いまいち地味でパッとしない「国分寺」 しかし歴史と地形の魅力は別格だった

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いまいち地味でパッとしない「国分寺」 しかし歴史と地形の魅力は別格だった

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鳴海侑

まち探訪家

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中央線沿線で、吉祥寺や高円寺同様に「寺」がつくにもかかわらず地味な印象のある国分寺。そんな国分寺の隠れた魅力について、まち探訪家の鳴海侑さんが解説します。

かつて「三寺」と呼ばれたエリア

 1970年代から80年代にかけ若者文化が花開いた場所として、中央線沿線に「三寺」と呼ばれた場所がありました。それが高円寺、吉祥寺、国分寺です。

 現在も高円寺は「カウンターカルチャー」のまちとして、吉祥寺は多摩エリアの一大拠点としてメディアでよく取り上げられますが、国分寺はあまり名前を聞くことがありません。今回はそんな「国分寺」周辺のあまり知られていない姿を見て歩くルートをご紹介します。

新宿から中央線特快で20分弱

 国分寺は、新宿から中央線の特別快速を使えば20分弱。西武国分寺線、西武多摩湖線との乗り換えができるターミナル駅です。西武国分寺線は西武線最初の鉄道路線で、元々は東京と川越の間を結ぶために国分寺から中央線と分岐する支線的な役割を持っていました。

国分寺駅の外観(画像:写真AC)



 さて、国分寺駅には3つの商業施設が駅に隣接しています。一番新しいのは北側にある「ミーツ国分寺」(国分寺市本町)。一見すると普通の再開発ビルのようですが、運営は三越伊勢丹ホールディングス。面積こそ広くありませんが、アパレルブランドをいくつも入居させているほか、雑貨の「東急ハンズ」や高級食料品店の「クイーン伊勢丹」があり、少し都心的な暮らしを求める層に寄り添ったビルになっています。

 駅南側にあるのが駅ビル「セレオ」(同市南町)と「国分寺マルイ」で一体のビルとなっています。9階建ての大きな商業施設で、さまざまなものがそろう地域の重要な買い物スポットです。駅のメインの出口も南側ですが、すぐ住宅地となっており、商店街はあまり見られません。

「国分寺崖線」に注目

 そんな国分寺駅南口で面白いのが「地形」です。

 駅の南東には国の名勝でもある殿ヶ谷戸庭園(国分寺市南町)があります。回遊式の庭園になっていて、四季折々にさまざまな美しい景観を見ることができます。そしてなによりも園内の高低差が作り出す景観が見所です。

紅葉に彩られた殿ヶ谷戸庭園(画像:写真AC)



 この高低差を作り出しているのが「国分寺崖線」と呼ばれる地形です。古代の多摩川が武蔵野台地を作って生み出された河岸段丘で、多摩川の北側にあります。西は立川市の北部からはじまり、国分寺や二子玉川などを通って南は大田区の田園調布付近まで連なり、湧水や緑が残る自然環境が豊かな場所として知られ、東京都の中でもさまざまな憩いの場所が生み出される場所でもあります。

 殿ヶ谷戸公園で庭園風景を楽しんだら、今度は国分寺駅前から南西に伸びる大きな通りを歩いて行きます。再び国分寺崖線を下り、野川を渡りながら歩いて行くと、所々に緑が植えられ、大都市郊外らしい住宅地の風景を眺めながら歩くことになります。

国分寺はかつて「武蔵国」の中心だった

 そして道の両側に公園が広がります。ここは武蔵国分寺公園(同市泉町)と名付けられ、元々は国鉄の教育施設「中央鉄道学園」がありました。この学校は運転士の養成を行っていた他に大学と同じ教育課程があったといい、大学と同じ教育課程で学ぶ学生は国鉄職員として雇用されていたそうです。昭和末期の国鉄分割民営化で閉鎖、売却されて一部が2000年代に順次武蔵国分寺公園として開放されました。

 武蔵国分寺公園はアトラクションがある公園というより、自由に使える原っぱが残されている公園で、こうした大規模な遊び場をまちにしっかり整備するのも多摩らしい特徴といえます。

武蔵国分寺跡の周辺の様子(画像:(C)Google)

 公園の南側には国分寺という地名の由来になった武蔵国分寺跡(同市西元町)があり、こちらも公園としてしっかり整備されています。そして、さらにバスなどで南へ下れば武蔵国府が置かれていた「府中」です。江戸城跡を中心に都市ができた今の東京からは信じられないかもしれませんが、国分寺や府中が昔は東京や埼玉、神奈川県の東を包摂していた「武蔵国」の中心だったのです。

都立図書館があり、調べ物にもぴったり

 さて、再び場所を武蔵国分寺公園に戻し、今度は北東に向かいます。すると新しめの団地群があり、横にずいぶんと広い歩道があります。これは古代に作られた「東山道武蔵路」の一部で、幅12mの道が国分寺や府中から上野国(現在の群馬県)、下野国(現在の栃木県)に伸びていたと言われています。このように地形や「武蔵」の中心を感じられるのが国分寺の面白いところです。

 そして東山道武蔵路の遺構のすぐ近くにあるのが東京都立多摩図書館(国分寺市泉町)です。2017年に立川からこの場所に移転してきました。以前アーバンライフメトロ内で、広尾にある東京都立中央図書館(港区南麻布)を紹介しましたが、こちらは雑誌を中心に蔵書がある図書館となっており、1万5000誌以上の雑誌が収められています。

東京都立多摩図書館の外観(画像:写真AC)



 また、開架でも多くの雑誌を見ることができるほか、閲覧席はコンセントがついている席も多く、1日調べ物をするのにはとても向いています。東京都民であるかどうかは関係なく利用できるので、興味のある人はぜひ時間をとって訪れてほしいところです。

 東京都立多摩図書館までくればほぼ西国分寺の駅近く。10分弱歩けば西国分寺の駅に着きます。JR中央線とJR武蔵野線の交わる駅で、駅構内を行き交う人は多いですが、駅周辺は再開発ビルを除けば住宅街です。

 そんな駅の南西にはおいしい珈琲やデザートが楽しめる「クルミドコーヒー」(同市泉町)があります。私は多摩図書館で調べ物をした帰りや友人とゆっくり話をしたいときに訪れます。店はクルミをテーマにしており、店内ではクルミが自由に食べられるほか、森の中の家に迷い込んだような暖かい空間となっています。結構人気のお店なので、時間帯によっては入店待ちがあることもしばしば。空いているときを狙ってゆっくり時間を過ごしたいカフェです。

ちょっと短くて濃厚な散歩を

 今回は国分寺から西国分寺にかけてのまちの様子や立ち寄りスポットをご紹介しました。中央線のたった1駅間で大体2時間もあれば回り切れてしまう距離ですが、郊外のターミナル、地形を感じられる庭園、遺跡、図書館、そしてカフェとさまざまな見所や立ち寄りスポットがあります。

 寒い季節になってきましたが、ちょっと短くて濃厚な散歩をしたいときや暖かい飲み物をあとで飲むための散歩がしたいとき。そんなときにぜひ歩いてみてください。

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