「町田は神奈川」論争がコロナ禍で再び炎上? きっかけになった地域メディア「相模原町田経済新聞」とは

「町田は神奈川」「神奈川県町田市」。本州で東京最南端に位置する町田市にまつわるこのネタは、町田市民、神奈川県民にとって定番のネタとなっています。この話題がコロナ禍で再びクローズアップされました。いったいなぜ? 発端となった地域メディア「相模原町田経済新聞」を取材しました。


感染拡大「県境またぐ移動の自粛を」

 2021年8月5日(木)、東京都の新型コロナウイルス新規感染者数は初めて5000人を超え、感染拡大に対する懸念がいっそう広がっています。

 加藤官房長官は2日(月)、夏休み中の行動について「都道府県を超えた移動はなるべく避けてほしい」と述べ、必要な場合であっても小規模にとどめるよう、国民に呼び掛けました。

 観光目的の旅行はもちろん、地元への帰省も前年に続いて難しい状況となりましたが、ここ数日の感染者数の増加を見るにつけ「できるだけ外出はせず用事は家の近くで済ませよう」と思い直した人も少なくないのではないでしょうか。

 さて、この「県境をまたぐ移動の自粛」という要請に関連して、思わぬ形で注目を集めた話題がありました。

地元住民にとってはおなじみのネタ「町田は東京か? 神奈川か?」論争がコロナ禍で再燃したワケとは(画像:写真AC)



 東京・神奈川の在住者にとってはおなじみのネタとなっている「町田は東京か? 神奈川か?」論争です。

 東京都(本州)の最南端に位置する町田市は、半島のように飛び出した形状で神奈川の県域に食い込んでいることから、しばしば市民らが「神奈川県町田市」などと自虐的に称することの多い街。

 今回、このネタに絡んでツイッターユーザーたちから総ツッコミを受けたのは、神奈川県相模原市や東京都町田市エリアの地域情報を配信するウェブメディア「相模原町田経済新聞」でした。

存在がすでに県境をまたいでいる……!

 同サイトの公式アカウントは2日(月)夜、前述の官房長官発言をまとめた時事通信社(中央区銀座)の配信記事をサイトに掲載し、「県境またぐ移動自粛を」という見出しとともにツイッター上にリンクを投稿しました。

 緊迫するコロナ禍の動向を伝えるシリアスな投稿だったはずですが、これを見たユーザーたちから厳しいツッコミがいくつも寄せられてしまったのです。

「新聞が県境をまたいどる……よな?」
「これはじわじわくる(笑)」
「身を呈したギャグか?」
「町田は神奈川だからセーフ!」……

 この流れに対して、同アカウントもノリ良く反応。コロナ禍で殺伐としたムードがただよう夏の夜に、いっときの和みをもたらしたのでした。

 今回の一件についてどのように感じているのか、同サイトの宮本隆介編集長に話を聞きました。

東京都(本州)最南端、半島のように飛び出しているのが町田市(画像:YAHOO!JAPAN地図)



「相模原町田経済新聞」が取材対象としているのは、町田・相模原の両市のほか、近接する横浜市緑区の長津田や大和市の中央林間、座間市など(いずれも神奈川県)。

 サイトは「プロボノ」と呼ばれる形式(公共的な目的のために職業上の専門知識を生かして行うボランティア活動)の運営で、数名のライターが取材・執筆をこなしているのだそう。

県境をまたがず町田から都心へ行くには?

 今回のツイッター上での盛り上がりについて宮本さんは、

「当メディアの立地特性上、このようなツッコミが入ったのは実は初めてではありません。地元の人は慣れっこの話題なので『またか』くらいの反応ですよ」

と、あっけらかん。さすが町田・相模原併記の看板を掲げるメディアの編集長、泰然自若としています。

「たとえば過去には『町田から県境をまたがずに都心に行ってみた』という企画記事を配信して、反響を得たこともありました。このエリアならではのツッコミどころを皆さんに楽しんでいただけたらと思っています」(宮本さん)

 たしかに先ほど紹介したツイッターにも、町田在住と思われるユーザーからの、

「新宿の職場まで小田急線に乗って通勤しているが、途中で川崎市内を通るから(県境移動の自粛は)困る」

という切なる声が寄せられていました。

 当該の企画記事を探してみると、1回目の緊急事態宣言(東京は2020年4月7日~5月25日)が解除された後の2020年6月10日(水)に配信されているのを発見。

2020年6月10日配信の相模原町田経済新聞の記事を参照し、Google Mapでざっくりと再現。あまりに非日常的なルートのため、電車・バスでのルートは表示されず(画像:相模原町田経済新聞の記事を基にULM編集部で作成)



 町田駅から新宿駅まで、本来なら小田急線1本、30分ちょっとで行かれる距離です。

 しかし記事には、神奈川中央交通バス ― 京王相模原線 ― 多摩モノレールを乗り継いで立川市内まで行き、その後JR中央線に乗り換えて立川駅から新宿駅へ到着するという驚きのルートのルポが克明に記されていました。

 所用時間は、通常の4倍近い1時間59分!

 この記事もツイッターで1700件超、フェイスブックでは5000以上の いいね が集まったとのこと。地元住民をはじめ多くの人の共感が寄せられた証拠です。皆さん、本当に「町田・相模原」論争が大好きなのです(もちろん良い意味で)。

そもそもなぜ「相模原町田」新聞?

 それにしてもなぜそもそも同サイトは、町田と相模原という2都県にまたがるエリアを取材対象とすることになったのでしょうか。

 宮本さんによると、2007(平成19)年8月の開設当初は「町田経済新聞」としてスタートしました。はじめ相模原は含まれていなかったのです。

 当時まだインターネット上のローカルメディアというものは今ほど多くありませんでした。どういったネタや情報にニーズがあるのか、ロールモデルが無いなか手探りでサイト運営を始めたのだといいます。

相模原町田経済新聞サイトのトップページ(画像:相模原町田経済新聞)



 市民の生活圏という視点を軸に取材を重ねていくと、おのずと町田・相模原の話題が混在するように。

「そもそもJR町田駅の南側は一部が相模原市に接していますし、南口にあるヨドバシカメラ マルチメディア町田店は、店内の一部が相模原市に入っています。同じく駅の目の前にあるデニーズ町田南口店は、住所表記からして相模原市南区です」

「JR横浜線は、町田の隣駅の古淵(こぶち)駅がもう相模原市。“横浜”線と言っても(東京都民である)町田市民も数多く利用しています。町田市民は普段の生活をする中で、意識せずに(県境をまたいで)相模原市に出入りしているのです」

 サイト開設から10年を過ぎようとする頃、現在の「相模原町田経済新聞」へと改称。相模原をターゲットとして正式に打ち出したことで、サイトへのアクセスは明確に増加したといいます。

地域特化型メディアの役割とは

 あらためて宮本さんに、エリアを絞って特定地域に特化した情報発信を行うメディアの意義について尋ねてみました。

「サイトを開設した2007年当時から、『住んでいる街は楽しい方がいい』という思いを持ってやってきました。平日は都心へ通勤して、在住の街にはただ寝に帰るだけ、というのではもったいない。休みの日にちょっと遊びに行けるところが地元にあれば、住民の毎日も街も、もっと充実するはずだと考えているからです」

 自分たちの住む街を知ろう、楽しもうという機運は、外出自粛が続くコロナ禍でいっそう高まっているようにも感じられます。

「(コロナという疫病は)変化のきっかけとしては決して望ましいものではありませんが、市民生活にとってのインパクトは非常に大きかった。身近な場所・地域に対するニーズは、今後も高まっていくのではないでしょうか」

 たとえばコロナ禍で「密」を避けるため、日々の移動に自転車を取り入れた人もいるでしょう。それまで以上に行動範囲が広がり、知らなかった公園やお得なスーパーマーケットを発見する機会になったかもしれません。

 時代、世相、社会的背景によって常に変化する私たちの日々の生活様式。今あらためて自分の住む地域に目を向ける人たちの受け皿として、相模原町田経済新聞は今日も記事を更新し続けています。


【画像ギャラリー】「町田は神奈川」論争、漫画みたいなオチ(2枚)

画像ギャラリー

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