東京都の独自対策「ベビーシッター利用支援事業」とは何か? 新型コロナの影響で拡大の可能性も
ネット上でさまざまな話題を呼んだ「東京都ベビーシッター利用支援事業」の現状について、シッターアプリ大手のキッズラインにアーバンライフメトロ編集部が取材しました。在宅で育児と仕事の両立は困難 新型コロナウイルス感染拡大の影響で小中高校の臨時休校が注目される一方、保護者に登園自粛を要請しながらも、原則、開園状態が続いている保育園。 厚生労働省は2020年1月末から、保育所等における新型コロナウイルスの対応策について各自治体に周知しています。また4月17日(金)には、子どもや職員が罹患(りかん)した場合や、医療従事者などの子どもに対する保育所等の対応について告示しています。 ベビーシッターのイメージ(画像:写真AC) 登園を自粛している多くの家庭では、保育をしながら在宅勤務を行う親も少なくありません。しかし、未就学児が家にいるなかで仕事を行うのは非常に困難。そこで出てくるのが、ベビーシッターの利用という選択肢です。 都独自「ベビーシッター利用支援事業」とは 東京都では2018年度から、都独自の待機児童対策として「ベビーシッター利用支援事業」をスタートさせています。これは0~2歳児の待機児童の保護者や育児休業明けの保護者を対象に、格安の負担額で東京都の認定を受けた認可外のベビーシッター事業者を利用できるというもの。 この事業はこれまで、ベビーシッターを1時間250円の負担額で利用することができました。しかし2020年4月1日(水)からは、1時間150円へと引き下げられています。ベビーシッター利用額はだいたい1時間2000円~3000円の料金がかかるため、この格安の負担額は保育園に入園できなかった保護者にとって、心強いものです。 ベビーシッターのイメージ(画像:写真AC) この事業はベビーシッター利用料と利用者の負担額との差額を、東京都および区市町村が公費で負担する仕組み。そのため、公費で負担した助成額は利用者の「雑所得」という扱いになり、支払う所得税や住民税、社会保険料などに影響を及ぼします。 そのためベビーシッターを利用して働けても、翌年の確定申告によって所得税を支払わなくてはいけなくなる可能性も出てくるのです。 助成分が「雑所得」に 差額が雑所得となることについて、東京都は事業開始当初から資料等に明記しており、自治体でも利用者に説明を行ってきました。また2020年度4月以降のページには、税額の目安やモデルケースを掲載し、より利用者が安心して制度を利用できるよう取り組んでいます。 しかし2020年2月にこの内容がネット上で取り沙汰されると、「わかりにくい」「多額の税金を払わされる」「差額を非課税にすべき」とさまざまな意見が集まりました。また東京都だけでなく、事業者に詳しい情報発信を求める声も少なくありません。 東京都ベビーシッター利用支援事業の事業者として認定されているキッズライン(港区六本木)も、自社のウェブサイトで事業概要を説明したり、利用検討の保護者を対象にオンライン説明会を開催したり、情報提供を行っています。 保育園に入園できなかった人が利用保育園に入園できなかった人が利用 キッズラインに今回、ベビーシッター利用支援事業を取り巻く疑問や現状について話を聞きました。 ――課税についての概要を理解せず、ただ「ベビーシッターを1時間150円で利用できる」と勘違いする利用者はいないのでしょうか。また「課税対象になる」と知って、利用者からはどのような反応がありますか。 弊社は本事業の利用を希望する方へ必ず説明を行った上で、雑所得になることへの同意を得ています。ただ、雑所得に関する利用者さまからのご意見があることは認識しておりますし、弊社としても非課税になることを強く望んでおり、東京都にも利用者の声が適切に届くように努力しています。 確定申告のイメージ(画像:写真AC)――「東京都ベビーシッター利用支援事業」を使ってキッズラインを利用されている方は、どのような方がいるのでしょうか。 待機児童になってしまい、お困りの親御さんがご利用してくださっています。保育園のように、平日5日利用される共働き家庭や会社にフルタイムでお勤めの方、またフリーランスの方、会社経営をされていて待機児童となり、週2~3回利用される方も多くいらっしゃいます。お子さまの年齢としては0~1歳が多いです。 ――キッズラインでは「東京都ベビーシッター利用支援事業」について誤解が生じないよう、3月にオンライン説明会を5回実施しました。参加者からはどのような質問が多く、また説明会終了後にはどのような反応がありましたか。 「どういった過ごし方になるのか」「どんな用意をしたらいいのか」といった、ご利用に関する質問が多いです。また雑所得に関するご質問も多いので、個々のケースに鑑みてお近くの税務署へのご相談をご案内しています。また「この事業を利用した後には保育園に入れているのか」というご質問もいただきます。すでに2020年の3月には、多くの利用者さまから「この春から保育園が無事に決まった」というご連絡をいただいたので、そういった現状をお伝えしています。 東京における利用メリットは東京における利用メリットは――まだまだベビーシッターにハードルがある人も多いと思いますが、東京におけるベビーシッター利用のメリットがあるとしたら、どのような点でしょうか。 東京都のベビーシッター事業の担当ベビーシッターは保育士などの有資格者が中心で、かつ弊社の研修以外に東京都の研修も受けています。保育士さんが自宅で個別保育をしてくれることや、通園がないので移動のリスクも少ないメリットがあります。また集団保育ではないので、新型コロナ感染やインフルエンザなどの病気の感染リスクも最小限に抑えられるメリットもあります。 マスクをした子どものイメージ(画像:写真AC)――今後、この事業の概要をさらに周知させていくためにキッズラインではどのような施策をお考えでしょうか。 現在はオンライン説明会の開催を定期的に行っていますが、そのほかにもお時間が合わない方を対象に動画での説明も今後用意する予定です。自宅から出られない方も多くいらっしゃるので、みなさまのライフスタイルに合わせて参加しやすい形式を用意していきたいと思っています。 また、新型コロナウイルスの広がりに伴って、保育園の登園が自粛されているなどでお困りの親御さまが増えています。東京都は今回休校休園で、対象者を広げるという発表もありましたので、弊社としても、ネットで予約のやりとりができるなどの強みを生かし、スピーディーに安心してお任せいただけるよう、引き続き全力で対応していきます。 ※ ※ ※ 助成分が利用者の雑所得となり、その分が課税されることが判明して大きな話題を呼んだ「東京都ベビーシッター利用支援事業」。しかし掘り下げてみると、東京都や各ベビーシッター事業者は待機児童解消のために、概要説明や個別の状況に応じた説明に応じていることがわかります。 利用者側としては非課税になればありがたいですが、実際の利用者はこの事業で預け先を確保して仕事ができていることからも、事業の存在意義はあると言えます。 なお「東京都ベビーシッター利用支援事業」は育休明けや待機児童となった保護者を対象としていますが、今回のコロナの影響で保育園に預けられていない保護者も多くいることから、東京都は対象者を広げる調整も行っているとのこと。 「東京都ベビーシッター利用支援事業」の枠組みとなるのか、別の新たな事業となるのか、など詳細については現在調整中のため、詳しくは各自治体の保育課まで問い合わせることをお勧めします。
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