コロナ禍「医療従事者」の大活躍で、都内医学部の志願者数は増えた?減った?

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コロナ禍「医療従事者」の大活躍で、都内医学部の志願者数は増えた?減った?

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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波乱続きの受験シーズンだった2021年。そんななか最も大きな影響を受けているのが医療系学部です。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

人気の背景にある就職有利性と個々の勇気

 コロナ禍や記述式問題・英語民間試験の導入見送りなどで、2021年の大学受験は、特に現役生にとって受難続きとなりました。

 波乱続きのシーズンも、残すは国公立大学の中期・後期の合格発表、コロナに罹患(りかん)した受験生を対象にした追試験とその合格発表を待つばかりとなっています。そんななか、最も大きな影響を受けているのが医療系学部です。

 近年、その激務ぶりがマスコミなどで取り上げられたことで、医療現場は「ブラック企業」とやゆされることも少なくありませんでした。さらに、

・現場の混乱
・医療従事者とその家族に対する偏見
・受診者減少による医院の経営難

といった状況も追い打ちをかけました。医療系学部は一般的に「不況に強い学部」と言われますが、こうした現状もあり、受験生が積極的に志願しないのではないかとみられていました。

 ところが文部科学省が2月24日(水)に発表した、2021年度国公立大学入学者選抜2次試験の確定志願状況をみると、国公立大学の医療系学部の志願者数は薬学部を中心として全体的に2020年より増えていたのです。

 もちろん単純に比較できませんが、2020年までの就職活動は「売り手市場」が続いていたため、難易度の高い医学部や6年制薬学部の志願者は減少し続けていました。しかし新型コロナウイルスにより状況は一変。「就職氷河期の再来」もささやかれたことから、医療系学部の人気が再び高まったと考えられます。

 また一部報道によると、コロナ禍に立ち向かうべく、アメリカでは医療系学部の志願者は急増しているといいます。日本でもこうした志を持つ若者が医療系学部への進学を目指す動きが出ていることも十分に予想されます。

最難関の志願者は減少したが……

 2021年の大学受験では、医学部受験を敬遠する動きはさほどみられませんでした。国公立大学をみると、後期日程を実施したり、募集人員を減らしたこともあり、全体の志願者は減ったものの、前期日程は2020年より32人増加しました。

 一方、都内のふたつの国立大学(東京大学、東京医科歯科大学)の医学部では志願者減となったのです。

文京区本郷にある東京大学(画像:写真AC)



 医学部最難関である東京大学(文京区本郷)の理科三類(募集人員97人)の志願者は2020年の413人から28人減り、385人に。直近10年間で理科三類の志願者数が300人台となったのは、2021年のみです。

 以前のような「何が何でも理科三類」というこだわりが薄まっていることや、2020年の現役志向の高まりによる浪人生減少の影響も考えられます。

 理科三類に次いで難関である東京医科歯科大学(文京区湯島)も医学科の志願者は前後期ともに2020年より減少。一方、東京近郊の千葉大学(千葉市)医学部や横浜市立大学(横浜市)医学部の志願者は増加。このことからも、最難関を避けて医学部合格をつかもうとする成績上位者が「安全志向」に走った可能性があります。

 実際、横浜市立大学における2021年入試合格者の最低点は2000点満点中1657.4点(大学入学共通テストと2次試験の合計)で、2020年の最低点より64.4点もアップしています。共通テストの理系科目の平均点が2020年のセンター試験より高くなったたことも一因ですが、合格者の最低点は近年上昇傾向が続いており、2021年は特に顕著でした。 

 千葉大学医学部は一般枠と地域枠(千葉県民であることや、医師不足の地域での勤務などが条件)が設けられていますが、2021年は一般枠での志願者数が前後期ともに増加しています。

医大受験、2022年度はどうなる

 医師不足解消のため、2000年代後半から国公立大学の医学部医学科の募集人員は増加してきましたが、少子化に伴う人口減少により、将来的には医師が過剰となると見込まれています。

 そのため厚生労働省は2023年度以降、全国にある医学部の募集人員を段階的に削減する方針を固めています。新型コロナウイルスの感染拡大で議論が滞っているため、当初予定されていた時期よりずれ込むものの、医学部医学科を志願する受験生にとっては今後厳しい状況となります。

文京区湯島にある東京医科歯科大学(画像:写真AC)



 浪人が珍しくない医学部受験ですが、こうした動きが絡んでいるのであれば、「今年必ず決める「何としても浪人を避ける」という動きが加速するのは、至極当然と言えるでしょう。それゆえ、本来であれば東京大学や東京医科歯科大学を狙える成績上位層が横浜市立大学や千葉大学に切り替えて「今年必ず決める」となったと考えられます。

 国公立大学の医学部は私立大学に比べて学費が圧倒的に安いため、受験生たちの戦いは熾烈(しれつ)を極めます。近年は多くの大学の2次試験では面接も行われ、学力だけで合格できるとは限らなくなっています

 今後は不況への警戒感や前述の募集人員削減などの影響で、2022年の医学部志願者は2021年より一層増えることが予想されます。

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