ロマンあふれる絶海の無人島 好きが高じて「本籍地」に……実現可能?
マニア的人気を誇る無人島。そんな無人島が好きすぎて、思わず「本籍地にしたい!」という人もゼロではないでしょう。実際できるのでしょうか。フリーライターの大島とおるさんが解説します。住所と本籍地は別のもの 戸籍制度のある日本では、住所と本籍地は別のものとして管理されています。住所は実際に住んでいる場所で、住民票などに記載されます。対して、本籍地は戸籍が保管されている市区町村を意味します。 この本籍地を移動させる機会はあまりありません。上京した人でも、本籍地は実家のままという人もたくさんいることでしょう。本籍地の変更でありがちなのは、結婚して新しく住所を置くときではないでしょうか。 本籍地を有名スポットに設定する人も さて、パスポートの取得などで必要な戸籍謄本は、本籍地のみで取得できます。そのため、引っ越しするたびに移動していると「自分の本籍地はどこだっけ?」と困ってしまいます。 そうした問題に対処するため……というわけではありませんが、本籍地というのはどこでも自由に選ぶことができるようになっています。住所は実際に住んでいないといけませんが、本籍地はあくまで戸籍を保管している役所なのです。 ということで、世の中には本籍地を有名スポットに設定している人がいます。人気の本籍地は「東京都千代田区千代田1-1」、すなわち皇居です。さらに東京タワー(港区芝公園)や国会議事堂(千代田区永田町)、東京スカイツリー(墨田区押上)などを選ぶ人もいます。 このような制度のため、実際に行ったことのない離島も本籍地に設定することができるのです。 「所属未定」以外はすべて本籍地に「所属未定」以外はすべて本籍地に 例えば日本最東端の島である南鳥島は行政上は小笠原村。自衛隊関係者以外は上陸できない硫黄島や、秘境の島として話題になる南硫黄島も小笠原村であるため、本籍地にすることができます。 小笠原諸島にある無人島「南硫黄島」(画像:海上保安庁) 基本的に、東京都の離島の中で「所属未定」となっている場所以外はすべて本籍地にできるわけです。もちろん、小笠原諸島の兄島や姪(めい)島のような無人島も本籍地とすることができます。 一方で伊豆諸島の鳥島はかつて多くの人が住んでいましたが、現在は所属未定になっています。 鳥島は、東京府が1897(明治30)年に小笠原諸島の付属地として一度定めましたが、1901年に八丈島の付属地に変更した経緯があります。 その後、1980年代に無人の鳥島を伊豆諸島の八丈島(八丈町)と青ヶ島(青ヶ島村)のどちらに所属させるかという話になりましたが、決着することなく、所属の区市町村は未定のままとなっています。 戸籍謄本を交付するのは本籍地の役所 2013年の噴火が始まって以来、巨大化している西之島は小笠原村に所属しており、東京都小笠原村父島字西之島となっているため、本籍地にすることができます。 小笠原諸島にある無人島「西之島」(画像:海上保安庁) しかし、西之島は研究者からは今後陥没してしまう可能性も示されているため、自分の本籍地がいつか海の底に……ということになるかもしれません。 一方、問題もあります。戸籍謄本は本籍地の役所でないと交付してもらえないからです。 現在普及が呼びかけられているマイナンバーカードがあれば、コンビニで戸籍謄本を受け取れる市区町村もあります。しかし、東京都の離島に関してはこのようなサービスはありません。そのため、書類に必要事項を記入し、郵送で申請して送ってもらうことになります。なんとも手間暇しかありません。 置くならせいぜい東京湾の島までに置くならせいぜい東京湾の島までに ランドマークを本籍地にしている人などが考えているのが、利便性です。 名の知れたランドマークがある地域であれば、役所も交通の便がよく、いざというときに便利です。行ったこともない無人島を本籍地にするのはインパクトこそ大きいものの、不便でしかないため、できれば避けたほうがいいでしょう。 もしも便利な場所に本籍地を置きたいのであれば、文京区か板橋区がよさそうです。なぜなら、どちらも区役所が地下鉄直結だから。特に文京区は路線が多いので、オススメです。ちなみに荒川区役所(荒川区荒川)は、都電荒川線の荒川区役所前が最寄り駅ですが、少し離れています。 仮にどうしても島がよいということであれば、東京湾の島くらいにしておいた方がいいでしょう。 月島(中央区)や越中島(江東区)は、今でも間違いなく島。また、有明(同)より先の埋め立て地でも本籍地にすることは可能です。大田区と江東区が長らく所属をめぐって争っている13号埋め立て地は、所属が決まったら本籍地を移動させる人がいるかもしれません。 中央区にある月島(画像:(C)Google) ここまで島に本籍地を置くことを話題にしてきてなんですが、本籍地をむやみに動かすのはオススメしません。今ではデータをプリントアウトして出てくるため、文字の羅列に過ぎませんが、戸籍はいわば自分の生まれ育った土地とのつながりを証明するもの。 そのためか、もうすっかり東京人になり切っているような人でも、本籍地は実家のままという人も多いのです。
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