大事なのはエコだけじゃない! 1997年登場「プリウス」が教えてくれた「かっこいいクルマ」という本質

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大事なのはエコだけじゃない! 1997年登場「プリウス」が教えてくれた「かっこいいクルマ」という本質

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大居候

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トヨタが1997年に発表した世界初のハイブリッド車「プリウス」。その衝撃について、フリーライターの大居候さんが解説します。

ガソリン不使用のクルマが主流の時代へ

 数多くのクルマが走る大都会・東京――。そんな東京にも、間もなく変化が訪れます。なぜなら、ガソリン車廃止の動きが世界的なブームになっているからです。

 小池百合子都知事が2020年12月、ガソリン車販売を2030年までに廃止し、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などに切り替える方針を明らかにしています。政府も2030年代半ばまでに、全国的にガソリン車全廃を達成したいとしています。

 全廃とはいっても禁止ではなく、補助金制度などを定めた奨励になりそうですが、

「クルマ = ガソリンで走るもの」

という常識は激変するでしょう。既に都営バスではトヨタの燃料電池バス「SORA」を導入しており、時代は確かに変わりつつあるのです。

 ガソリンを使わないクルマが主流となるのは遠い未来のことと思われていましたが、もう近いところまで来ているのです。

1995年に登場したトヨタ「プリウス」

 そんな「未来のクルマ」の始まりである、世界初のハイブリッド車・トヨタ「プリウス」が第31回東京モーターショーで、参考出品車として展示されたのは、1995(平成7)年11月でした。それに先立つ9月にはドイツのフランクフルト・モーターショーに展示されており、まさに鳴り物入りでの登場でした。

トヨタ自動車が発売した業界初の量産型ハイブリッド車「プリウス」。1997年撮影(画像:時事)



 しかし当時の報道を見ると、あくまでも試作段階であり、実用化のめどは立っていないとの評価が目立ちます。当時、既に各社はハイブリッド車と水素燃料電池を使ったクルマの開発を進めていました。

 しかし、ハイブリッド車は使用後の蓄電池の再利用技術が十分に確立しておらず、また、水素燃料電池車は技術開発が不十分で、実用化には10~20年は必要と見られており、市場投入は21世紀だと思われていたのです。

市場投入は1997年

 そんな未来が一気に近づいたのは、1997年12月のことでした。第3回気候変動枠組条約締約国会議で京都議定書が採択された月、トヨタは初代プリウスを「21世紀に間に合いました。」のキャッチコピーで市場に投入しました。

 当時の自動車評論家の第一人者だった徳大寺有恒(ありつね)さんは『週刊プレイボーイ』の連載でプリウスを「東京モーターショーで最初に見るべきクルマ」と絶賛しています。

「プリウスは世界最初のハイブリッド車で、月に1000台という少ない生産だ。このクルマが人気をよぶかどうか、それは日本の自動車ユーザーがCO2にどれくらい関心を持っているかのバロメーターになる。東京モーターショーでは、ゲートを入ってまず真っ先にいくべきところは、このプリウスのブースであろう」(『週刊プレイボーイ』1997年11月11日号)

当時「東京モーターショー」が行われていた幕張メッセ(画像:写真AC)



 ほかにも多くの若者向け雑誌が、世界初の量産型ハイブリッド車を絶賛し、購入を呼びかけています。

最先端なのに価格は215万円

 21世紀の現代は、しばし「若者のクルマ離れ」が論じられます。しかしこの頃のクルマはまだ若者が無理して買うもので、目新しくかっこいいクルマに乗るのはそれだけで自慢になりました。そしてなにより、若者がプリウスに興味を持ったのは、世界初のハイブリッド車にも拘わらず驚きの低価格だったことです。

「常に「オレらが世界一」と威張っているメーカー、ダイムラー・ベンツもマッツアオ(原文ママ)になったという驚異の低価格、215万円(21世紀への語呂合わせらしい)で12月10日から売り出される革命的アレだ」(『SPA!』1997年12月3日号)

 最先端のクルマが215万円というのは「とても安い」というのが、当時のごく当たり前の感覚でした。

 12月には週刊誌各誌で試乗リポートが掲載されていますが、辛口な週刊誌でも新感覚の乗り心地には驚きを隠すことができませんでした。とりわけ試乗した人が驚いたのは、イングニッション(点火装置)を回してから走りだすまでのところです。

東京の高速道路(画像:写真AC)

 当時の試乗記事は「イングニッションを回してエンジンを掛けると……」に始まり、擬音を挟んで走りだす様子を描くのが定番でしたが、プリウスではそれが崩壊。なにしろ、イングニッションを回してもエンジンがブルルルっと音を立てません。ホントにこれでスタートするのかと心配になりつつアクセルを踏むと、静かに発進するのです。

 というわけで、各誌には「未来的巡航」「座席付き動く歩道」など、とにかく一気に未来が近づいた印象が記されています。

環境問題と同じくらい大事なかっこよさ

 当時の記事に共通しているのは、ハイブリッド車としての部分、すなわち環境への配慮を考えたクルマであることを強調しつつも、それだけに終わっていないことです。

 とにかく先進的な世界初の技術が用いられていること、クルマとしても乗り心地がよく操作性が良好。すなわち、乗っていて「かっこいい」と注目されるクルマであることを記していることです。これこそが現代との大きな違いなのではないでしょうか。

ガソリン車販売を2030年までに廃止し、ハイブリッド車や電気自動車などに切り替える方針を明らかにした小池百合子東京都知事(画像:CIC Japan合同会社)



 現在クルマを購入する際、荷物や人をたくさん積めることや省エネであることに重きが置かれがちです。今後、ガソリン車にかわって主流になるであろうHV、EVを扱う記事でも、新時代のクルマがいかにかっこいいかを記したものもあまり見当たりません。

 そんな現代でもやはりかっこいい、目立つクルマに乗りたいという願望はあるはずです。環境問題はひとまず置いておいて、「こんなかっこいいクルマが登場するんだ」という話題をもっと目にしたいものです。

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