「世田谷邪宗門」83歳のマスターが紡ぐ比類なき”味” | 老舗レトロ喫茶の名物探訪(1)

2018年10月13日

お出かけ
ULM編集部

下北沢で50余年に渡り純喫茶を営む作道 明さん。その手が紡ぐ熟練コーヒーや温かな雰囲気、レトロ感が織りなす居心地よさは、筆者を老舗レトロ喫茶の名物探訪に駆り立てるきっかけとなりました。その中から、女性にオススメの店を連載で紹介していきます。


絶滅危惧種?の純喫茶 喫茶店とカフェとの違いとは?

「東京都内に純喫茶はほとんどなくなりましたね」
 そう話すのは、「世田谷邪宗門(せたがやじゃしゅうもん)」のマスター、作道 明(さくみち あきら)さん(83)。この道50余年のベテランマスターです。

下北沢の住宅街にある純喫茶「世田谷邪宗門」のエントランス(2018年8月22日、宮崎佳代子撮影)。
この道50余年の作道 明さん(2018年8月22日、宮崎佳代子撮影)。

 ここでいう純喫茶とは、法律的区分において「喫茶店営業許可」を取得し、ソフトドリンクなどのアルコールを伴わない飲み物と、菓子類のみ提供することが認められている喫茶店。都内の保健所に聞いたところ、「喫茶店営業許可」では食べ物はトーストやシンプルなホットケーキといったごく簡単な調理までは認められていますが、具材を挟むサンドイッチようなものは通常の調理として「飲食店営業許可」が必要とのことです。

「飲食店営業許可」を取得している店は、アルコール類や調理した料理の提供も認められます。この飲食店営業許可を持っていて「喫茶店」と名乗る店もあり、喫茶店だからアルコールは出せないというわけではありません。またカフェは、おしゃれで喫茶以外にお酒も飲める店とのイメージを持つ人も多いかと思いますが、どちらの営業許可でもカフェと名乗るのは自由だそうです。

 この区分での純喫茶は今や、「絶滅危惧種」とも言えるかもしれません。作道さんに飲食店営業に切り替えないのか聞いたところ、「僕はコーヒーしか美味しい作り方を知りませんから」と一笑。

人気はオリジナルブレンドとコーヒーが主役のあんみつ

 ジャズ音楽の流れる店内はカメラや時計などのアンティークが所狭しと飾られ、壁には火縄銃、天井には多数のランプが吊るされています。その多くは、作道さんが脱サラしてこの道に入るきっかけとなった喫茶店「国立邪宗門(2008年に閉店)」の名物マスター、故・名和孝年さんが船乗りの時代に集めたのを譲り受けたものだそうです。

 マジシャンでもあったという名和さんの写真を見せてもらうと、大航海時代の船乗りがタイムスリップしてやってきたような髪型と服装。それがやけに板についていて、ひときわオーラを放っていました。作道さんは名和さんにコーヒーの淹れ方のみならず、マジックも教わったそうです。そんな師匠への永遠の憧れと思慕が垣間見られる個性的な装飾、赤レンガの壁、ほっと寛げる家庭的な雰囲気は、まさに昭和レトロな喫茶店といえます。

所狭しとアンティークが並ぶ店内(2018年8月22日、宮崎佳代子撮影)。
店の片隅に置かれている、昔懐かしいジュークボックス。曲目のほとんどが美空ひばり(2018年8月22日、宮崎佳代子撮影)。
1967年当時のメニュー。コーヒーは紅茶と同じ90円だったそう(2018年8月22日、宮崎佳代子撮影)。

 同店では、看板メニューのオリジナルブレンドに加え、あんみつコーヒーが人気とのこと。あんみつは、黒蜜の代わりにコーヒーをかける創作スイーツで、20年近くに及ぶ名物メニューだそうです。

人気のあんみつコーヒー 800円(2018年8月22日、宮崎佳代子撮影)。
あんみつコーヒーは、コーヒーをそそぎ、寒天、アイス、餡を混ぜ合わせて食べる(2018年8月22日、宮崎佳代子撮影)。

 このあんみつコーヒーの主役は「あくまでもコーヒー」です。「コーヒーあんみつ」と呼ぶと注意されるので要注意! コーヒー(フレンチロースト)にアイスクリームと餡の甘みが溶け込むことで、マイルドな苦味と酸味を伴った甘さとなり、寒天との絶妙な食感や味わいのハーモニーを楽しめます。アイスクリームの乳脂肪分量から寒天の固さに至るまで、「食材の相性に試行錯誤を重ねました」と作道さんは話します。

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