意外と日本人だけ知らない 外国人旅行者に人気の都内スポット、いったいどこ?
外国人は「東京の自然」を好む この数年激増を続ける日本への外国人旅行者。彼らの旅先としてもっとも多い地が東京都で、2018年には1424万人が訪れました。同年の日本全体への外国人旅行者数が3119万人なので、日本にやってきた外国人のおよそふたりにひとりが東京でのひとときを過ごしたことになります(平成30年東京都観光客数等実態調査より)。 多くの外国人旅行者にとって、東京の魅力のひとつは「自然」です。 新宿御苑。2019年11月撮影(画像:内田宗治) こう述べると、大半の日本人には信じてもらえないかもしれません。「ビルだらけの東京で自然が魅力とは?」と不思議に思うのもうなずけます。しかし、いくつかのデータがそれを裏付けています。この場合の自然とは、人里離れた大自然ではなく、緑豊かな自然公園のような場所と捉えられます。 11月上旬の3連休。このことを身をもって実感するために、新宿御苑を訪ねてみました。新宿駅から徒歩7分ほど。巨樹がそびえる林があり広々とした芝生があり、池が配置された日本庭園があるといった広大な施設です。 入場券窓口が5か所あるのにどれも長蛇の列。並んでいるのは少なく見積もっても3~4割が外国人です。新宿御苑は2013年の年間入園者が119万人だったのに対し、2017年は250万人。わずか4年間で入園者が倍増しました(2018年は231万人)。増加人員の多くが外国人だと推定されています。 国籍の違いによって大きく異なる人気国籍の違いによって大きく異なる人気 外国人旅行者へのアンケートを見てみましょう。東京都が外国人に行った調査「東京でしたいこと」に対し、1位が日本食を楽しむ(74%)、2位が自然を感じる(四季の変化、桜、公園、多摩、島嶼部)(67%)、3位が伝統的な街並み・施設の遊覧(64%)でした(「東京のブランディング戦略2015年」)。自然を感じるが、伝統的なものよりも上位に位置しています。 ミシュランが星3つを付けた高尾山からの眺め(画像:写真AC) また、旅行情報ウェブサイト・アプリのトリップアドバイザーによる「外国人に人気の日本の観光スポット2018年」での東京およびその周辺での順位は、1位新宿御苑、2位浅草寺、3位明治神宮、4位東京ディズニーシーとなっています。このデータでも浅草寺や明治神宮といった伝統的な場所よりも新宿御苑が上位に来ています。外国人旅行者は、われわれ日本人が思う以上に東京の自然を探訪したがり、実際に訪れた人は、そこを高く評価しています。 2007(平成19)年、フランスの旅行案内書「ミシュラン」が都内の山間部に位置する高尾山(八王子市高尾町)に初めて最高ランクの星3つを付けたとき、日本人には意外でテレビなどでもニュースになりました。都心に近いのに、これほど動植物相(特定の地域にすむ動植物の全種類)が豊かな山は珍しく魅力的で、訪れる価値があることによる高評価でした。高尾山は最新版のミシュラン『JAPAN』でも星3つで、現在外国人旅行者の姿もよくみかけます。 国籍の違いによって人気が大きく異なる場所もあります。ヨーロッパからの訪日旅行者は伝統的な建物や行事に関心が高いのに対し、アジアからの旅行者はその関心が比較的低いといったことなどです。中国からの旅行者がアニメの聖地(モデルとなった場所)やポップカルチャーに関心が高いことも興味深い点です。 中国人旅行者は日本のポップカルチャーに関心中国人旅行者は日本のポップカルチャーに関心 2019年の10月初めくらいから、港区の桜田通り赤羽橋南交差点付近に中国などからの旅行者が多数集まってきて、思い思いに記念写真を撮る姿を見かけるようになりました。都営地下鉄赤羽橋駅から徒歩1分ほどの所です。若者旅行者が多いようです。 理由は中国などで大人気、台湾の歌手、ジェイ・チョウの「泣かないと約束したから」のMV(ミュージックビデオ)の舞台となったためです。MVでは背景に写る東京タワーが印象的で、ここが男女のミニドラマのひとつの舞台となっています。そのシーンを思い浮かべながら記念撮影すればいかにも東京に来た、という感じの写真になるわけです。 赤羽橋南交差点。記念撮影する中国人旅行者の姿をよく見かける。2019年10月撮影(画像:内田宗治)「訪日旅行を決める際に、影響されるモノやコト」に関するアンケート(「トリップアドバイザー インバウンドレポート2019」より)では、欧米豪からの旅行者は、1位「伝統文化(侍、着物、日本美術など)」(78%)なのに対し、中国からの旅行者では、1位「季節のイベント(花見・紅葉狩りなど)」(68%)に続き、2位に「アニメやJポップなどポップカルチャー」(54%)がランクインしています。赤羽橋南交差点の状況を裏付ける形です。 今後外国人旅行者が意外な所で記念撮影しているのを見かけるかもしれないスポットとしては、アニメ『天気の子』(新海誠監督)の重要な舞台となったJR田端駅南口が挙げられます。高架の新幹線を望みながら台地の上から下町を見下ろす地です。 同作は、台湾で9月中旬、中国と韓国ではいずれも11月初旬前後から公開となりました。これらの国々では、新海監督の前作『君の名は。』(2016年)が大ヒットしていますので、今回もヒットが期待されています。 外国人にとっての東京の人気スポットは、日本人には予想外の所があるとともに、その時々によって移り変わる所もあるわけです。
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