都心で話題を集める「進化型書店」、コレド室町テラス「誠品生活」を中心にその魅力に迫る
9月27日(金)に誕生した「コレド室町テラス」。その目玉テナント「誠品生活」と、都内の「進化型書店」について、都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。「日本初進出」の台湾書店が登場 2019年9月27日(金)に誕生した複合商業施設「コレド室町テラス」(中央区日本橋室町)。その目玉テナントとして注目されているのが、台湾の大手書店「誠品書店」がプロデュースする個性的な複合型店舗「誠品生活」です。 建設中のコレド室町テラス。2018年撮影(画像:都市商業研究所) これまでの「個性的な書店」といえば多くは個人が経営する小規模なものでしたが、近年は大手書店が経営に関わる都心エリアの大型店で「唯一無二」というべき個性的な店舗が増えています。今回はこの誠品書店をはじめとして、近年都心に誕生した3つの複合書店を紹介します。 三井不動産の熱いラブコールにより実現 誠品書店・誠品生活が日本初出店する「コレド室町テラス」は三井不動産が中央区日本橋室町に建設中の超高層複合ビルで、正式名称は「日本橋室町タワー」。建物は地上26階、地下3階建てで、そのうち、地下1階、地上2階は商業施設に、高層階はオフィスです。また、地下部分でJR新日本橋駅、東京メトロ三越前駅と直結されています。 コレド室町テラスの館内構成。誠品書店は2階ワンフロアを占める(画像:三井不動産) 誠品書店・誠品生活が出店するのはこのコレド室町テラスの2階部分。今回の出店は三井不動産の熱いラブコールにより実現したものだといい、誠品生活が61%、三井不動産が39%を出資する「誠品生活MF」と、同社よりライセンス供与を受けた大手書店「有隣堂」(横浜市中区)により運営されています。 なお、コレド室町テラスの1階には和雑貨や土産品を販売する「日本百貨店」、富山県に本社を置く錫工芸工房「能作」の直営ショップなどが、地階には主に飲食店が出店します。 さて、それでは「誠品書店」とは一体どのような書店なのでしょうか。 今や「観光地」にもなった誠品書店今や「観光地」にもなった誠品書店 誠品書店は1989年に台北市大安区で創業。1995年には大安区敦南に旗艦店となる大型書店を開設し、1999年には一部店舗において24時間を開始しました。 誠品書店の本店、敦南店(台北市大安区)。大型書店でありながら24時間営業で、さまざまなワークショップも実施されている(画像:都市商業研究所) 現在は台湾を始め香港、中国に合わせて50店舗近くを展開。美術書、歴史書などといった専門書に強い書店として知られ、日本統治時代の歴史的建造物をリノベーションして出店している店舗も見られます。 全店で毎年述べ2億人を動員 とくに、同社が特徴としているのが大型複合書店「誠品生活」の存在です。誠品生活業態の店舗ではこだわりの文具やMIT雑貨(Made in Taiwan)を販売する個性的なショップが数多く出店するほか、ワークショップや体験型イベントも実施。全店で毎年述べ2億人を動員するほどの高い人気を誇っており、2004年には雑誌「TIME」アジア版により「アジアで最も優れた書店」にも選ばれるなど、今や台湾を代表する「観光地」のひとつにもなっています。 台湾の誠品書店。書籍売場に並んで誠品がセレクトした個性的な店舗が数多く出店(画像:都市商業研究所) 日本橋に出店する店舗はこの「誠品生活」業態の店舗で、クッキングスタジオやガラス工房も併設され、さまざまなワークショップが開催されることになります。 さらに、誠品がセレクトした個性的なショップが並ぶ物販ゾーン「誠品生活 expo」には日本人観光客にも人気の台湾スイーツ店「郭元益」、台湾茶を使った香水ショップ「P. Seven 茶香水」、漢方コスメショップ「DAYLILY」などが、グルメゾーン「誠品生活市集」には台湾料理店「富錦樹台菜香檳」、台湾茶店「王德傳」などが日本初出店する予定となっており、「台湾に行かずとも気軽に台湾を体感できるスポット」としても大きな人気を呼ぶことになりそうです。 都心に続々登場する「個性派大型書店」都心に続々登場する「個性派大型書店」 東京都心には他にも「個性的な大型書店」が誕生しています。 そのうち、とくに個性が強い店として賛否両論を巻き起こしているのが、2018年3月に開業した「東京ミッドタウン日比谷」3階において「有隣堂」が運営する路地をイメージした商業ゾーン「ヒビヤセントラルマーケット」(千代田区有楽町)です。 ノスタルジックな雰囲気の「ヒビヤセントラルマーケット」看板。「本屋と思って来たら確かに本屋だったけど本屋じゃない!」と賛否両論を巻き起こしているとか(画像:都市商業研究所) マーケット内には眼鏡店、セレクトショップ、理容院、居酒屋などが並んでおり、一見「書店」には見えませんが、その中央部には「Library」と称した本の売場が広がり、有隣堂や著名人による選書による本が所狭しと並んでいます。そして、その先に目に入るのは「駅のキオスク」を模した売店。ここにはキオスクで売られるような一般の雑誌などが販売されているほか、「AND COFFEE ROASTEERS」のコーヒーを味わうことができるカフェスタンドも併設されています。 ヒビヤセントラルマーケットをプロデュースしたのは、クリエイティブディレクターの南貴之さんで、マーケット内にあるセレクトショップ「Graphpaper(グラフペーパー」」のオーナーも務めています。こちらで扱われる商品はアパレル中心であるものの、なかには数百万円する商品も……。果たしてそれはどういったものなのか、気になる方は実際に足を運んで確認してみましょう。 五感が刺激される書店「蔦屋書店 銀座」 また、東京ミッドタウン日比谷から歩いて10分ほどの「GINZA SIX」6階にある「蔦屋書店 銀座」も通常の蔦屋書店とは大きく異なっており、そのテーマは「アートのある暮らし」です。 アートな書店「蔦屋書店・銀座」。「蔦屋書店」業態は「誠品書店」をモデルに生み出されたとされる(画像:都市商業研究所) 美術書、ファッション、建築などアートに関する本を中心とした商品構成が特徴で、コンテンポラリーアート(現代芸術)を中心とした企画展などが開催されるギャラリー「THE CLUB」も併設され、五感が刺激される書店として人気を集めています。 進化を続ける複合書店。読書の秋、自分ピッタリの個性的な大型書店を探しに出かけてみてはどうでしょうか。 なお、紹介した3店舗のなかには、いわゆる「一般書籍」の取り扱い数が限られている書店もあるのでご注意を。
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