【2020年高校受験】都立御三家の志願者数は「私立実質無償化」で結局増えたのか?

  • ライフ
【2020年高校受験】都立御三家の志願者数は「私立実質無償化」で結局増えたのか?

\ この記事を書いた人 /

中山まち子のプロフィール画像

中山まち子

教育ジャーナリスト

ライターページへ

2月21日に184校で行われた、東京の都立高校の一般入試。その中でも偏差値トップクラスの高校の志願者数の推移について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

全日制普通科の倍率は1.51倍

 新年度から私立高校の無償化がスタートします。東京都が授業料軽減助成金の支払い条件を、これまでの世帯年収760万円未満から910万未満にまで緩和したことで、対象者が拡大しました。

 これを受け、都立高校の志願者数は大きな変化が予想されていましたが、2月13日(木)に発表されたコース制と単位制、島しょう部を除いた全日制普通科の倍率は2019年より0.1ポイント高い1.51倍となっています。

杉並区の西高校の外観(画像:(C)Google)



 それでは、ここ数年の進学実績で注目を集める都立最難関校である日比谷高校(千代田区永田町)、国立高校(国立市東)、そして西高校(杉並区宮前)の志願者数は変化したのでしょうか。

男子志願者が減少傾向にある日比谷

 近年、都立高校の復活を印象付ける大学合格実績を出す日比谷高校ですが、直近の3年間をみると一般入試での男子志願者数は減少傾向が続いています。

 2017年2月の入試は326人、2018年2月は313人でした。2019年は329人と盛り返したものの、2020年の入試は296人と、300人を切る形となりました。

「日比谷復活」をメディアが大きく報じる一方、男子志願者が徐々に減少しているのは皮肉なことです。

千代田区の日比谷の外観(画像:(C)Google)

 対照的に、都内中心部に立地する都立高校の中で、日比谷高校に次ぐ難関校と位置付けられている戸山高校(新宿区戸山)は、男子志願者が反比例するようにここ数年増加しているのです。

「日比谷復活」をメディアで大々的に取り上げたことで精鋭が集中し、合格のハードルがより高くなったのではないでしょうか。その結果、戸山高校へ流れる層も一定数がいたと考えられます。

男子志願者が減少傾向にある日比谷

 それでは、国立高校と西高校では同様なことが起きているのでしょうか。

新宿区の戸山高校の外観(画像:(C)Google)

 結論ですが、両校とも大きな変化は見られません。ここ3年間で、国立高校は男子の志願者が220人前後で推移。西高校は2019年に228人と落ち込みましたが、2020年の志願者は251人と盛り返しています。

 都立御三家の中で日比谷高校だけが「都立高復権」と言われる中、減少傾向が続いているのは、男子受験生の安全志向が強まっている証しなのかもしれません。

日比谷高校と西高の女子志願者は増加傾向

 都立御三家の女子志願者は、おおむね増加傾向が続いています。

 都内は、私立の開成高校(荒川区西日暮里)や巣鴨高校(豊島区上池袋)、国立の筑波大学付属駒場高校(世田谷区池尻)のように、男子校で高校入試を実施している最難関高校が元々少ない状態です。

 また女子校でみるとさらに選択肢が少なく、豊島岡女子学園高校(豊島区東池袋)と慶應義塾女子高校(港区三田)のみです。

豊島区の豊島岡女子学園高校の外観(画像:(C)Google)



 しかも、豊島岡女子学園高校は2022年度入試より高校入試を廃止することを決定しており、もはや女子校の難関校に入るには中学受験に挑戦するしかありません。

現実的な目線で都立を選ぶ女子生徒たち

 一方共学校でみると、都内で高校入試を実施している難関私立校は早稲田実業学校高等部(国分寺市本町)、青山学院高等部(渋谷区渋谷)などいずれも中学受験を実施している学校がほとんどで、高校から全員が同じスタートラインに立って走りだすことは不可能です。

渋谷区の青山学院高等部の外観(画像:(C)Google)

 私立高校の無償化条件が緩和しても、すでに内進生が先取り学習をしている私立と都立の間には、カリキュラムの面でも大きな隔たりがあります。

 成績上位層の女子生徒は経済的な面より、現実的な面で都立御三家を選ぶようになっていると考えられます。

都立御三家の受験倍率は平均値を上回る

 2月21日(金)に行われた2020年度入学試験における都内御三家の受験倍率は日比谷高校の女子の1.72を筆頭に、島しょ地域を除く全日普通科コースの男女平均の受験倍率1.42を上回っています。

 1.42という値は2019年と同じで、全体的に私立無償化の影響を受けて都立離れが進んでいるとは言いにくい状況です。

次は高校の入学式(画像:写真AC)

 都立高校の中でも難関校は人気が高く、その結果倍率も平均を上回るなど、都立高校を第1希望にしている受験生の数に大きな変動は起きていないと言えます。

 中学受験が間に合わなかったり、また中学入学前後から学力が伸びたりした受験生は、内進生と混ざることがなく入学者全員が同じスタートラインで学校生活を始めることができる都立高校をあえて選択しているのではないでしょうか。

関連記事