磯野貴理子さん離婚 「子ども欲しい」は残酷だが、ある意味「賢い」発言のワケ

  • ライフ
磯野貴理子さん離婚 「子ども欲しい」は残酷だが、ある意味「賢い」発言のワケ

\ この記事を書いた人 /

高草木陽光のプロフィール画像

高草木陽光

夫婦問題カウンセラー

ライターページへ

タレントの磯野貴理子さんの離婚が波紋を呼んでいます。離婚の理由は24歳年下の夫から「子どもが欲しい」と言われたから。世間では批判の声も多いこの離婚理由について、夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さんが、見解を語ります。

ネット上に寄せられる悲痛な声

 先日、タレントの磯野貴理子さん(55歳)が、フジテレビ系の番組「はやく起きた朝は…」のなかで、24歳年下の夫と離婚したことを明かしました。

 離婚の理由は、夫から「自分の子どもが欲しい」と言われたから。SNS上などでは「子どもはできないと分かって結婚したのにひどい」「女性としてこの離婚理由は悲し過ぎる」といった声が上がっています。

「子はかすがい」なのか(画像:写真AC)



 私は、夫婦問題カウンセラーとしてさまざまなカップルの相談を受けています。そんな私も、このニュースを聞いたとき、元夫の男性の発言は「心ない」「無神経」だと感じました。

 このカップルにどのような事情があり、男性が貴理子さんに対してどのような言い方をされたのか正確にはわかりませんが、「子どもが欲しいから離婚して欲しい」というのは、残酷な言葉だと思います。

 しかし、落ち着いて考えてみると、「賢い離婚理由だな」とも思うのです。

 元夫の男性は、「どうしても離婚がしたかった」のでしょう。そのために、妻が「言い逃れできない離婚理由」を用意していたのだと思います。

 ふたりの事情や貴理子さんの性格を考え、「ノーと言えない離婚理由」として提示されたのが「子どもが欲しいから」だったのではないでしょうか。

 貴理子さんの年齢を考えると、現実問題として、子どもを授かることは難しいでしょう。いくら「イヤだ」と言っても無理なものは無理なわけです。実際、貴理子さんは離婚を報告した番組のなかで、「あっ、そうかそうか。そらそうだと思って(離婚を受け入れた)」と語っています。

 実は、私のところに「離婚がしたい」と相談にいらっしゃる方にも、離婚理由は「本心を正直に言ってはいけない」とアドバイスしています。「嘘をつけ」とまでは言いませんが、相手の感情を逆なでしない「建前の離婚理由」を用意することが、スムーズな離婚には必要なのです。

「成長し合える関係になりたい」と語った妻、その本音は……

「好きな人がいるから離婚したい」と相談にいらしたミエコさん(仮名・35歳)。ヒアリングをしたところ、結婚7年目のご主人は真面目な性格で、仕事も順調な様子。しかしミエコさんは「もう大嫌い。顔も見たくない。好きな人ができたし、とにかく離婚したい」と言います。

 私は「スムーズに離婚がしたいなら、その気持ちは絶対にそのまま言ってはいけない」とアドバイスしました。「大嫌い」「好きな人がいる」などと言われて、いままで真面目に夫婦関係を築いてきたご主人が「はい、そうですか。じゃあ離婚しましょう」と言うはずがありません。

 むしろ悔しさや怒り、困惑などさまざまな感情がからんで、「納得するまで粘ってやる」と余計に執着心が湧いてしまうのが、人の心理というものです。

 結局ミエコさんは、顔も見たくないご主人に対して「あなたと過ごした7年間は貴重だったし、感謝もしています。でも、このまま一緒にいてもケンカばかりで、結果的にあなたの仕事の邪魔をしてしまうことになる。今の状態では、あなたにとっても私にとってもプラスにはならない。一旦、関係を白紙に戻して、お互いに成長し合える関係を作り直したい」と話をして、慰謝料もなく、離婚の合意に至りました。

ヒステリックな妻から逃げたい夫が使った「建前の離婚理由」とは?

「ヒステリックな妻から離れたい」と疲れ切った表情で相談にいらしたタロウさん(仮名・43歳)にも、離婚の決意が固いならば、周到に離婚理由を用意して、冷静に話し合いに臨むようにアドバイスをしました。

 ヒステリックな女性に、「あなたがヒステリックだからイヤだ」と真正面から話したところで、相手は余計ヒステリックになって、泥沼化するだけだからです。

 タロウさんは、「ヒステリックな君が嫌い!」と言いたいところをぐっとこらえて、離婚理由として「幼稚園の子どものため」を前面に出すことにしました。

 タロウさんから「今まで妻として家庭を支えてくれたことは感謝している。でも、いまのように言い争いが続くのは子どものためによくない。離れることで、子どものよき父親、母親として生きていこう」と冷静に話をされたことで、いつもイライラをタロウさんにぶつけていた奥さまも思うところがあったのでしょう。奥さまも納得し、離婚に至ったといいます。

「思いやり」が泥沼化を防ぐ

「平成29年東京都人口動態統計年報」によると、平成29年の東京都の婚姻件数は8万4991組。それに対して、離婚件数は2万3055組。人生の選択肢として「離婚」を選ぶ人は珍しくなくなりました。

 離婚したいと決意したならば、できるだけもめずに短期で決着をつけるのが一番。そのためには、相手の性格や状況を鑑みて、「建前の理由」を用意することです。どんな言い方をすれば相手が怒らないか、相手にとってショックが少ないかを考える。これは話をスムーズに進めるためのテクニックでもありますが、相手を必要以上に傷つけないため、お互いを傷つけ合わないための「思いやり」でもあります。

 磯野貴理子さんの件も、「子どもが欲しいから離婚したい」という理由は、残酷である一方で、有無を言わせず離婚を認めさせ、離婚協議を長引かせなかったという点で、スマートな離婚理由だったともいえます。

 例えば、実際にはどうかわかりませんが、もし「若い女性が好きになったから」などと言ったら、余計にパートナーを傷つけ、ひどい言い争いになっていた可能性もあるわけです。そういうところも含めて、この元夫の男性は「ずるいな」とは思いますが……。

 いざ離婚となると、「あなたのここが嫌い! こういうところが我慢ならない!」と相手への不満を思いきりぶつけてしまう人が多いのですが、これは相手の気持ちを逆なでするだけ。離婚合意までの道のりを長期化・泥沼化させてしまいます。

 そもそもお互いの思いやりが足りなかったからこそ離婚するわけですから、なんとも皮肉なものですが、実は“スムーズな離婚”のために一番必要なのは、一度は人生の伴侶として愛を誓った相手への「思いやり」なのです。

関連記事