「おひとりさまって寂しくないの?」同僚の言葉に揺れた心 都会で暮らす女性、葛藤の物語

気ままで自由な東京での「おひとりさま」ライフ。でもふとした瞬間に襲われる孤独感にどう向き合えばいいの――? ライターのふくだりょうこさんが、漫画『おひとり様物語』(谷川史子、講談社)を通して「寂しさ」の裏側にあるものについて考えます。


自由で気ままな東京ひとり生活だけど

 すっかり定着した感のある「おひとりさま」という言葉。

 でも実はナチュラルに女性のおひとりさまを楽しめるのは都会にいるからこそ、なのかもしれません。

 都会で生きるおひとりさま女性の楽しみ方、生きざま、そしてふとしたときに感じる寂しさについて描いた漫画作品があります。

ひとりでいる理由は、人それぞれ

 谷川史子さん作の『おひとり様物語』(講談社)。2020年10月末現在9巻まで発売されている、さまざまな「おひとりさま」の物語が収められたオムニバス形式の作品です。

 上京したての女子大生、バツイチの編集者、独身の文筆家、夢を追いかけるためにお見合いを蹴った女性、同棲中の恋人とすれ違いの生活を送るOL……。

 ひと言でおひとりさまと言ってもその形も、その形に至った経緯もさまざまです。

「おひとりさまって寂しくないの?」。人に言われてあらためて考える。自分は寂しいのだろうか(画像:写真AC)



「おひとりさま」と聞いて、どのような印象を受けるでしょうか。

 寂しい? 自由で楽しそう? ひとりで行動できてかっこいい? おひとりさまを楽しめるかどうか、おひとりさまを見てどう思うか、はその人がいる状況によっても異なるかもしれません。

「私はいいです。孤独っぽいから」

 第1話に登場するのは山波久里子、29歳。本屋さんに勤めています。そんな彼女の休日は前日夜から始まっています。

 ひとりで借りてきたDVDを観て、ゆっくりとお風呂に入りながら雑誌を読んで、チーズとクラッカー、ワインをそばに本を読みながら眠る。翌日はお昼頃に起きて、お散歩がてらブランチをして気ままに買い物をしたり、映画を見に行きます。

 彼女にとっては「いい休日」。でも職場のアヤ(21歳)はナチュラルに問いかけるのです。

「それって寂しくないんですか?」
「(私は)いーです、孤独っぽいから」

 悪気がないから、怒りの持って行き場もない。自分は楽しいと思っているはずなのに、久里子の心は揺れます。

都会で暮らすなか、ふとした瞬間に感じる「寂しさ」をどうすればいい?(画像:写真AC)



 そんな出来事から友人たちに連絡をしてみますが、こんなときに限って誰もつかまらない。突然押し寄せる、寂しさ。

 ひとりが楽しめるのは、自分のことを考えてくれている誰かがいるということを知っているからなのだと気がつきます。

 慌ただしい生活の中、予定を合わせて友達と会うのも大変です。ひとりでも楽しい。けど、それはきっとまた大切な誰かと一緒の時間を過ごせると知っているからなのかもしれません。

 どちらもあるから、ひとりの時間も誰かとの時間も楽しめるのではないでしょうか。

自由と表裏一体の寂しさ

 第13話に登場するのはずっと田舎暮らしだった杉下育。大学進学を機に上京し、門限もない、朝帰りしたって怒られない、ひたすら遊んで大学生活を満喫していました。

 それがどれだけ自由でワクワクするのか、は同じような経験をした人は分かるのではないでしょうか。

 でも、ふとしたときに家族が懐かしくなる。そしてそのきっかけとなるのが風邪でした。

 誰も看病をしてくれない。「大丈夫?」とおでこに手を当ててくれる優しい手もない。うるさいと思っていた父のいびきも聞こえない。両親のことを思い出したら急に寂しくなって涙があふれた――。

 そうして気がついたのは「ひとりの部屋に帰りたくなかった」ということ。

 風邪をひくと急に弱気になるんですよね。24時間やっているコンビニはある。ドラッグストアもある。必要なものはすぐに買えるけど、「大丈夫?」と心配してくれる人はいない。

 でも、主人公は寂しさにこんな答えを見つけます。
「遠く離れているけれどいつでもそこにある」

 すぐに会えないけれど、寂しく思って帰りたい場所がある、会いたいと思える人がいる。それはとても心強いことなのではないでしょうか。

私はここにいていいのかという疑問

 一方、39話に登場するのは上京ベテランのななえ。北海道から上京して10年。トラブルもなく、健康に過ごしていれば、普通は「いいね」「順調だね」と言ってもらえるかもしれません。

 でも、それで本人も満足しているかというと別問題です。

 東京にいる理由もない、でも北海道に帰る理由もない。だからなんとなく現状維持。

 ここにいるのは自分じゃなくてもいい気がする、というのはどうしてなのでしょうか。なんだか自分の代わりはいる気がするせいでしょうか。

ここにいるのは自分じゃなくてもいい気がする、そんな気持ちに襲われることもある(画像:写真AC)



 ふと東京の真ん中で足を止めると、不安になることはありませんか。

 こんなにたくさん人がいるんだから、自分ひとり東京からいなくなったとしても誰も気がつかないかもしれない――。

 漠然とした不安を抱える主人公に、偶然再会した元カレが力強く言います。

「毎日必死で生きてんのだけは分かった」

 欲しいのは自分を肯定してくれる言葉。でも、それは自分をよく知っている人でないとくれないものです。ただ、そのひと言でまた「がんばってみよう」と思えます。

「寂しい」は「幸せ」の裏返しかもしれない

 ひとりでいるから寂しいと感じるわけではありません。

 寂しいと思うのは、会いたい人がいるから、帰りたい場所があるから。それは離れてみてようやく気がつくことができます。

さまざまな「おひとりさま」を描くオムニバス漫画『おひとり様物語』(画像:谷川史子、講談社)



 会えないこと帰れないことは悲しいことではなく、がんばっている証拠。そして、またいつか帰れる場所があると思うから、がんばることができるのではないでしょうか。

 そんなふうにがんばっている中でまた同志も見つけていく。寂しさを分け合う人と出会える。寂しさを知るから、誰かに優しくできますし、寂しさを埋めてくれた人を愛おしく思えるのです。

 多くの人が行きかう都会の中でひとりだと感じるときもあるでしょう。でも同時に今まで気がつかなかった大切なもの、さまざまな感情があることを教えてくれるのかもしれません。


【漫画】都会の「おひとりさま」に贈る作品『おひとり様物語』

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