特筆すべきは「買い物の選択肢」の多さ
地元の人には申し訳ありませんが、かつて「錦糸町」という街のイメージは決してポジティブなものではありませんでした。
どちらかというと、新宿ほどに巨大ではないけどちょっと怪しげな歓楽街が広がるディープな街。そんな風に見ていた人が多かったと思います。
確かに、そんなディープなエリアは今でも存在しています。でも、次第にそれは過去のものになり、錦糸町は今、一度訪れたら住みたくなる街になりつつあるのです。
錦糸町で住みたくなるのは、駅を挟んで北口方面。そこには、これから子どものいる世帯あるいは、これから子どもが生まれる予定の世帯が「ここは住みやすそう」と思うような風景が広がっています。
住みやすさのポイントは「買い物の選択肢」の多さです。まず駅ビルの「錦糸町テルミナ」(墨田区江東橋)だけでも目を見張る充実度です。
ファッションの定番ZARA(ザラ)はありますし、ヨドバシカメラにマツモトキヨシも。買い物に疲れてコーヒーで一服しようと思ったらタリーズもオスロコーヒーも。さらに、隣接するショッピング施設「アルカキット錦糸町」(同区錦糸)には、無印良品やGU(ジーユー)なども。
正直、このふたつのショッピングモールだけで、もう錦糸町から出ずに暮らすことができてしまうのではないでしょうか。なのに、これに加えて北口には、さらにTOHOシネマズが入居する「オリナス錦糸町」(同区太平)もあります。
ベビー用品店は、都心部では希少価値
ここまでそろっていると、都内では当たり前の「電車に乗って買い物へ」という日常は、この街ではほぼ消滅するのではとさえ思えてきます。少なくとも新宿や渋谷へ遊びや買い物に出掛ける必要性はほとんど思い浮かびません。
そんな買い物が驚くほど便利な錦糸町。でも、ファミリーが住みたくなる街になっている理由は、単に店が多いからではありません。店のセレクトが絶妙なのです。
子育て世帯にとって無くてはならない品物をそろえるアカチャンホンポが「アルカキット錦糸町」に、トイザらス系列のベビーザらスが「オリナス錦糸町」に。さらに、南口の「錦糸町パルコ」(同区江東橋)には、西松屋も入居しています。
子育てに欠かせない店が三つも徒歩圏内にある地域は、都内でもなかなかお目に掛かれません。
タワーマンションの建設などにより、子育て世代を含む新住民の都心への流入が加速してからずいぶんたちますが、都心部にはこうした安価な子ども向けの商品を販売する店はあまり存在しません。どこもブランド系列ばかりです。
そのためか、最近では錦糸町は子育て世代が電車に乗って買い物に来る街へと変わっているのです。これらをベースに、世代ごとにツボを押さえた店がそろっているあたり各デベロッパー(不動産開発業者)はかなりさえているといえます。
これまで歓楽街のイメージが強かった錦糸町ですが、北口に関しては、以前とは完全に別の街になっていると言っても間違いではありません。
駅の近くにある巨大な「錦糸公園」は休日に行けば子どもたちが走り回っていて、すっかりのどかな郊外の住宅地になっています。
交通機関、地盤も折り紙付き?
さて、「住めばほかの街に電車で買い物に出掛ける必要がなくなる」とは書きましたが、交通も便利なのが錦糸町の特長です。
JR総武線に加えて東京メトロ半蔵門線もあるので、乗り換えなしで新宿・渋谷にも出掛けることができます。総武線の終電は「秋葉原発・0時46分」とけっこう遅くまでありますし、最悪それを逃しても、秋葉原からはタクシーで2000円前後。雰囲気は郊外ですが、交通の利便性はしっかり「都心」なのです。
近年、再開発が進んだことで東京のあちこちに従来のイメージとはまったく違う街が次々と誕生しています。
例えば、それまで注目される機会はほとんどなかった南千住駅(荒川区南千住)はタワーマンションが立ち並ぶニュータウンに。京急蒲田駅(大田区蒲田)は高架化工事の完了後「銀座まで電車で1本」の街として人気が急上昇しました。そして、錦糸町もジワジワと人気を高めてきているのです。
これまで錦糸町で懸念されていたのは、海抜0m地帯であること。いざ洪水が起これば水没してしまうのではないかと、住むには二の足を踏む人もいました。
ところが2019年10の台風19号では、墨田区や江戸川区は未曾有(みぞう)の大災害になると思いきや……江戸時代から連綿と続いてきた治水の成果を世界に見せつけました。
このことで、2020年以降はさらに人気が高まりそうな錦糸町。個人的には南口の飲み屋街も平和な日常のよい刺激になりそうなので、一度住んでみたいと思っています。