巨大ターミナル・渋谷駅の「ひと駅手前」に広がる真空地帯をゆく

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巨大ターミナル・渋谷駅の「ひと駅手前」に広がる真空地帯をゆく

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下関マグロ

サンポマスター、食べ歩き評論家

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渋谷や新宿など、誰もが知る東京の巨大ターミナル駅。しかしその「ひと駅手前」には、どのような風景が広がっているのでしょう。人が少ないから「ウィズコロナ時代」の散歩にも良いのだそう。サンポマスターの下関マグロさんがナビゲートします。

巨大ターミナル駅を避けたい理由

 人気エリアからほんの少し離れるだけで、誰もいない散歩コースがあります。

 新型コロナの関連でテレビによく映し出されたのは、渋谷駅前のスクランブル交差点でした。外出自粛中、かなり通行者の人数が減りましたが、2020年6月中旬現在、だいぶ以前のにぎわいを取り戻しています。

 筆者(下関マグロ。サンポマスター)が東京にやってきたのは1980年代半ばでしたが、当時すでにスクランブル交差点は有名で、初めて渋谷駅にやってきたときは、「ここが有名なあの交差点か」と思いながら歩いたのを覚えています。

 ただし、渋谷駅の人の多さには閉口しました。ホームからあふれそうな人たち、多くの人が階段を上ったり下りたりしている人たちの流れについていくのがちょっと苦手でした。

 そのため東京に慣れるにしたがって、渋谷駅などのターミナル駅はなるべく避けるようになりました。例えば渋谷駅が最寄りの場所へ行く場合、周辺を地図で調べて、渋谷駅の次に近そうな駅をさがして、そこから歩くのです。

京王井の頭線渋谷駅の隣、神泉駅周辺には、老舗の日本料理店などが(画像:下関マグロ)



 例えば渋谷109(渋谷区道玄坂)へ行くのに、JR渋谷駅からならすぐです。だいたい2~3分でしょうか。それが、京王井の頭線でひと駅隣の神泉駅からだと、歩いて8分くらいで到着します。

 ちょっと意外でしょ。それぐらいの差しかないんですね。多少時間がかかっても人混みを歩くより、人の少ないルートを歩くほうがいいと筆者は思ったのです。

スマホの地図アプリがない時代に

 1990年代の半ば、筆者は同じく京王線の明大前駅(世田谷区松原)近くに住んでいました。だから渋谷のハチ公前で待ち合わせというと、渋谷駅からではなく神泉駅からよく歩いていました。スムーズに渋谷駅まで到着できたかというとそんなことはなく、何度も迷いましたが。

 途中、かつて芸者さんがたくさんいた花街であった円山(まるやま)町という場所を通るのですが、ここが迷路のようで、何度も迷いました。花街の名残でしょうか、老舗の料理屋さんやラブホテルが軒を連ねています。

渋谷駅からもほど近い道玄坂のエリアには、ちょっとごみごみしたホテル街(画像:下関マグロ)



 なんとかそこを抜けると、百軒店(ひゃっけんだな)というエリアに出ます。ここへ出るとホッとしました。坂を下って行けば、道玄坂に出られるからです。道玄坂に出て、そのまま坂をくだれば、あのスクランブル交差点があります。

 迷ってしまうことも多いので、神泉駅から歩く場合は少し早めに家を出ていました。だんだん道がわかり、余裕が出てくると、当時は「東急文化村」といわれていたBunkamura(同区道玄坂)方面をまわって渋谷駅へ行ったり、もっと足をのばして、現在は「奥渋(おくしぶ)」と呼ばれている神山町あたりをぶらぶら歩いてみたりしていました。

 特に百軒店辺りは最初のうちはよくわからなかったのですが、散策するうちに老舗の町中華やカレー店があり、そういったお店にはよく行っていました。

渋谷から新宿まで歩こうと思った

 山手線・渋谷駅の隣駅である原宿駅や恵比寿駅、それから地下鉄の表参道駅からもよく歩きました。

 原宿、渋谷、恵比寿といった三つの駅は明治通りでつながっています。目的地が渋谷駅より北側にある場合は原宿駅から、南側の場合は恵比寿駅から歩きました。

 こうして山手線の前後の駅から歩いてみると、あるとき明治通りに沿って都営バスが渋谷と池袋をつないで走っているのを知りました。

 新宿へ行く用事があったので「宮下公園」(渋谷区神宮前)という停留所からバスに乗ってみることにしました。しかし、その日は道が混んでいて、なんと新宿まで1時間もかかってしまったのです。バスに乗っている間、これなら歩いたほうが早いのではないかと思ってしまったほどです。

渋谷にある都バス停留所「宮下公園」。ここから乗って新宿や池袋へ行ける(画像:(C)Google)



 それでは実際に歩いてみようと思って、渋谷に用事があるときに新宿の伊勢丹(新宿区新宿)あたりから明治通りを南にひたすら歩いてみました。50分ほどで渋谷に着いた時には、バスよりも早いぞと思いました。

 実際のところは、たまたまあのバスに乗った日だけが混んでいたのかもしれません。というのも、その後、何度か明治通りを歩き、スムーズに車が流れているときなどは都バスにも乗りましたが、さすがに歩くよりは早かったですから。

 しかし、こうして徒歩と都バスを組み合わせることで、東京の道がだんだんとわかってきて、ターミナル駅を避けながら目的地にたどりつくということが地図を見なくてもわかってきました。

ひと駅前下車はウィズコロナ向き

 渋谷駅に限ったことではなく、多く人が昇降する駅はなるべく利用しないようになりました。新宿駅もそのひとつです。

 前述したように筆者は明大前に住んでいたので、新宿へ行くときは京王線の初台駅(渋谷区初台)まで乗り継ぎ、そこから新宿駅方面へ歩くことが多かったです。頭上を走る首都高速4号新宿線を道しるべに、その下の甲州街道をひたすら歩くという感じに。

 慣れてくると脇道に入り、あちらこちらへ散策しながら歩きました。

京王線初台駅で降りて、甲州街道沿いに新宿へ(画像:(G)Google)



 あるいは、京王線に乗り入れていた都営新宿線の新宿三丁目駅(新宿区新宿)で降りて目的地に向かっていました。

 その後、あちらこちらに住みましたが、できるだけターミナル駅を避ける習慣は現在も残っています。ちょっとだけ多めに歩くことにはなるものの、この方法はまさに「3密」を避ける「ウィズコロナ時代」に合っていると思うのですが、皆さんもいかがでしょう?

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