柴又の魅力は「日常」にありーー『男はつらいよ』新作公開後も全く変わらぬ風景とは

2019年末、実に22年ぶりとなる新作映画が公開された『男はつらいよ』の舞台、葛飾区・柴又。2年ぶりに訪れたルポライターの昼間たかしさんが、変わったもの、変わらないもの、そしてあらためてこの街に感じる魅力について考えました。


劇中の雰囲気が今もそのまま息づく街

 シリーズ開始から50周年を記念し、2019年末に公開された映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』。

 テレビドラマを経て1969(昭和44)年から劇場作品として毎年公開され続けた、日本映画を代表するシリーズです。

 1995(平成7)年の『男はつらいよ 寅次郎紅の花』の公開後に渥美清さんが死去し、シリーズは1997(同9)年の『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』を最後に制作を終えていました。

 もはやシリーズの続編はないと思っていたわけですが、この復活に多くのファンは喜んだでしょう。

柴又駅前に立つ寅さん像。奥の飲食店は、すでに取り壊されている(画像:写真AC)



 振り返れば『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』の時も、寅さんはCGでの登場でした。

 それから20年余りの時を経て技術も進歩しているので、もっと自然に寅さんが登場するのではないか……と期待していたところ、メインはさくらの息子である満男(吉岡秀隆)。

 シリーズのいくつかではスポットライトを浴びてきた登場人物なので、それでもまったく違和感はありません。あまりネタバレになることは避けたいのですが、結局、後藤久美子演じるイズミとは結ばれなかったことも今作では語られ、さまざま複雑な思いが去来します。

少しずつ変わりゆく駅前広場

 さて、新作の公開を契機に柴又は、またにぎわっているのでしょうか。

ローカルな駅舎も魅力のひとつ(画像:写真AC)



 柴又というのは、たいていの人にとって、ちょっとしたお出掛け気分を味わえる土地です。

 何しろ、最寄りの柴又駅がある京成金町線は、首都圏でも指折りのローカル線。15分に1本程度と極めて少ない本数。おまけに京成金町駅からでも、京成高砂駅からでも出発したらすぐに柴又駅に到着してしまいます。

 こうしてやってきた柴又には、いつもと変わらぬにぎわいがありました。

 そもそも、ここは帝釈天(たいしゃくてん)のお膝元。いつでも参詣客や観光客が絶えることはありません。駅前の広場には、寅さんとさくらの銅像。そして、帝釈天へと向かう参道……。むむ、なんか風景が変わっている?

 実は、筆者が柴又へやってきたのは2年ぶり。

 まさかと思いましたが風景は変わっていました。駅前の広場を囲むようにあった、郷愁をそそるコーヒー屋や居酒屋が姿を消していたのです。

柴又の風景を形作っているもの

 聞けば、老朽化によって2019年のうちに取り壊されたとのこと。残る立ち食いそば屋とタバコ屋も近々姿を消すというではありませんか。

 柴又の風景で欠かせないのは、この駅前広場の風景だったと思います。一見さんはちょっと入りにくそうだけど、入ったら何かありそうな雰囲気。

 立ち食いそば屋に至っては店の前に椅子とテーブルを置いて、当たり前のように営業をしているという「昭和にタイムスリップしてきたのかな……?」と思うような情景が広がる場所。

 それらが相まって、柴又の風景を作っていたのだと思います。

変わりゆく柴又駅前の風景。タバコ屋なども、近く姿を消すという(画像:(C)Google)



 それがなくなってしまったことで、また昭和が遠くなってしまったという寂しさを感じずにはいられません。

 この取り壊しは老朽化が理由だそうで、今後は建て直して、また店が入る予定になっているそうです。

 願わくは、オシャレな店ではなく雑然とした店が戻ってくることを願ってやみません。

それでも動じない「柴又」という街の魅力

 さて、帝釈天にお参りしながらあちこちを見物してみました。

 けれども不思議なことに、映画の新作が公開されたというのに、あまり映画を元ネタに盛り上がっている雰囲気というのはありません。

22年ぶりの新作映画公開も、変わらない日常が広がる柴又(画像:写真AC)



 通例、映画の舞台になった街というのはあちこちにポスターを貼ったり、パネルを置いたりするものですが、そんな浮かれた感じはありません。

 参道の店にわずかに「おかえり寅さん」という字だけが書かれた紙が貼ってある程度です。

 観光関連の産業も、映画の効果で人が増えることを見込んで何かしようと盛り上がっている雰囲気はあまりありません。矢切の渡しも例年通り、冬は土日祝日以外はお休みです。

 なんとも淡々とした雰囲気。

 この映画新作が公開されたからとギラつかないことこそが、柴又が観光地として優れているところです。これが、前述のように、何かの作品の舞台になって突如注目されたような地域だと違います。

寅さんもきっと帰ってきやすい街

 あちこちに「ここが作品に登場した場所です!」といった案内を張り巡らせて、ともすれば自ら日常を破壊することにもつながってしまいます。

 例えばアニメ作品などで顕著ですが、作品に登場するキャラを設置し過ぎて、どうもおかしな風景になってしまうということも。

土産物屋の店先でのんびり昼寝をする猫(画像:写真AC)



 それに比べて、この柴又の雰囲気はどうでしょう。ここは、いつでも寅さんが帰ってきそうな日常を見せてくれる熟成した観光地といえます。

 いつも通りにしていないと、寅さんも帰ってきにくいですよね。


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