データで歩く、もうひとつの東京散歩
新型コロナウイルスの影響で、都心や繁華街の人出が連日報じられるようになり、「滞在人口」や「人の流れ」に関心を持たれた人も多いのではないでしょうか。
新宿の様子(画像:写真AC)
これらのデータをクローズアップしてみると、世界でも有数の大都市・東京にも「動」と「静」があり、地域によって、また同じ地域でも時間帯や曜日によって異なる表情を見せてくれます。
2020年5月24日(日)現在、「緊急事態宣言」が継続中の東京は外へのお出掛けがまだまだ難しい状況ですが、今回はデータを片手に東京という都市を「オンライン散歩」してみましょう。
23区の「昼間人口」は1203万人
2015年の国勢調査(総務省統計局)によると、東京23区の人口は約927万人。これに23区外から通勤・通学する人、逆に23区外へ通う人をそれぞれ足し引きした「昼間人口」は実に1203万人にのぼります。
「昼間人口」は人口統計上の指標で、夜間の通勤・通学者が含まれていたり、逆に買い物客などの移動は含まれていなかったりと、実際の滞在者数とは厳密には異なりますが、「夜間人口」(在住者数)と対比することによって、地域ごとの特性を見ることができます。
「図表1」東京23区の昼夜間人口比率・地図(画像:にゃんこそば)
「図表1」は、東京23区を昼間人口・夜間人口の比率(昼夜間人口比率)で塗り分けた地図です。
23区「昼夜の人口差」は0.8~14倍
「図表2」東京23区の昼夜間人口比率・ランキング(画像:にゃんこそば)
大手町・丸の内といった巨大なオフィス街を抱える千代田区は、夜間人口6万人弱に対し、昼間人口は約85万人。その差は実に14.6倍(1460%)以上! その他、中央区・港区・渋谷区・新宿区でも2倍(200%)を超えています。
これらの地域にはビジネスからショッピング、さらにナイトスポットなど多彩な都市機能がそろっていて、まさに「東京」のイメージを凝縮した地域です。
一方、昼夜間人口比率が100%を切っている区も少なくありません。これらは東京都心のベッドタウンとして、あるいは古くからの住宅・工場密集地として発展してきた地域。通勤・通学などで昼間は区外へ出る人が多くなっています。
新宿区を拡大してみると……
さらに拡大すると、街の特色がくっきり見えてきます。例えば、昼夜間人口比率5位の新宿区を見てみましょう。
「図表3」は、新宿区内の昼夜間人口比率を細かい単位(町、丁目)で塗り分けた地図です。赤は昼間の方が人口の多い地域、青は夜間の方が人口の多い地域です。
「図表3」新宿区の昼夜間人口比率・地図(画像:にゃんこそば)
新宿や飯田橋・四ツ谷などのオフィス街をはじめ、市ヶ谷(防衛省)、信濃町(慶応大学病院)、早稲田(早稲田大学)などのエリアで昼夜間人口比率が高くなっています。特に、西新宿1丁目は昼夜間人口比率が5万%(500倍)以上!
この地域は1960年代に淀橋浄水場の跡地を再開発したエリアで、東京都心への一極集中・オフィス不足を解消するために多数の高層ビルが建設されました。その結果、人口220人に対し10万人以上が働くという「仕事に特化した街」に成長したわけです。
昼夜比70%の街にある「超有名な坂」とは
逆に、昼夜間人口比率が70%を切る地域も。区の北西部の落合・中井、東部の牛込・若松エリアは、住環境の良さと都心へのアクセスから20代の単身世帯や子育て世代に人気です。
また、四谷三丁目駅付近の青い地域(新宿区須賀町、昼夜間人口比率70%)には新海誠監督の映画『君の名は』(2016年)に使われた須賀神社があります。映画公開後には多くの観光客が訪れましたが、普段は新宿から3駅とは思えないほど静かな空間が広がっています。
「図表4」新宿区の昼夜間人口比率・ランキング(新宿区)(画像:にゃんこそば)
「図表4」に昼夜間人口比率の高い地域、低い地域をまとめました。これらの地域に何があるか? 駅からの距離は? などなど、Google Mapsなどで調べてみるのも面白いでしょう。
時間帯別人口から街の性格を読み解く
新宿といえば夜の街・歌舞伎町。そのにぎわいを裏付けるビッグデータが内閣府の地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」で公開されています。
「図表5」は新宿区のオフィス街(西新宿1・2丁目付近)、歓楽街(歌舞伎町・新宿3丁目付近)、住宅地(中井駅周辺)の時間別の滞在者の推移を、NTTドコモのスマートフォンの位置情報(匿名)から集計したものです。高層ビルが立ち並ぶ西新宿では朝7時から9時台にかけて滞在者が一気に増え、17時頃から徐々に減っていきます。
「図表5」新宿区の時間別滞在人口・グラフ(画像:にゃんこそば)
一方、歌舞伎町・新宿3丁目では買い物客が増える午後~夕方と、仕事帰りの会社員でにぎわう夜間に滞在者が増えています。午前を回っても多くの人がいるのが特徴で、このような形のグラフは銀座、六本木やすすきの(札幌)、難波(大阪)、中州(福岡)などで見ることができます。
アフターコロナで人の流れは変わるか
新型コロナウイルスの流行によって、これまで紹介してきた人の流れが大きく変わっています。
今後、感染症がある程度落ち着いたときの姿を現時点で予想することは困難ですが、テレワークの普及などによってオフィス街と住宅街の境目が以前よりもあいまいになるのかな? と筆者は想像します。
夏至を控え、19時頃でも残照を楽しめるようになりました。リアルな街歩きを楽しめる日が来ることを願いつつ、時には「データで街歩き」を楽しんでみてはいかがでしょうか。