個人情報ダダ漏れでも出会いを求める人たち――平成が生んだ異色の雑誌『じゃマ~ル』を覚えていますか?

かつて、個人広告だけで埋め尽くされた雑誌『じゃマ~ル』がありました。その歴史と当時の様子について、フリーライターの本間めい子さんが解説します。


個人情報から成る雑誌

 ヤフオク!やメルカリなど、企業の提供サービスを介して、個人間でやり取りを行うことは現在当たり前になっています。また、マッチングアプリのような出会い系サービスも特別ではありません。

 個人情報を公開してビジネスをしたり、新たなつながりを求めたりする――そんなムーブメントはインターネットの普及より数年前、東京から始まりました。

 1995(平成7)年11月7日、リクルートフロムエーから新たな雑誌が創刊されました。日本初の個人情報マガジン『じゃマ~ル』です。

1997年発売。「じゃマール「その後」大追跡!―気になる個人広告の結果に学ぶ人生成功術」(画像:ワニブックス)



 発行元のリクルートフロムエー(現・リクルートジョブズ)は当時、『FromA』『とらばーゆ』『ガテン』など、数多くの求人情報誌を発行していました。

『じゃマ~ル』の発売日は火曜日。掲載されていたのは趣味やスポーツ、音楽ジャンルなどで分類された個人広告のオンパレードでした。「売りたい」「買いたい」「友達募集」「彼氏募集」「彼女募集」といったメッセージだけで構成されていたのです。

出発点はアルバイト情報誌『FromA』

 実際に掲載されていた広告は、次の通りです。

・不用のラケット募集(三鷹市 会社員 32歳男性)
・ボードのほしい、かわいい女の子(品川区 会社員 22歳男性)
・ポップバンドのボーカルになりたい!!(小平市 大学生 21歳女性)
・トラ柄の水着が似合う女の子募集!!(新座市 大学生 20歳男性)
・芸能界に通なヒト!!私に貴方の力を!!(大田区 専門学校生 18歳女性)
・大金持ちの人待ってます(相模原市 会社員 25歳女性)
・同人誌購入サークルメンバー募集(鎌倉市 大学生 23歳男性)
・人生のパートナーになって下さい!(新宿区 公立学校教員 31歳男性)
・同年代の近所の友達に不自由してます!!(武蔵村山市 現在自宅療養中 27歳男性)
・イタリア人の方お友達になって!!(江戸川区 主婦 28歳女性)
・ガンダムWの同人誌一緒に作りましょう(藤沢市 OL 28歳女性)

 切実なのかネタなのか、親切なのか身勝手なのか、とにかくさまざまな個人広告がページを埋め尽くしていました。

テニスのラケット(画像:写真AC)



 さらに、掲載されているのはメッセージだけではありませんでした。多くの人が連絡手段として当時使っているのは電話か手紙だったので、電話番号や住所、本名が当たり前のように掲載されていたのです。

 そんな後にも先にも存在しない個人情報マガジンの始まりは、フリーターの名付け親でもある初代編集長・道下勝男氏によるものでした。

『じゃマ~ル』の出発点はアルバイト情報誌『FromA』でした。『FromA』は読者伝言板として、巻末2ページに個人広告を載せていました。この人気は高く、掲載は3か月待ち。アルバイト情報誌なのに、このコーナーを読むために雑誌を買う人も少なくありませんでした。そこで試しに32ページにしたところ、応募者が急増。これはいけると独立雑誌となったわけです。

 当初は首都圏のみの発売でしたが、部数はたちまち20万部を突破。発売の1995年は雑誌がもっと売れていた時代ですが、それでもたちまち20万部は驚異的です。その後、1997年1月からは関西、北海道などのエリア版が始まり、総計で120万部の雑誌となりました。

今とは「本気度」が違った

 さて、『じゃマ~ル』で個人情報をさらして効果はあったのでしょうか。個人間の売買はともかく、出会いは気になるところです。もちろん、決して全てではありませんが、実際に恋愛が成就し、編集部にお礼の手紙が来る例も少なくありませんでした。

 週刊誌『SPA!』1996年12月25日の連載「ニュースな女たち」では「じゃマ~ル美人」を取り上げています。ここでは、

・出会いを求める広告を出したところ788通もの手紙が来た21歳看護師
・パラパラを一緒に踊る人を集めたら30人集まった女性
・近所で話し相手を探したら無事に見つかったシングルマザー

が取り上げられています。

 誌面では「彼氏・彼女募集」のコーナーが特に人気でしたが、そうでないところでも多くの出会いがあったのです。

 インターネットで出会いや個人間取引が増えた現代から見ると、個人情報をさらしている人たちには驚きを隠せません。

男女の出会いイメージ(画像:写真AC)



 しかし次第に発行部数が増加するとともに、さまざまな問題が発生します。同時にインターネットが普及し、類似サービスが登場したこともあり、2006(平成18)年6月をもって雑誌は休刊となりました。

 いまでは実現不可能に見える唯一無二の雑誌。投稿者の高い本気度は、どんなインターネット上のサービスも決して真似はできないでしょう。


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