーバンライフメトロ編集部) 過去にヒールを履いて靴擦れを起こして、強い痛みを感じネガティブな気持ちになったことを思い出しました。自分の足に合わない靴は本当に考え方も変えるのでしょう。 女性たちが文字通り「地に足つける」生き方をする上で大切なことは、デザイン性だけを重視した靴を我慢して履くことではなく、自分に合った履きやすい靴を履くことなのだと感じました。 反パンプス運動「#KuToo」など女性の足や靴を取り巻く状況が変わりつつある現在、外反母趾をはじめとする女性の靴の悩みに寄り添ったパンプスやヒールが増え、靴市場がさらなる盛り上がりを見せていくことが期待されています。
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