予断を許さない状況
緊急事態宣言は全面的に解除されましたが、いったん落ち着いたように見えた新型コロナウイルスの脅威は、再び息を吹き返しつつあります。
東京都の感染者数は、
・7月9日(木) :224人
・7月10日(金):243人
・7月11日(土):206人
・7月12日(日):206人
と、4日連続で200人を上回りました。
13日は119人、14日は143人と減少しましたが、予断を許さない状況に変わりはありません。こうした感染者数からも、第2波を予感させます。
コロナで「夏の風物詩」は大ダメージ
新型コロナウイルスが猛威をふるっていた3月半ばから、全国の博物館・美術館・動物園・水族館などは休園・休館しました。書き入れ時でもある春休みを棒に振りましたが、オンラインという技術を使って、さまざまな工夫がなされています。
博物館・美術館ではオンライン展覧会が開催されるようになり、動物園・水族館でも動物や魚たちの姿をネット配信。“おうち”でも、楽しめるようになっています。
他方、全国各地で予定されていたイベントや興行などは、早々に2020年の開催を見合わせることを発表。
競馬や野球といった一部のスポーツ・興行は、感染拡大防止の観点から無観客開催を実施しました。しかしそうした工夫が難しいイベントもあります。それが、夏の風物詩でもある花火大会です。
河川敷や港などで開催される花火大会は、花火が空高く打ち上がるために家の庭やビルの屋上などでも楽しむことができます。
さまざまな場所で見ることはできますが、やはり打ち上げ会場となる河川敷・港に多くの人が集まることは言うまでもありません。
仮に、そうした場所での見物を制限しても、花火を打ち上げれば家の庭・ビルの屋上などに多くの人が集まってしまいます。それがクラスター(感染者集団)を発生させてしまう可能性は十分にあります。
「バーチャル花火大会」開催も
東京近郊では夏季にいくつもの花火大会が実施されていましたが、2020年はほぼすべての花火大会が中止となっています。
毎年7月の最終土曜日に実施され、テレビの生中継がされるほど有名になった隅田川花火大会も中止が決まっています。
それでも毎年の慣例から、テレビ生中継を実施。2020年は過去の映像を使用した総集編として放送される予定です。
また東京スカイツリーでは、YouTubeを駆使して過去の隅田川花火大会の映像を流す「バーチャル花火大会」を実施。コロナ禍で沈みがちな気分を、知恵を絞り、あらゆる手段で盛り上げようとしています。
大会当初は料亭がスポンサーだった
現在、隅田川花火大会という名称が用いられ、第1会場が浅草周辺、第2会場が蔵前周辺になっていることから、同イベントの起源は浅草と思われがちです。
しかし、隅田川花火大会のおこりは、江戸時代に柳橋の料亭がスポンサーになって始められた両国の川開き花火大会といわれています。
東京にはいくつもの花街がありましたが、中でも柳橋は伝統と格式のある花街として隆盛を誇りました。
隅田川沿いの柳橋では、夏季になると夕涼みと舟遊びも兼ねて花火を打ち上げるようになりました。その規模が拡大し、誰もが見物できる花火大会として成長していったのです。
しかし、戦後は連合国軍総司令部(GHQ)が火薬の使用を禁止。これにより、花火大会は中止させられてしまうのです。
花火を楽しみにしていた地元住民や関係者、はるばる遠方から足を運ぶ見物客は落胆しました。それでも大会を支えてきた人たちの強い熱意もあり、花火大会は復活を遂げます。
1977年から現在の名称に
復活を果たした花火大会でしたが、今度は隅田川の水質汚染が問題視されるようになりました。
また、これまで花火大会を資金面で支えてきた料亭は時代とともに低迷。花火大会には多額の開催費用が必要です。廃業する店が増えたことから、スポンサーになることは難しくなっていました。
こうして環境・経済の両面から、両国川開き大会は打ち切られることになりました。
それでも花火大会を開催したいという熱い要望を抱く人たちによって、復活を模索する動きは続きます。そして、1977(昭和52)年から隅田川花火大会と名称を変えてよみがえることになったのです。
すべての思いと期待を2021年に
花火大会が復活した背景には、地元住民や環境団体による隅田川の水質汚染を改善させる取り組みがありました。
また、花火大会の実施にあたっては水質を悪化させないための花火関係者による工夫と配慮があったことは言うまでもありません。
約2万発の花火が夜空を彩り、約100万人が花火を見物する隅田川花火は、もはや東京の夏に欠かすことができないイベントです。
新型コロナウイルスにより2020年に開催されないことは寂しいかぎりですが、密集を避けるためには仕方がありません。
コロナ禍を乗り越えて、2021年に素晴らしい花火が打ち上がることを楽しみに待ちましょう。