小沢健二『愛し愛されて生きるのさ』――青山学院から「渋谷系」につながる若者音楽の系譜 渋谷区【連載】ベストヒット23区(19)
2020年5月24日
知る!TOKYO人にはみな、記憶に残る思い出の曲がそれぞれあるというもの。そんな曲の中で、東京23区にまつわるヒット曲を音楽評論家のスージー鈴木さんが紹介します。
若者音楽文化の一翼を担った「渋谷系」
「ベストヒット23区」の19区目は、満を持して渋谷区です。ご承知の通り、日本屈指の若者文化の中心地で、つまりは若者音楽文化の中心地。

「渋谷区」というと、「渋谷系」について語らざるを得ません。1990年代中盤から後半にかけて、若者音楽文化の一翼を担ったムーブメント。
デジタル志向、タイアップ志向が強かった「ビーイング系」「小室系」が席巻していた音楽シーンに対して、(古い)洋楽好き、レコード好きが反旗を翻したムーブメントとして、当時の私(スージー鈴木。音楽評論家)には見えました。
フリッパーズ・ギター、ピチカート・ファイヴ、ORIGINAL LOVE、カジヒデキ……など、メディアやCDショップが「渋谷系」として分類した音楽家はたくさんいましたが、個人的にひとりだけ挙げるとすれば、小沢健二です。
流行に背を向けた趣味性
「のめりこむ」という表現が大げさではないほど、1994(平成6)~1995年あたりは、毎日毎日聴いていました。特にアルバム『LIFE』(94年)は、当時の私(28歳)のバイブルのような1枚でした。

アルバム5曲目は『ドアをノックするのは誰だ?(ボーイズ・ライフ pt.1:クリスマス・ストーリー)』という長いタイトルの曲。曲自体も6分22秒だから、こちらも長い。
この曲の歌詞に「ザ・1994年の渋谷区」とでも言うべきフレーズがあります。それが――「♪原宿あたり風を切って歩いてる」。
若々しい小沢健二が、軽快な足取りで明治通りを闊歩(かっぽ)するイメージが、「ビーイング系」「小室系」全盛の中、われ関せずと、趣味性の高い音楽を量産する「渋谷系」のイメージと重なります。
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