コロナ禍で増加予想 「大学生の退学・休学」に私たちが無関心ではいけないワケ
コロナウイルスによる深刻な影響 2020年も残すところ12月のみとなりました。この時期になると「新語・流行語大賞」や「今年の漢字」が発表され、メディアで大きく報道されます。 投資運用業を手掛けるスパークス・アセット・マネジメント(港区港南)が全国の20代から60代以上までの男女1000人を対象に行った「夫婦のマネージ譲渡夫婦円満投資に関する調査2020」では、2020年の家計を表す漢字に「苦」が1位に選ばれました。 この背景には、新型コロナウイルスの感染拡大により収入が減少するなど、苦しい家計状態などがあると考えられます。また、別のアンケート調査では子どもを持つ世帯の台所事業の厳しさが明らかになっています。 エデンレッドジャパン(千代田区神田錦町)が全国の高校生以下の子どもを持つ30代から50代までの男女600人を対象に行った「コロナ共存時代における家計と生活支援に関する調査」では、7割の家庭が「金銭的余裕がない」と答えました。 都内にある私大最難関・早稲田大学(画像:写真AC) このようにコロナ禍は社会全体に暗い影を落とし、家計悪化によって子どもの進学に深刻な影響を与えています。このままでは中退や休学に追い込まれる学生が急増することも予想されており、問題は広範囲に及んでいます。 今までの景気悪化が全く参考にならない事態今までの景気悪化が全く参考にならない事態 新型コロナウイルスが引き起こした社会的混乱は、バブル崩壊後の就職氷河期やリーマンショックによる景気後退以上のインパクトがあります。そのため過去の前例が参考にできず、進学を控える子どもを持つ家庭は現状を楽観視できません。 また、大学在学中の学生にとっても実家の家計が悪化して学費捻出が思うようにならず、休学や退学といった決断を選ぶ可能性も出ています。2020年8月に立命館大学(京都市)の大学新聞が学部生を対象に行ったアンケートでは、「4人に1人」が休学を視野に入れていることがわかり、各方面に衝撃を与えました。 一般的には通学生よりも下宿生の方が金銭面での負担が大きいと思われがちですが、休学を考えている学生を居住環境別で見ると「実家から通っている学生」の23%、「下宿生」が27%と、両者の差はわずか4%にとどまっていました。 学生が住むアパートのイメージ(画像:写真AC) これは一大学のデータですが、「通学生は経済的負担が少なくて済む」といった従来のイメージが覆され、この1年間の急激な経済状況の悪化は住居環境に関係ないものとなっています。 飲食店の休業や倒産は学生にとっても大打撃飲食店の休業や倒産は学生にとっても大打撃 学費をアルバイトで稼ぐ学生は今も昔もいますが、コロナ禍はそんな学生を直撃しました。学生のアルバイト先の定番でもある飲食店は客足が遠のき、時間短縮や休業などの憂き目に遭っています。 帝国データバンクが11月30日(月)に発表したデータによると、居酒屋倒産が過去最多を更新。 アルバイト募集の店には似たような境遇の学生が押し寄せ、奪い合いになり、アルバイト代が激減。結果、学費を払えなくなるという負のスパイラルに陥ることは容易に想像できます。 不景気と婚姻件数の関係 今の日本は「3月に大学や専門学校、高校等を卒業したばかりの学生を4月に一括採用する」というシステムが定着。しかし、コロナ禍により断腸の思いで休学や退学という選択をした学生もおり、就職活動に大きなハンディキャップを負うことになります。 前代未聞の事態に驚くだけではなく、従来通り4月に全てを区切らず「通年で新卒採用をする」「やむを得ず退学した学生が通信制を利用し卒業できるシステム構築」「政府が推し進めている卒業3年以内を新卒者扱いにすることの徹底」と社会構造を見直す契機にして若者を救う流れを作ることが急務となっています。 1990年代半ばから2000年代初頭までに大学を卒業して社会に出た人たちが氷河期世代とされていますが、この時期の婚姻件数(厚生労働省)を見ると2001(平成13)年の79万9999組を境に減少の一途をたどっています。 2019年は「令和婚」で盛り上がり前年より1万2484組増えましたが、そもそも2000年初頭と比べると約20万組も減っているのです。 結婚のイメージ(画像:写真AC) その原因のひとつとして考えられるのが、氷河期世代の存在です。「不安定な雇用で結婚する余裕がない」という人が相当数おり、結果的に現在の少子化に拍車がかかってしまいました。バブル崩壊後の就職難も、時間の経過とともに婚姻数の減少や少子化問題などの要因になっています。 新型コロナウイルス感染拡大によってこれまで当たり前だったことが大きく変わってきました。退学した学生が卒業できるサポート体制を敷いたり、景気に左右されない就職採用を行ったりするなど、企業や学生そして社会にとってより良い未来へ進めるために見直しをする時期にきています。
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