「紅白歌合戦 = NHKホール」は間違い? 実は会場を転々とした歴史があった

  • ライフ
「紅白歌合戦 = NHKホール」は間違い? 実は会場を転々とした歴史があった

\ この記事を書いた人 /

橘真一のプロフィール画像

橘真一

ライター、ノスタルジー探求者

ライターページへ

毎年NHKホールで開催される年末恒例の『紅白歌合戦』。実はかつてはさまざまな場所で開催されていたことをご存じでしょうか。ライターの橘真一さんが解説します。

来年の『紅白歌合戦』はNHKホールで開催せず

 本日夜、大みそかの風物詩であるNHK『紅白歌合戦(以下『紅白』)』が放送されます。

 第71回となる今回は、活動休止を前にした嵐のほか、SixTONES、NiziU、瑛人、YOASOBI らの初出場、顔を公開したことがないGReeeeNの特別枠での登場など、話題を集めそうな目玉がいくつか用意されています。

 そんな『紅白』は毎年、NHKホール(渋谷区神南)で行われていますが、2021年は東京国際フォーラム(千代田区丸の内)が舞台となることをご存じでしょうか? 理由は、NHKホールが耐震工事のため2021年3月から2022年6月まで休館を予定しているからです。

紅白歌合戦が開催される渋谷区神南のNHKホール(画像:写真AC)



 しかし、『紅白』がNHKホール以外で行われるのは初めてではありません。むしろ当初は会場が一定ではなく、都内のいろいろな会場を転々としていたのです。

かつては歌舞伎町でも開催

『紅白』がスタートしたのは、終戦から6年目の1951(昭和26)年のことです。

 現在も『紅白』はテレビとラジオで同時放送されますが、この第1回はラジオのみ。放送は大みそかでなく1月3日の夜で、会場は当時、千代田区内幸町にあったNHK東京放送会館でした。

かつてNHK東京放送会館があった場所(画像:(C)Google)

 同じ会場で、ラジオの正月番組として放送されていたのは第3回まで。第4回からは、大みそかに移り、テレビ放送が始まります。

 会場は、現在の有楽町センタービル(有楽町マリオン、千代田区有楽町)が建っている場所にあった旧・日本劇場(通称 = 日劇)です。当時は都内にコンサート会場自体が少なく、日劇はエンターテインメントの拠点ともいえる存在でした(第11回も開催)。

開催回数の第2位は東京宝塚劇場

 続いて、第5回は「日比谷公会堂」(千代田区日比谷公園)が舞台。ここは日劇より早く1929(昭和4)年にオープンしたホールで、しかも現存しています(休館中)。

千代田区日比谷公園にある日比谷公会堂(画像:写真AC)



 1955年の第6回が行われたのは、千代田区大手町にあった産業経済新聞社系列の旧「産経ホール」という会場です。NHKの看板番組が他メディアの関連施設から放送されるというのは大変に珍しいケースだといえます。ただし、その時点ではまだフジテレビは開局前で、「フジサンケイグループ」も誕生前でした。

 続く第7回は、旧「東京宝塚劇場」(現・東京宝塚ビル、千代田区有楽町)で行われています。この宝塚歌劇団のホームグラウンドは、次の第8回、第10回、さらに1961年の第12回から1972年の第23回まで連続して使用されています。つまり、東京宝塚劇場は、NHKホール以外でもっとも『紅白』が多く開催された会場なのです。

 第9回は、現在は「TOHOシネマズ 新宿」(新宿区歌舞伎町)が建っている場所にあった「新宿コマ劇場」で行われています。これは唯一の新宿区での開催例です。

NHKホールで初開催は47年前

 東京宝塚劇場での12年連続の開催を経て、1973(昭和48)年の第24回以降、『紅白』の会場はようやくNHKホールに固定されます。

 では、なぜ第23回までNHKホールで行われなかったのか? 答えは簡単です。存在しなかったからです。NHKが渋谷区神南に自前のホールをオープンさせたのが1973年なのです。

なお第24回の出場者で2020年の紅白にも出場するのは、郷ひろみと五木ひろしのみ。以降、連続して出演している五木ひろしは、NHKホールでの『紅白』にすべて出演した唯一の歌手です。1972年の時点で、嵐のメンバーは誰も生まれていません。

2021年の『紅白』が行われる、千代田区丸の内の東京国際フォーラム(画像:写真AC)

 NHKホールで『紅白』が行われるのは今回で48回目ですが、それ以前はほとんど千代田区の会場でした。東京国際フォーラムで行われる2021年は、『紅白』の約半世紀ぶりの里帰りともいえるでしょう。

中継スタイルを定着させたのは中島みゆきと平井堅

 近年の紅白では、NHKホール以外の会場からの出場は珍しくなくなりました。

 例えば福山雅治は、毎年のように自身のカウントダウンライブ会場からの中継で出演しています。この形式が初めて採用されたのは、第41回(1990年)のこと。このとき、長渕剛や、元「サイモン&ガーファンクル」のポール・サイモンが海外からの中継で歌いました。

12月27日に初となるオンラインライブを行った福山雅治(画像:SHOWROOM)



 その後、中継スタイルはしばらく途絶えるのですが、2002(平成14)年の第53回に復活。中島みゆきが黒部ダムの黒部川第4発電所で『地上の星』を、平井堅は曲のモデルになった時計のあるアメリカのマサチューセッツ州で『大きな古時計』を歌唱しました。以来、中継スタイルは毎年、何組か見られるようになります。

 これは出場に難色を示す、あるいはライブなどが予定されている人気歌手に、NHK側が特別扱いである中継での出演を提示する……という背景が伺えます。

 さて、今回の『紅白』は初めて無観客で行われます。そして嵐は同時間帯に生配信ライブを開催するため、同会場からの中継で登場する模様です。だとすると、リニューアル前のNHKホールで行われる最後の『紅白』最大の目玉は、皮肉にも別会場からの中継……ということになりそうです。

関連記事