5分でわかる「保活のリアル」 深刻な待機児童問題、あなたはいつ気づく?
待機児童問題がなかなか解消されません。保育園に入るための活動、いわゆる「保活」の厳しい実態とはどのようなものでしょうか。保育園で勤務経験があり、自身も子育て中の筆者が解説します。東京の保育園利用者は増えている 2018年7月に東京都が発表した資料によると、2018年4月1日時点で、都内における保育サービス利用児童数は、前年から1万6059人増の29万3767人でした。保育園利用者が増えるなか、待機児童(子育て中の保護者が保育所または学童保育施設に入所申請をしているにもかかわらず入所できず、入所待ちしている児童のこと)の数は、5414人。待機児童数が多い区市町村は、世田谷区が486人、江戸川区が440人、目黒区が330人となっています。 昨今、待機児童の解消が急務になっている(画像:写真AC) 待機児童の解消が急務になっている昨今。働くためには子どもを保育園に入れなければならないわけですが、その保育園に入園するために行う諸々の活動「保活」は、妊娠中からすでに始まっているともいわれています。 「保活は大変だといわれているけれども、具体的な実態がよくわからない」という人も少なくないはず。そこで、東京における保活について解説します。 点数で測られる「保育の必要性」とは? 保育園はそもそも、子どもを家庭で養育することが難しい場合に入れる保育施設です。保活は会社に勤務している母親だけに該当するものだと思われがちですが、本来は働いていなくても、介護や求職中といった理由で保育園に入園させることができます。 そして現在は、働く女性の増加に伴い、保育園に入園できる子どもの数よりも保護者が保育園に預けたい子どもの数の方が上回っています。これが待機児童問題です。そのため、待機児童の多い都心部において、保育の必要性が高くなければ保育園に入園することが難しくなっています。 この保育の必要性の高さを決めるのが、選考指針となる「点数」です。点数は各自治体によって基準は細かく異なりますが、たいていの場合、保護者の状況に応じた「基礎(基準)指数」と個々の状況に応じた「付加(調整)指数」があります。 20~50点などの大きな点数がもらえる基礎項目では主に、月の労働時間や自宅外なのか自宅内なのか、障害や疾病の重さ、どのくらい付き添いが必要な介護状況なのか、といったことが問われます。多くの自治体で、自宅外で週40時間以上、もしくは月160時間以上労働しているようなフルタイム勤務だと最も高い点数になります。 0.1点の差で入園できるかできないかが決まってしまう0.1点の差で入園できるかできないかが決まってしまう 一方、付加項目では0.1~10点など多少の加点がなされます。父母どちらかが単身赴任中であることや、兄弟がすでに保育施設を利用していること、離別や死別によってひとり親世帯であること、申し込む子どもをすでにベビーシッターや保育室などの認可外保育施設に預けていることなど、さまざまな基準があります。 東京の“保活激戦区”といわれるような人口の多い自治体では、父母ともにフルタイム勤務で基礎項目が満点だとしても、園の選考に落ちることが珍しくありません。父母ともにフルタイム勤務なのは当たり前なこととして、付加項目でどのくらい0.1点以上を取り、他の世帯と差をつけていくか勝負になってくるのです。 そして休職中や出産前後、軽度の障害など、基礎項目で低い点数しかもらえない場合には非常に高い確率で保育園に落ちてしまいます。求職中のお母さんが、「働くために子どもを保育園に預けたいのに、子連れでは面接にも行けないし、行けたとしてもそもそも預けていない状態では採用されないから結局働けない」という本末転倒な状態になってしまうのはこのためです。 認可外保育園は保育料が10万円を超えることも これまでご紹介したのは、すべて認可保育園に入園するための保活です。認可保育園とは国が定める基準を満たした保育園のことで、月の保育料は子どもの年齢や各世帯の収入に応じた金額になります。各自治体によっても異なりますが、目安としては生活保護世帯で0円、最も収入の高い階層の世帯で7~8万ほど。 一方、各施設が定めた一律の保育料を支払う認可外保育園であれば、ここまで大変な思いをせずに預けられる場合もあります。 しかし、東京の認可外保育園に週5日預けようと思うと、月の保育料が10万円~15万円というところも珍しくありません。認可外保育施設利用料の助成制度で多少の負担は減る可能性があるものの、収入の半分以上が保育料に消えていってしまう可能性も。こうした理由から、多くの保護者がなんとか頑張って認可保育園に入園させようと躍起になるのが、現代の「保活のリアル」なのです。 保活はなによりも、情報収集と0.1点でも加点を目指すことに尽きます。また、自治体によっては「何点以上であれば入園の可能性が高まる」といった情報を開示しているところも。これから保活を考えている人は、まずは自治体に問い合わせたり情報を集めたりすることから始めてみてください。
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