ネット騒然、やよい軒「おかわり」有料化 今後どうなる? 専門家に聞く

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ネット騒然、やよい軒「おかわり」有料化 今後どうなる? 専門家に聞く

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定食チェーン「やよい軒」の「ご飯おかわり無料」サービスがインターネット上で話題を呼んでいます。その狙いはなんでしょうか。専門家に聞きました。

都内の店舗の12%が対象

 持ち帰り弁当店「ほっともっと」を展開するプレナス(日本橋茅場町)。そのプレナスがもうひとつの事業の柱とするのが定食チェーン・やよい軒です。

 都内に65店舗を構えるやよい軒といえば、「ご飯おかわり無料」(十六穀米は不可)で知られ、昼時になると、流行の糖質制限を逆走するような、ご飯をガッツリ食べたいビジネスパーソンでにぎわっています。

やよい軒 三軒茶屋店の外観。当店舗は有料化は行っていない(2019年4月22日、ULM編集部撮影)



 そんなやよい軒ですが、全国の378店舗の約3%にあたる店舗で4月16日(火)から、「ご飯おかわり無料」を変更。白米のおかわりはプラス30円から100円まで、十六穀米は大盛りではプラス50円へと有料化しました。このことはインターネット上で大きな話題を呼んでいます。

 都内の対象店舗は、

・飯田橋店
・赤坂一ツ木通り店
・三ノ輪店
・亀戸店
・大島店
・大塚店
・町屋店
・南千住店

 の計8店舗です(茅場町店を除く)。その割合は約12%で、全国と比べて4倍に上っています。同社の広報担当者は、次のように話します。

「これらの店舗を選んだ理由は特にありませんが、共通するのは直営店ということです。インターネット上で話題ですが、当社としては『あくまでも、ひとつのテストマーケティング』という認識です。このテストも5月末に終了しますので、ご安心を。皆さまの声は今後も真摯に受け止めていきます」

 今回のテストには、同店を訪れる消費者層の変化もあります。

「やよい軒はもともと男性の来店客の割合が高く、男女含めて約70%の方が『ご飯おかわり無料』のサービスを利用されていました。しかし近年、家族連れや女性の利用者層が増え、その利用率が50%以下になってきたのです。

 その一方、十六穀米の利用者は、近年で20~30%増加しています。インターネット上では『ご飯おかわり無料』にフォーカスされがちですが、当社としては『ご飯おかわり無料』のイメージだけで成り立っているブランドという認識はそもそもないのです」

 同社では今後、テストに関して、得られたアンケートなどをもとに、今後の指針につなげていく格好です。

 やよい軒 三軒茶屋店(世田谷区太子堂、有料化対象外)から出てきた、中年男性はおかわりが出来なくなったことについて、「できたほうが良いのでは、と思っています。おかわりが出来るから通っているところがありましたし、お客さんが減ってしまうのでは、と心配しています」と話しました。また、別の若い男性は「僕はおかわりしないんで」と話していました。

米価の高騰も要因のひとつ

 今回の件について、調査会社「NPD Japan(エヌピーディー・ジャパン)」(港区高輪)のシニアアナリストで、外食産業に詳しい東さやかさんに話を聞きました。

ーー今回の有料化について、どのように見ていますか。

 外食企業は、今利益を出せなくてあえいでいます。理由は、原材料高、人件費高にあります。売上が伸びても、利益が減っている企業が多いのです。プレナスも例外ではなく、2019年2月期第3四半期の連結最終損益は、4.1億円の赤字(前年同期は24.7億円の黒字)に転落しました。

 米の価格も非常に上がっています。10月には消費税増税もあり、節約志向で特に外食は客数減が見込まれますので、今後どのように利益を取っていくのか、各社考えあぐねていると思います。

 そこで、おそらくおかわりを有料化を考えているのだと思います。おかわり対応する店員の負担減も一因かもしれません。プレナスが経営する「ほっともっと」はのり弁当を昨年値下げし、客数は増えたかもしれませんが、利益がとれなかったのかもしれません。ですので、安いイメージだけでなく、別の方向性も模索しているのではないでしょうか。

ーー「やよい軒といえば、おかわり自由」というイメージを持っている人もまだ多いようです。同店のそのような「代名詞な存在」を外してしまって大丈夫なのでしょうか。

 大丈夫かどうかは、まだプレナス自体もわからないので、一部店舗での実験という形をとっているのだと思います。客数が大幅に減るのか、それとも客数減よりも利益率改善効果が高いのか、実験結果を見て決めると思います。

 インターネット上は若年~中年男性の意見が強いので、実際のやよい軒の客層とおかわり無料だけが魅力なのか、分からないです。

ーーネットで話題となった、日刊ゲンダイの記事では「今は、ガッツリ食べる若者があふれている時代ではない。高齢化社会や健康志向が強まる中、小食のニーズに配慮して、価格帯に“メリハリ”をつけたかったのでしょう」と、専門家がコメントを寄せていました。

 全店舗で突然実施すれば、うまくいくとは思えませんが、一部店舗での実験のため、うまくやっていると思います。実験 → 検証 → 全店実施の場合はどうコミュニケーションするかにかかってくると思います。

 うまくいかず全店実施しない場合、ネットで騒ぎになったことから、これまでおかわり無料だってことを知らなかった人がそのことを知り、逆に客が増えるという効果になるかもしれません。また、客数が多少減っても利益がとれるのであれば、結果オーライではないでしょうか。

 全面禁煙を実施した串カツ田中のように、喫煙者は減っても、今後ターゲットにしたい子供連れが増えるといういい結果になっています。ターゲティング、今後のビジョンを明確にして、顧客としっかりうまいコミュニケーションを取れる、または他の対策をとれればうまくいくかもしれませんね。

新しいバリューの獲得が必要

ーーまた、同記事について、有識者から「小食とおかわりのニーズが拮抗している中途半端な時に、おかわりを有料化するのは経営としては愚策ですよ。おかわり派は反発し、逃げてしまう客もいるでしょうし、他方、おかわりナシでも値段は変わらないのだから、小食派が増えるわけでもありません。価格差をつけたいのなら、おかわりナシの価格を少しでも下げればよかったのです。おかわり派の負担は増えないし、おかわりナシの値下げで新たな小食派を呼び込むことにもなります」とのコメントもありました。

 顧客視点ではそうかもしれません。でも、何らかの値上げを考えたときに、一律で定食の値段を上げるより、おかわりする人だけが影響を受けるので、結果はベターの可能性があります。ごはん小盛りを作って安い値段設定にするとか、なにか代わりにアピールすることは必要かもしれません。

 何か値上げするときは、また値下げするときは、新しい価値を作ってそちらに目を向けさせ、顧客へ値上げを意識させないことは重要です。専門家のいうことは正論かもしれませんが、それでは利益を出すビジネスとしては難しいでしょう。

ーーこのような流れは、ほかの外食産業チェーンにも波及していくのでしょうか。

 はい。どの企業も利益取れなくて苦しんでいますので、消費増税前に各社値上げや工夫、実験をしていくと思います。

※ ※ ※

 気軽に足を運べる定食チェーンのやよい軒の今後の展開に、これからも注目が集まります。

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