地元ポッキー首都圏版「ポッキー東京あまざけ」から発信、「東京もの」酒造りと日本文化

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地元ポッキー首都圏版「ポッキー東京あまざけ」から発信、「東京もの」酒造りと日本文化

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江崎グリコのご当地特産品を使用した「地元ポッキー」シリーズに首都圏限定版が登場しました。東京港醸造(東京都港区)の甘酒と酒粕を使った「ポッキー東京あまざけ」です。なぜ東京産「甘酒」が起用されたのかを探ってみると、その先に日本文化の発信と東京ものにこだわった酒造りがありました。

地元ポッキー首都圏版のコラボは、4階建ビルで酒を造る酒蔵

 江崎グリコによるご当地特産品を使用した「地元ポッキー」シリーズとして、首都圏限定発売の「ポッキー東京あまざけ」が2月5日より販売開始されました。

ポッキー東京あまざけの「首都圏限定発売」と「日本限定発売」。15本入り、小売希望価格800円(税抜)(画像:江崎グリコ)



 これまでの商品ラインナップは、北海道は夕張メロン、東北地区は山形のさくらんぼなど、その地を代表する特産品が起用されています。首都圏版はなぜ「甘酒」という全国どこにでもあるものだったのでしょうか。

地元ポッキーシリーズの北海道限定発売(左)と東北地区限定発売(画像:江崎グリコ)

 江崎グリコに理由を聞いたところ、「ひとつには、東京の酒蔵のものであり、米に至るまで原料全てが東京産であることに着目しました」と話します。

 使用されている甘酒は、東京23区唯一の酒蔵、「東京港醸造(とうきょうみなとじょうぞう)」で造られています。同酒造は2011(平成23)年創業のため、知らない人も多いかもしれません。港区という大都会の中心部に位置する、地上4階建てのビルの中で、ほぼ手作業で酒造りを行っているという変わり種です。

東京港醸造の経営者の齊藤さん(左)と杜氏の寺澤さん(画像:江崎グリコ)

 同社の前身は1812年に江戸で創業した酒蔵「若松屋」でした。当時の若松屋には奥座敷があり、直接東京湾に通じる水路があったことから、多くの幕末の志士たちの密談の場ともなったそうです。そんな幕末史を刻む酒蔵でしたが、後継者問題や酒税法の変更などの影響で、酒造業を1911(明治44)年に廃業。その後、食堂、雑貨屋と業態を転換して屋号を継続してきました。

 その酒蔵復活に挑んだのは、屋号を継いだ雑貨屋7代目の齊藤俊一さんでした。齊藤さんは、店のある商店街が衰退の一途をたどることに不安を募らせるなかで、先祖が酒蔵をやっていた話を思い出したといいます。

 東京のど真ん中の港区に酒蔵を復活させたら、東京タワーと相まって、観光客が来てにぎわうのではないか。そう考え、大手酒造会社で20年以上酒造りを経験してきた寺澤善実さんを口説き落とし、二人三脚で約7年がかりで2011(平成23)年に酒造を復活させました。

 現在、敷地22坪のビル内で徹底した温度管理を行い、寺澤さんが杜氏を務めて一年を通して酒造りを行っています。つまり、オールシーズン、新酒を提供しているのです。上槽(もろみを搾る工程)以外は瓶詰めに至るまで全て手作業。原料は東京産にこだわり、酒用の水も東京の水道水です。

東京港醸造は、上槽以外は全て手作業で酒造りを行う(画像:江崎グリコ)

「東京の水道水を使用」と聞くと、あまりいいイメージがないかもしれません。しかし、酒造りが盛んな京都・伏見に本社がある大手酒造の醸造技術者だった寺澤さんは、「東京都の水道水(利根川・荒川水系)は中軟水で、伏見の地下水とよく似た酒造りに適した水です。酒の味や色を悪くする鉄やマンガンはまったく含まれず、湧き水などに比べて衛生面でも安全です」といいます。

 江崎グリコが今回コラボしたのは、そんなユニークな東京ものの酒造りを行っている酒蔵なのです。

江崎グリコが「甘酒」に白羽の矢を立てたワケ

 江崎グリコは今回のコラボのふたつ目の理由に、海外で甘酒が「JAPANESE YOGHURT」や「AMAZAKE」と呼ばれて人気が高く、健康意識の高い人たちから注目されている飲み物であることを挙げます。日本古来の食文化である甘酒の存在をさらに多くの海外の人たちに知ってもらうことは、日本の食の豊かさを広く発信することにもつながると考えてのことだそうです。

東京港醸造の「東京あまざけ」1500円(大750g、税込)(画像:江崎グリコ)



 地元ポッキーは元より、行政主導の「beyond2020プログラム」に認証された商品です。同プログラムは、2020年以降を見据え、多様性ある日本の文化の魅力を国内外に広く発信する事業や活動を奨励するものです。

 世界的な認知度向上や健康志向の高まりのなかで、甘酒は「beyond2020プログラム」にもうってつけの題材。成田や羽田という外国人利用の多い首都圏の空港で外国人ターゲットに販売できる強みもあったというわけです。

 このポッキー東京あまざけ、どんな味わいなのか実際に食べてみました。

ポッキー東京あまざけ(2019年2月、宮崎佳代子撮影)

 見た目はミルキーカラーで、ポッキーにホワイトチョコレートがかかっているかのようです。最初はホワイトチョコレートの味わいが立ちますが、後から甘酒独特の風味がほんのりと感じられ、余韻を残します。その余韻が、リキュールやデザートワインとのマリアージュという大人の楽しみ方も可能にしてくれるように思えました。

 ポッキー東京あまざけは、東京、神奈川、埼玉、千葉の主要駅、空港、大型小売店のお土産コーナーで販売されています。通信販売は行われていません。また、首都圏外となる関西国際空港でも、出国後の売店でのみ、「日本限定発売」として発売されています。

東京港醸造が平日のみ角打ちを営業、全てグラス1杯350円!

 東京港醸造では酒蔵見学を実施していませんが、酒蔵のすぐ向かいに角打ち(テイスティングカー)を設けて平日のみ営業しており、そこでお酒の味を知ることができます。

 訪れてみると、外にあるもののビニールシートで完全に覆われていて、ヒーターがあるので寒さを感じません。港区のビル群の狭間にあって、下町に来たような気安さに、ホッと肩の力が抜ける人も多いのではないでしょうか。

東京港醸造が経営する角打ち(テイスティングカー)。営業は月〜金曜の夜のみ(2019年2月、宮崎佳代子撮影)



 角打ちは、甘酒もお酒も全てグラス1杯350円(税込)。結構、量があるのでリーズナブルです。つまみ類の販売は行っていませんが、持ち込み可能で、すぐ近くにコンビニもあります。

 筆者はまずくだんの東京あまざけを注文。米と米麹で造られた甘酒で、無添加です。米も東京産、米麹は自社製という純然たる東京もの。複雑ながらやわらかな甘みと芳醇な香り、優しい喉越しが印象に残りました。

角打ちでは「東京あまざけ」も味わえる(2019年2月、宮崎佳代子撮影)

 続いて、酒好適米である山田錦の純米吟醸「江戸開城」の原酒を味わってみました。

「江戸開城」の名は、若松屋が江戸城無血開城を目指す志士たちの密談の場となったことがその由来。2月に瓶詰めしたばかりのフレッシュなもので、原酒特有のツンとした香りと味わいの後に、米由来の旨みとコクが口中に充満。切れもある美酒でした。

 最後に、変わり種の日本酒「Palla-Casey(パラキャセイ)」も飲んでみました。

乳酸菌を使用している「パラキャセイ」(2019年2月、宮崎佳代子撮影)

 こちらは、生きた乳酸菌を使用した珍しい商品。口に含むと最初にスッキリとした酸っぱさが際立つも、日本酒らしい旨みと甘みがじんわりと広がってくる新感覚の日本酒でした。肉やチーズと合わせたり、お燗にすると、甘みがさらに引き出され、冷やとはまた違った味わいを楽しめるとのことです。

 正直、どれも予想以上に味わい深いことに驚きました。偶然にも杜氏の寺澤さんに店前でお会いし、角打ちで一緒に飲むことに。グラス片手に、饒舌に酒造りに対する考えやこだわりを熱く語る寺澤さん。店を去る前に、次なる新しい挑戦を匂わせるも「企業秘密」として口を閉ざし、ニヤリと笑みを浮かべて店を去って行きました。

 なにやら面白いことをやってくれそう。ここ東京にそんな酒造があると思うと、なんだかワクワクした気分となった夜でした。

● 東京港醸造
・住所:東京都港区芝4-6-10(ショップ)
・営業時間:月〜金曜 11:00〜19:00、土曜 11:00〜17:00
※角打ちの場所はショップの向かい。営業時間は平日18:00〜21:00
・定休日:日祝
・アクセス:各線三田駅から徒歩約5分

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