個性派マスターのコーヒーと音楽 「カファブンナ」|老舗レトロ喫茶の名物探訪(5)
2018年11月13日
お出かけ商業施設が軒を連ねる六本木の喧騒とは対照的に、落ち着きと温もりあふれる空間が広がる純喫茶「かうひいや カファブンナ」。その名物は、コーヒーと音楽、そしてマスターの能勢さんそのものといえるようです。
深煎りに魅せられて創業、一番のこだわりはコーヒーの美味しさ
六本木の純喫茶「かうひいや カファブンナ」を初めて訪れた時、印象に残ったことがふたつあります。ひとつは、オフィスや商業施設が軒を連ねるビル街の味気なさや喧騒とは裏腹に、落ち着きと温もり溢れる純喫茶がこんな駅近にあるということ。もうひとつは、マスターの能勢顯男(あきお)さんの人間味溢れる人柄でした。


「僕はもう82歳になるけど、100mを19秒で走れますよ。身のこなしも早いしね」
そう言って手元にあるものをあちらこちらへ素早く移動させてみせる様子に、100mをダッシュする能勢さんの姿が浮かんできて、ダンディさとのギャップに思わず笑ってしまいました。
筆者がケーキを注文した際、切り分けながら「綺麗に切れなかったんでサービスします。こんな形のもので、お代をもらうわけにいかない」と言うも、目の前に置かれたケーキは、端の方が少し欠けているだけ。大都会の真ん中に、こんな気風の良い江戸っ子気質の喫茶店経営者がいると知って、ちょっと嬉しくなりました。
東京で生まれ育った能勢さんが「たまたまいい物件があった」ことから六本木にカファブンナを創業したのは1972(昭和42)年12月のこと。霞が関のコーヒー専門店で出会った深煎りコーヒーの美味しさに目覚め、豆屋さんでコーヒーの淹れ方を1年間修行した後に仲間とともに開業しました。
以来、46年間同じ豆を使っていて、店一番のこだわりは「ネルドリップで淹れるコーヒーの味」だといいます。筆者が訪れた際、コーヒーの味見をして「今日の豆は思うような味が出ない」と不満げ。そのあと、淹れ直しては味見をする様子が印象的でした。

メニューは、コーヒー、紅茶、ココア、そしてケーキとまさに純喫茶の王道。ケーキは能勢さんのお手製で、店の常連だったフレンチのシェフに教わったというムースが中心です。完成前のムースを冷蔵庫から取り出し、慎重ながら慣れた手つきで仕上げていく。それは、パティシエが作るような派手なケーキではないけれど、甘さ控えめで手作りの優しい味わいでした。


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