開業から2年半「高輪ゲートウェイ駅」の今 ーー歴史遺産と将来はどうなる?

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開業から2年半「高輪ゲートウェイ駅」の今 ーー歴史遺産と将来はどうなる?

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シカマアキ

旅行ジャーナリスト、フォトグラファー

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田町駅と品川駅の中間にある高輪ゲートウェイ駅。2020年3月に開業しました。実は、現在は「暫定開業」で、駅周辺の広場などが完成する時期が「本開業」となるそうです。若干工事が遅れたのは、世界的にも重要な近代化遺産が発掘されたからとのこと。本開業後はどのようになるのでしょうか。旅行ジャーナリストのシカマアキさんが解説します。

便利だけれどなかなか降りる機会がない新駅に途中下車してみる

 2020年3月14日、山手線および京浜東北線の駅として「高輪ゲートウェイ駅」が開業しました。田町駅と品川駅の中間にあたり、しかも東京都中心部を走る主要路線が停車する駅として、駅の開業前からその注目度は非常に大きいものがありました。

高輪ゲートウェイ駅。山手線ホーム(画像:シカマアキ)



 その開業から2年半あまり。東京都心にしては珍しく、駅舎の周辺にほぼなにもない場所は今、急ピッチで開発工事が進められています。

 当時「期待の新駅」と言われて評判になった高輪ゲートウェイ駅。その過去と現在、近い将来に駅とその周辺はどう変わるのかなどを、今回紹介します。

隈研吾デザインの駅舎は必見、特別な「スターバックス」もある

 高輪ゲートウェイ駅で電車を降りると、その駅舎のデザインにまず圧倒されるはず。まだ新しい吹き抜けの駅舎は、開放感があり、とても明るい雰囲気です。

 駅舎のデザインは、新・国立競技場などで知られる有名建築家の隈研吾氏が手掛けました。大屋根は「折り紙」、膜は「障子」をモチーフとし、駅舎のいたるところに使われている木材は、東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町のスギ材とのこと。

高輪ゲートウェイ駅。駅舎のデザインに数々のこだわり(画像:シカマアキ)

 山手線および京浜東北線の駅というと、多くの「エキナカ」店舗があるイメージを抱くかもしれません。しかし、2022年10月現在、限られた店舗しか駅構内にはありません。無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」と、「スターバックス コーヒー 高輪ゲートウェイ駅店」で、正直まだ「不便」さは否めません。

 このスターバックスは、実は通常店舗と少し異なります。ビジネス利用にフォーカスした店舗空間「SMART LOUNGE」を国内初導入し、仕事や作業を行う場として、また「1人利用」しやすいように半個室席や1人掛け席を、他の店舗より多く導入しているのが特徴です。無料Wi-Fiや電源も完備。実際、仕事や勉強をここで行う利用客を何名か見かけました。

日本の鉄道開業時の遺構発掘「世界遺産レベル」の声も

 実は、当初の予定より駅周辺の再開発プロジェクトは完成が遅れています。その理由は「高輪築堤跡」が発掘されたことです。

 高輪築堤は、1872(明治5)年に日本初の鉄道が開業した際、海上に線路を敷設するために築かれた鉄道構造物。特に注目は、日本および世界的にも重要な近代化遺産の1つである「石垣」です。

再開発工事で発掘された「高輪築堤跡」(画像:photoAC)

 高輪築堤は、明治末期から昭和初期にかけて埋め立てられました。その後、正確な位置が不明となっていました。

 港区教育委員会によると「特に、第七橋梁付近の石組みの遺構は、三代歌川広重の錦絵に描かれた築堤を想起させ、美しい石積み、弧を描く形状など、圧倒的な魅力を備えている」とのこと。広重が描いた『東京名所図会』の「高輪の海岸」には、海上に築かれた石垣と線路の上を汽車が走る様子が見られます。

歌川広重『東京名所図会』高輪の海岸。石垣が描かれている(画像:国立国会図書館デジタルコレクションより)

 この発掘により、高輪築堤跡の2ヵ所を現地保存、1ヵ所が移築保存され、開発予定の3街区の建築計画が変更されました。

今は工事だらけの駅、だからこそ見に行ってみては?

 今のところ、駅には無人コンビニとスターバックスしかありません。しかも、駅の周辺もほぼ一面工事中。最寄りの泉岳寺駅は300メートルほど離れた場所にあり、連絡通路も未完成です。

 現在の工事は、2025年3月の「高輪ゲートウェイシティ」“まちびらき”に向けて、進められています。もともとここは、JR品川車両基地の跡地で、開発名は「Tokyo Yard PROJECT」です。最新の情報では、外資系高級ホテル「JWマリオット」やオフィス、マンションが入居する超高層ビルを含む大型複合再開発プロジェクトとなっています。

高輪ゲートウェイ駅の「明朝体」も開業当時に話題に(画像:シカマアキ)

 高輪という場所は明治期以前にも、実は「江戸の玄関口」としての歴史があります。その1つが、高輪ゲートウェイ駅の西側にある国道15号沿いの「高輪大木戸跡」です。ここは、かつて東海道の出入り口であり、そのために今回の駅名にも採用されました。その駅名決定後に賛否両論、広く物議をかもして話題になったのも、記憶に新しいところ。しかし今ではその駅名は浸透しつつあると言えるのではないでしょうか。

 実は、JR東日本によると、2020年3月の開業は「暫定開業」で、駅周辺の広場などが完成する時期が「本開業」となるとのこと。現在まで工事中ばかりで、開業時のイメージもわかない状況ではあるものの、あと数年で駅周辺がガラッと変わり、多くの人でにぎわうでしょう。今しか見られない開発中の話題の駅に、今だからこそ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

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